第2話:298の朝食
「うみゃみゃっ、うみゃみゃっ」
僕が名前を正しく呼び直すと、サーバルちゃんはまた窓のほうを向き、ラジオ体操らしきものを再開した。
「にしても、サーバルキャットだから、サーバルちゃんってのはあまりにも安直過ぎないか」
「お前のご主人様は」
貴重な朝の時間を割いて問題提起をしてみたが、サーバルちゃんはこちらを見向きもしなかった。
せめてタマとミケとか、猫らしい名前に変えてみてはどうだろうか。少し考えてみたが、サーバルちゃんがまた前脚を交互に出す情景が思い浮かんだので却下。猫扱いするとすぐ怒るサーバルちゃん。
「シンザキ…」
冬が終わる兆し、暖かい早春の日差しが、サーバルちゃんの黄褐色の毛皮をキラキラと輝かせていた。
そんな変わらない朝、正確には変わってしまったあとから変わらない朝であった。
台所の食料棚からランチョンミートとキャットフードの缶を取り出し、ひとつは人間用、もうひとつは猫科用として調理する。といってもたいしたことはしていない。前者は切り分けて焼いて、申し訳なさげにミックスベジタブルの炒めものを添えるだけ。後者は缶切りを使ってお皿に開けるだけだ。おしゃべりもせずに淡々とこなすだけの朝食。
上沼恵美子もびっくり。
「さぁ、出来たぞ。お食べ」
キャットフードを入れた皿を、コトンと床に置くと、体をひねりながら反転して走りだし、お皿の所にたどり着くと、いただきますも言わずにご飯を食べ始めた。
いつもの朝だ。TVのニュースも、いつもと変わらない内容を垂れ流している。
「おはようございます。朝のニュースのお時間です。まずは、ハザード化した“旧”観光特区、エリア298の最新ニュースから」
「Dr.コーゾーを中心とした調査チームの報告によれば…」