第十八話 董卓の死
洛陽を後にした董卓はあふれんばかりの金銀財宝を抱えて長安に戻ってきた。
しかし城門は固く閉ざされており、董卓が戻ってきたのに開く気配がなかった。
「早く門を開けぬか!董卓様が帰ってきたんだぞ。」
すると城門の上に劉備ほか何名かの男が立っていた。
「莚売りの小憎が何をやっている。早く門を開けんか!」
劉備は一瞬ムッとした顔をしたがすぐに心を落ち着かせ董卓に向かって言った。
「逆賊董卓よ、汝は皇帝を蔑ろにし、政務を行う立場にいながら遊び呆け、罪もない人々を平気で殺し、しかも洛陽の都を灰塵と化し、さらに
歴代の皇帝の陵墓を暴くという神をも恐れぬ非道な振る舞いをした。
よって汝を法にのっとり処罰する。」
「何をいうか、洛陽の件と墓を暴く件は貴様が・・・」
「問答無用!関羽、張飛やれっ!」
「なっ」
それまで董卓を守るようについていた関羽と張飛だったが劉備の一声が
引き金となったように関羽の刀と張飛の矛が一閃する。
すると董卓の首は胴体から離れて転がり落ち、心臓には風穴が開いていた。
「逆賊董卓討ち取ったり!」
関羽は董卓の首を持ち上げ叫んだ。
これまで董卓や関羽についていた将兵たちは呆然としていた。
「あくまで天子に刃を向けるものはこの場で斬る。これからも天子に仕えるものは
武器を捨ててこの場に残れ!」
劉備が城門の上から叫ぶ。
するとほとんどの将兵たちは武器を捨てて歓声を上げた。
みんな董卓の暴虐不尽は振る舞いにいつ殺されるかわからなかったので
その脅威が去り心から喜んでいたのだ。
ほとんどの将兵が許されて引き続き天子に仕えることを許されたが
董卓の一族や、董卓に策略を授けていた李儒や賈クは捕らえられ斬首された。
また洛陽から引き返してきた李カクと郭シは異変を知り、配下の将兵を連れ
どこかへ落ち延びていった。
「あとは洛陽を復興させるだけだな管仲。」
「はい。」
暴虐の限りを尽くしてきた董卓は死んだ。
しかし黄巾の乱や董卓の横暴を見てきた諸侯は
表向きには天子に従いながらも裏では漢帝国の権威は地に落ちたと思い、
この権謀渦巻く乱世を生き延びるために領土の機会を虎視眈々を窺っていた。
群雄割拠の時代が始まるのである。