第十四章 虎牢関の戦い その2 秦叔宝の死
呂布軍の先鋒の宋憲と曹性は連合軍を舐めているのかそのまま真っ直ぐ向かってきた。
李世民と曹操はまずは一斉に弓を浴びせる。
100名くらいの兵が倒れたがかまわず突進してくる。
程咬金と羅士信は今回は騎馬ではなく徒で迎撃用の槍を構える。
「押し込まれるなよ?槍で迎撃して押し返すんだ。」
程咬金と羅士信の槍隊に宋憲の騎馬隊がが凄まじい勢いで突進してくる。
しかし程咬金と羅士信の槍隊は宋憲の一撃を耐えて押し返し始める。
程咬金は迎撃用の槍を敵兵に向かって投げつけると自分の愛器の斧を持つ。
投げた槍は敵兵をまとめて3人貫いていた。
「俺の名は程咬金!命の要らない奴はかかってきやがれ!」
夏侯淵は弓を収めて棍を握り迫ってくる曹性軍に突撃を開始した。
最初のぶつかりあいは互角だった。
そこに側面から夏侯惇の騎馬隊が突撃する。
曹性軍は最初こそ持ちこたえるが徐々に押され始めていた。
「曹性様、夏侯惇と夏侯淵の挟撃により我が軍は壊滅状態です。お逃げください。」
「しかたない退却だ!」
「まて逃げるか曹性!」
曹性を追ってきたのは夏侯惇だった。
「うっとおしい奴だこれでも喰らえ!」
曹性は夏侯惇に向かって弓を放つ。
騎馬の勢いと弓の勢いで夏侯惇は弓をよけきれず、左目に矢が突き刺さり落馬した。
「夏侯惇が落馬したぞ。捕らえるのだ。」
曹性みずから夏侯惇に歩み寄り捕らえようとしたが
夏侯惇は起き上がり、左目に刺さった弓矢を引き抜くと、
その矢の先端についていた左目を食いちぎって飲み込んだ。
「両親からもらった大事な体の一部だ。捨てるわけにはいかんからな。」
それを見ていた曹性や周りの兵たちは恐ろしくなって足がすくんでしまった。
「ほれお返しだ!」
夏侯惇は槍をつかむと曹性の顔目掛けて投げつける。
槍は曹性の顔を突きぬけそのまま曹性と一緒に地面に刺さった。
「大丈夫か兄者?」
「淵か?俺の心配などいいから大将を失った曹性軍を叩くぞ。」
「わかった行こう。」
夏侯惇と夏侯淵は追撃を開始するが一人の男に行く手を阻まれることになる。
「まずはお前らが俺の相手をしてくれるのか?片目を失ったお前に相手ができるのか?」
二人の前に立っていたのは赤兎馬にまたがった猛将呂布奉先だった。
「呂布か?」夏侯惇は痛みに耐えながら睨み付ける。
「俺の名は夏侯淵。兄者の夏侯惇は出るまでもない。俺だけで十分だ。」
夏侯淵は手持ちの棍を振り回すと呂布に討ちかかった。
夏侯淵も後年では曹操軍にその人ありといわれるほどの猛将だったが
呂布には軽くあしらわれてしまう。
「助太刀するぞ。」
夏侯惇は夏侯淵一人では呂布には勝てぬと判断し槍を繰り出す。
しかし呂布は二人相手でもまだ余裕を見せていた。
「ふっはははは、そんなことでは俺の首を取ることはできんぞ。」
呂布の方天画戟が一閃したかとおもうと、夏侯惇と夏侯淵の二人は馬から叩き落とされてしまった。
「くそっ」
夏侯淵が更に討ちかかろうとしたときだった。
一人の漢が呂布目掛けて馬を走らせてくる。
「そこにいるのは董卓の飼い犬呂布と見た。私は李世民様の家臣秦叔宝。いざ尋常に勝負!」
「怖いもの知らずの雑魚がまだいたか。いいだろうかかって来い。」
秦叔宝は両手に持ったカンを振り回し呂布目掛けて突進する。
それにあわせるように呂布の方天画戟がうなりをあげて秦叔宝を襲う。
秦叔宝は右手のカンで方天画戟を受け流すと左手のカンで攻撃する。
呂布もそれを難なくかわすと更に激しい上段からの攻撃を秦叔宝に振り下ろす。
それを両手にもったカンで防ぐが両腕にずしりと重い感触と激しい痺れが秦叔宝を襲う。
「これが後漢末期最強の武将と謳われた呂布奉先か。しかし俺も負けるわけにはいかん。」
それから二人の撃ち合いは50合ほどに及んだが決着がつく兆しがなかった。
両陣営の将や兵は瞬きするのも忘れて戦いに見入っていた。
「こやつ中々やるではないか。」
呂布もさすがに肩で息をしていた。かつてこれほどの敵に出会ったことはなかった。
更に二人は討ちあいを続け、いつまでも戦いが続くかに思われた。
二人の力はほぼ互角であったが、乗っている馬に違いがあった。
秦叔宝が乗っていた馬も駄馬ではなかったが、重い秦叔宝を乗せて走り回り
思い切り武器を振り回されながら戦い続けられ体力の限界が来ていた。
それに対して呂布が乗っている天下の名馬赤兎馬はいまだ余裕があった。
呂布の一撃を秦叔宝はまたもやカンで受けるが終に秦叔宝の馬がよろけてしまった。
秦叔宝は一瞬体制をくずした。
呂布にはその一瞬で十分だった。
「もらった!」
ドスッ
呂布の方天画戟は秦叔宝の厚い胸板を貫いていた。
「ぐふっ」
秦叔宝は口から赤い鮮血を撒き散らした。
そして体からも赤い血が次々と流れ落ちていく。
「よくやったがまだまだ俺の敵ではなかったようだな。」
秦叔宝の首は垂れ死んだかに見えた。
そのため呂布が秦叔宝の体を貫いた方天画戟を抜こうとしたときだった。
秦叔宝は咆えながら胸の筋肉を膨張させた。
「なに、やつの体から武器が抜けない!?」
「うぉおおおお!」
死んだと思っていた秦叔宝は再び動き出し左手のカンを呂布目掛けて振り舞わす。
なんとか馬の背のほうに倒れるようにしてその攻撃をよけた呂布だったが
次の瞬間には右側の手から繰り出される更に激しいを攻撃を避けることはできなかった。
ボキッ
呂布の首は通常ではありえない方向に折れ曲がっていた。
「これでいい・・・」
秦叔宝と呂布は馬から崩れ落ちた。
呂布が倒れたと知って連合軍の将兵たちの士気はあがった。
袁紹は全軍に突撃の命令を出した。
李世民一行はもう虫の息の秦叔宝の周りに集まる。
「秦叔宝死ぬな。」李世民は両目に大粒の涙を溜めながら秦叔宝の手をとってしゃべりかける。
尉遅敬徳、程咬金、羅士信も泣いていた。
「李世民様、約束をやぶり申し訳ございません。私はこれ以上は李世民様と共にはいけそうもありません。」
「秦叔宝、わかったもうしゃべるな。」
「この時代でも李世民様と共に天下泰平の世を作りたかった・・・」
それが秦叔宝の最後の言葉だった。
李世民は涙を拭い、秦叔宝の目を閉じさせると遺体を兵士たちに運ばせた。
「秦叔宝よ、私は誓う。必ずこの時代でも唐王朝を建てて見せると!」




