第3話:298の朝のニュース
TVキャスターが話しているのは、このエリア298に関するものであった。
「“旧”観光特区、エリア298のキュレーターウイルス感染者は未だ、治癒していない模様です。引き続き、Dr.コーゾーチームの現地での研究に期待したいところです」
僕はミックスベジタブルをフォークでかき集めながら、今日も、変わらない報告が全国に伝えられていることを確認した。
「聞いたか?サーバルちゃん。Dr.コーゾーの『チーム』だとよ。どこに、このコーゾー様以外のメンバーがいるっていうんだ?」
コーゾーはテレビとサーバルちゃんに目を配りながら言った。
「毎日報告を入れているシンゾーのことか?あいつはエリア統括長。研究者じゃあ、ない」
「じゃあ、データの統計解析をしているやつらか?解析だったらこっちでもやっている。あれはただの検定だ」
サーバルちゃんはコーゾーのお喋りには目もくれず、お皿に残ったキャットフードを舐め回している。
「そうなると、残るはお前だけだな、騎士サーバル」
持っていたナイフの切っ先をサーバルちゃんに向けた。
「そなたをただいまをもって、国立感染症研究所・エリア298分室の研究員として任命する」
ナイフの平をサーバルちゃんの両肩に、順に当てた。
「給料はキャットフード一年分だ」サーバルちゃんは即座に顔をコーゾーのほうに向けた。
なんて現金なネコだ。“キャ”しか言ってないあたりから顔を上げやがった。
「期待してるぞ。今日も、給料分は働いてくれよな」
コーゾーはサーバルちゃんの頭を撫でると、サーバルちゃんの皿とテーブルの上にあった食器を持ち上げ、台所に行き、朝食の片付けを始めた。
「サーバルちゃん、10分後には出るからな、すぐに出発できる用意をしておけ。テレビのスイッチもだ」
コーゾーは台所を早々に片し終えると、銃ロッカーのある自分の寝室に向かった。
サーバルちゃんは点けっぱなしになっている、テレビに向かった。
「…くれぐれも一般市民の方は、エリア298に近づかないよう気をつけてください。また、エリア外で感染者を見つけた場合は、速やかに“地方創生推進室”までご連絡お願いいたします。電話番号は0120-783-64…」
「みゃ」
サーバルちゃんはTV台に左前脚をかけ、体を伸ばしながら右前脚でスイッチを押してTVを消した。