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地球最期の学芸員  作者: やまけん
10/13

第10話:298の殲滅作戦

「うぅ、寒っ」

 時刻は夜の11時。298駅前には昼よりいっそう冷たい風が吹きつけていた。

 僕でさえこんなに寒く感じるのだから、サバンナに住んでたサーバルちゃんはもっとキツイことだろう。

「みゃう…」

 車を駅前のホテルに止めてきた僕らは、ある場所に向かって歩いていた。そう、今夜で全て終わらせるために。

 ここ最近のデータから、感染者に少し変な分布変異が見られた。今まで一様に分布していた感染者が、日に日に298駅周辺に集まってきているのだ。

 決定的だったのは、今週の調査結果。感染者がある建物周辺を除いて現れなくなった。

「298観光博物館か…」

 僕とサーバルちゃんは道路を渡り、298観光博物館の入り口に着いた。

 なぜあいつらはここに集まっているんだ?なんのために、誰が集めているんだ?疑問は考えれば考えるほど出てくるが、こっちとしては相手を叩く丁度いい機会。集まった理由を聞く前にぶっ潰してやる。

「準備はいいか?」隣のサーバルちゃんに目を向ける。

「みゃう!」元気に右前脚を上げた

「状況開始」

 博物館の入り口のドアを蹴り開けて、突入した。開館式を執り行ったエントランスホールにてさっそく、感染者を多数確認。

 まずは入り口すぐそばにいた、古美術品感染者から。

「いい仕事してますね〜」古美術品感染者は自分のコレクションを愛でながら、ずっと同じ言葉を唱えていた。

「(標的はコレクションに夢中でこちらに気づいていない模様)」

「いくぞ、サーバルちゃん!」

「そいっ!」

 僕らは彼の背後に回り、持っていた皿を取り上げ、地面に叩きつけた。

「こいまりっ!」感染者はショックで蒸発して、消え去った。

「クリア」

 次だ。

 積み上げた同人誌のエンパイアステートビルに囲まれながら、読書にふけっていつ腐女子を発見。

「いくぞ、サーバルちゃん!」

「そいっ!」

 同人誌をすべて床に並べ、あっつあつのカレーを入れた100人用の鍋をその上にのせた。

「鍋敷きとしては優秀みたいだな。この同人誌は」

「おそまつっ!」

「クリア」

 ジャニオタの推しメングッズの顔を全て温水洋一に。

「けんてぃぃぃ!」

「クリア」

 さかなくんの飼っている魚をすべて、塩焼きに。

「ぎょぎょぎょっ!」

「クリア」

 

 1つ1つコレクターズアイテムから根絶やしにするのは骨が折れたが、日が昇る前にはなんとか、エントランスホールにいた感染者の殲滅を完了した。

「はぁはぁ。ここにいるやつは何とかクリアできたな」

 サーバルちゃんもはぁはぁと息を荒げている。さすがにこの人数はサーバルちゃんもきつかったみたいだ。

 ただ、今殲滅した感染者は全て、「オタク」か「マニア」だった。おそらく、この建物の奥に、「ゾンビ・キュレーター」に進化した奴らが隠れているのだろう。

 といっても、建物の奥に進むのは自ら火に飛び込むようなもの。

「よしっ」僕はカバンの中から、缶に入った乾燥固形物を取り出した。蚊取り線香のような形をした可燃物だ。僕はその一端にライターで火を点けた。火がつくと乾燥固形物は白い煙を出しながら、周囲に独特の香りを醸し出した。

「サーバルちゃん知ってるか、学芸員という生き物はな、この臭いが大好きなんだ。説明してもわからないとは思うが、この中には臭化メチルというのが入っていてね。年に1回の薫蒸くんじょうの時だけ、彼らもこの香りを嗅ぐことが許されたん…」

「カッ、カッ、カッ、」

 足音が近づいてくる音がした。さっそく集まってきたか。

 人影が近づいてくる。それも1人ではない。

「いきなりバトルロワイヤル、ですか」

 冷や汗が僕の頰をつたった。本音を言うともうちょっと回復してから対峙したかった。

 黒い塊のシルエットの感染者達がだんだんと距離を縮めてくる

「…ウィーン…ウィーン」

「?」感染者の足取りとは思えない機械音が聴こえるなと思ったそのとき、ありえない存在を目の当たりにした。

「優秀です。とても優秀ですねぇ。相変わらず」

 感染者の集団をかき分けて出てきたそれは、ありえない。在り得ないが、確かに僕の目の前に現れたのだ。

「な…、なんでお前がここで、俺と話しているんだ」

「なんでお前がここで、俺と話しているんだ?」

 カラダの大部分が機械化したそれは

「当然です」

 キャタピラでできた下半身で僕に近づき

「来場者を出迎えにきたんですよ」

 前よりデジタルになった声で

「ようこそ、298観光博物館に」

 挨拶をした。

「私が館長のDr.アラマタです」

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