第12話:298の選択
「今回の決定につきましては、Dr.コーゾーと綿密な会議を繰り返した上での決定で、あります」ボス・シンゾーは記者たちの前で淡々と話している。
「なぜこんな急に決定を下したんですか?」記者から質問が挙がった。
「えー、感染者達の社会性の高さを我々はちゃんと認識しております。迅速な実行、先制攻撃を行うことで、そのような社会性のある感染者たちを処分することができます。えー、これは積極的平和の実現のための…」
僕はここらへんから、この街を出るまでの記憶が曖昧になった。
綿密な会議というのはいつ行ったんだろう。僕はもしかして、いや、連絡ミスなだけだ。こんな大事な情報来ていないわけがない。
急いで携帯から自分のPCにアクセスしたが、核爆弾投下に関するメールは1通もなかった。
「周囲への影響はないんですかっ…」記者たちがまだ、質問を続けていたが、ボス・シンゾーは会見場を去っていった。
「爆弾投下まで、あと6時間くらいだって。どうしますか、Dr.コーゾー」メカ・アラマタは尋ねた。
「最後までここで、死闘を繰り返してもいいですよ。ただ、私が指示した感染者はもう298のゲート境界までたどり着いています」
「少なくとも10体は298からの脱出に成功するでしょう。そしてゆっくりと私たちはまた、仲間を増やしていきます。まぁ、地球最後の抗体持ちを失った人類など、恐れるに足りません」
「ボス・シンゾーは一時的だが、英雄になり。地球全体としてはゆっくりと私らの勝利へと向かう。シンゾーと私達はウィンウィンですね〜」
僕はぼうっと、せっせと猫じゃらしデータベースを作成しているサーバルちゃんを眺めていた。
「君の望みは?」メカ・アラマタは僕に尋ねた。
「あいつは自分がいるときの安寧だけが欲しいんだ」
「君の望みは?」メカ・アラマタは僕に尋ねた。
「あいつらは自分がいるときの安寧だけが欲しいんだ」
「君の望みは?」メカ・アラマタは僕に尋ねた。
「怖くて言えない、口に出さないようにしてたことがあるんだ。僕が第2の298を案じてワクチンを研究することを実はみんな望んでいないんじゃないかって」
「君の望みは?」メカ・アラマタは僕に尋ねた。
「のど元過ぎた魚の骨の分類をひたすら続ける僕はもう、外の人たちと違うんじゃないかって」
「君の望みは?」メカ・アラマタは僕に尋ねた。
「僕の望みは、キュレーターウイルスの撲滅だ。そのために僕の体を使ってワクチンを開発する」僕はメカ・アラマタに答えた。
「その道はいままた、大きく遅れようとしていますよ。この大量のサンプルと地球最後の学芸員の喪失によって」
「地球最後の学芸員?」誰の話だ?
「知らなかったんですか?僕らの間では有名な話ですよ、『僕らゾンビ・キュレーターを集めて、分類し、調査研究しているキュレーターがいる』って」
「僕らは死ぬまで分類と所蔵を繰り返すだけのモノです。だとしたら、集めるものがなくなった地球で最後まで学芸員をしているのは、キュレーター・キュレーターのコーゾー、あなたでしょう?」
僕がキュレーター?
「はっ、ははは。聞いたかサーバルちゃん?」サーバルちゃんはデータベースに没頭して聞いていない。
「僕が学芸員だって。しかも、シンゾーにも、国民にも望まれていない収集を続ける学芸員だって!僕が地方創生大臣だったらそんなやつ、とっくにクビにしているよっ!」
「もう一度聞こう、君の望みは?」
「俺は…、自分の信念を通す」
「知ってます。政治家は信念を変えないから政治家なんでしょう」
「お前らは癌だ。俺は全ての癌を潰す。そのために…」
「想像力の足りない愚民どもに現実を補填し…」
「コレクションを増やす」




