第1話
昔々、ある森に立派な虹がかかりました。
その虹は逆さまで、珍しい虹がかかったその森はいつしか「逆さ虹の森」と呼ばれるようになりました。
そんな逆さ虹の森に、ある一組の可愛いお客さんが来たようです。
「大丈夫だよ、シエル」
「うん、行こうステラ」
2人はぎゅっと互いの手を固く握りしめ、覚悟を決めた顔つきで森の奥へと進んでいきました。
そんな中、逆さ虹の森では一匹のキツネが楽しそうにお散歩をしていました。
「今日も虹が綺麗に出てるなぁ」
空を見上げると逆さまの虹が綺麗に浮かび上がっていました。
そして上の方から美しい歌声も聞こえてきました。
「ラララ~」
「今日もな素敵な歌声だね、コマドリさん」
「そうだろう!私は歌うのが好きだからね」
その美しい歌声の正体は木の上に座って歌っていたコマドリでした。
そして2人は楽しそうに一緒に歌い続けました。
「それじゃあ僕はそろそろ行くね」
「あぁ、それなら私も少し飛んでこようかな」
一通り歌い終り満足したキツネはまた散歩へと戻って行きました。
鼻歌を歌いながら楽しそうに茂みを掻き分け進んで行くと、茂みを越えたそこには、顔がよく似た女の子と男の子が手を繋ぎながらそこに立っていました。
―――人間がこの森に来るなんて珍しいな
キツネは不安そうにしているその子達に話し掛けてみることにしました。
「はじめまして。この森には何の用で来たの?」
「ドングリ池に行きたいの。でも道わかんなくて……」
女の子が小声になりながらも答えました。
「それなら僕がそこまで案内するよ!」
「本当?ありがとう、キツネさん」
女の子は嬉しそうに微笑みました。
だけど男の子はあまり良い顔をしてはいませんでした。
「ダメだよステラ!キツネは騙すのが得意なんだ。きっと全然違うところに連れて行く気だよ!」
どうやらキツネのことを良く思っておらず、疑っているようです。
「でもシエル、このキツネさんはいい子そうだよ」
「いい子かどうかなんてまだ分からないだろ」
ステラと呼ばれた女の子と、シエルと呼ばれた男の子は言い争いを始めました。
そんな2人をキツネはどうすればいいのか分からず、あわあわと2人の顔を交互に見ながら戸惑っていました。
そんな時に彼が現れました。
「キツネさん、こんなところで何して……うわぁぁぁ!人間!」
大きな体をしたクマは2人の姿を見るや否や怯えて木の陰に隠れました。
彼は怖がり屋のクマで、あまり見慣れないものには怯えてすぐにどこかの陰に隠れてしまうのです。
しかしクマの体は大きく、木の陰に隠れても隠れきれてはいませんでした。
「ク……クマだよ!どうしよシエル、ステラ達食べらちゃうのかな……」
「え、やだよ!どうしよステラ」
突然現れた大きなクマに驚いた2人は、肩を抱き寄せ合いながら怯え、泣き出してしまいました。
キツネは泣き出した2人を見てもっと慌てふためき、そして何を思ったのかまた茂みの中へと入り、泣いている2人や怖がるクマを置いて走り出しました。
今回冬の童話祭2019に参加します!
双子と森の動物たちの話になっています。
クマに驚く前に喋る狐に驚くだろ!とか思いながら書いていました(笑)
次回も読んで頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします!