第11話:298の相棒と決定
「まぁ、今となってはメカ・アラマタですが」メカ・アラマタは笑いながら言った。
メカ・アラマタはいかにもロボットらしいデジタルなデザインの顔で笑った。
「幸運なことに、私の収集者がたくさんいましてね。彼らが私を寄せ集めて、再構築してくれたのですよ。足りない部分は機械になってしまいましたが。ぶふふっ」
「キュレーターさんの収集能力は本当に素晴らしいです」
メカ・アラマタはロボットの手でカンカンと拍手をした。
「お前らは、ここで何をしようとしている」
「何を?あいも変わらず、分類と所蔵を繰り返すだけの学芸員として、日々勤しんでおります。何も変わりません」
「パンっ!」
僕はメカ・アラマタの足元に向けて銃を放った。
「聞きかたを変える。“お前は”何をしようとしている。とぼけても無駄だ。ここに感染者を集めているデータを確認した」
「そうですねぇ。大したことはしてませんよ。彼らの体をちょこっと直してあげただけです。昼でも動けるようにしてあげただけです」
「は?」
「だから、彼らの夜しか活動できない体を、日の当たるもとでも動けるように改良してあげたんです。もともと夜しか動けないというのはウイルスの開発が間にあわなかったことによるバグみたいなものでしたから。明日にでもなればみんな、昼から活動し始めることでしょう」
「こんな感じで」
そう言って、メカ・アラマタはさすまた型の手の中央から、弾丸を射出した。弾丸はサーバルちゃんを貫いた。
「みゃう〜〜!」
「サーバルちゃん!」
コーゾーは倒れかかったサーバルちゃんを抱きかかえた。くそっ。
「パンっ!パンっ!」
コーゾーは片手で抱えながら、メカ・アラマタを撃った。
「ほっ、ほーい!」
下半身が機械化されたメカ・アラマタは軽快なステップで、銃弾を避けた。
「いつぞやのメタボな私ならソッコーでミンチでしたね。そんなことより、そちらのサーバルキャットを見てあげたらどうですか?今まさに、一匹のゾンビ・キュレーターが生まれようとしているんですよ。ぶふふっ」
腕の中のサーバルちゃんの息がしだいに荒くなっていく。
「サーバルちゃん!」声をかけるが、何も聞こえてなさそうだ。目も血走っている。典型的なオタクの顔だ。
「ほーら、そこのサーバルキャット。お仲間になった記念に私のコレクションを分けてあげましょう」
おもむろに、メカ・アラマタは機械化した胴部のハッチを開き、大量の猫じゃらしを床に広げた。
「ほらほら〜、猫じゃらしですよ〜」
「ニャー!」
サーバルちゃんは今まで出したことのないような声を出し、床一面のコレクションにヘッドスライディング。
もう猫まっしぐら。てか、やっぱり猫じゃないか。
猫じゃらしに突っ込んだサーバルちゃんはすくっと立ち上がり、物色し始めた。
「うっわ、やっべー。これとかぺッ○ルートのカシャカシャぶんぶんトンボじゃん。高くて売ってるのもみたことないよ〜」
「さっ、サーバルちゃあん?」びっくりして、変な声が出た。
「ドギー○ンのも全部揃ってるし。先輩マジハンパないっす」
サーバルちゃんは黄色い眼を爛々と輝かせながら、多種多様な猫じゃらしを堪能している。
「えっ、ちょっとサーバルちゃん、普通に喋ってるけどさ…」
コーゾーはサーバルちゃんに近づいて声をかけた。
「あっ、いまメーカーごとに分類してるところなんで、後にしてもらってもいいすか」
「すっ、すみません」
「データベース化して、正規化終わったら声かけるんで。はい。いいすか?」
「いっ、いいっす」
ってかサーバルちゃんデータベースできる人だったんだー。後で、SQL言語教えてもらおーうかなー。
「最後の友人にも裏切られてかわいそうなコーゾー君、もう諦めたらどうでしょうか。感染者は24時間稼働型になった。サーバルキャットも感染した。もう君1人では太刀打ちするのは厳しいでしょう」
もうだめなのだろうか。いや、落ち着け。また感染者を集め直せばなんとかなる。僕がまだ感染していないということは、少なくともこの体は新しいウイルスに対する抵抗力があるってことだ。
「そして、そんな落ち込んでるコーゾー君にビッグニュース〜」
「いや、俺は」
「じゃん!」メカ・アラマタが胸部のプレートを観音開きすると、TVのディスプレイが現れた。そしてそのTVではボス・シンゾーが会見しており、画面上部に大きく、「エリア298への核爆弾投下決定」のテロップが貼り出されていた。




