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8話 結果

 ロットル、それは己の名。

 人間とは違い、魔物である自分にとっては名前とは本来必要の無いものである。

 しかし彼には名があった。


 昔の事だが、彼は他のオーガよりも小さく弱かったからなのか、よく周りからいじめられていた。

 その行為は誇り高きオーガ達にとって屈辱であり、彼も例外じゃなかった。

 何故自分がこんな辱めを受けなければならない?

 確かに他の奴らと違い弱いが、それが何で理由となるのだ?

 そして、聞いてみたのだ、何故自分を虐めるのか?

 答えはすぐに返ってきた。


   「お前が我等鬼オーガの生き恥だからだ」


 ただそれだけだ、と。


 彼は怒りで拳を震わした。あまりにも理不尽だった。そして彼は決意したのだ。

 __コイツ等を見返す、と。


 だがいくら努力しても己を辱めた奴等に敵わなかった。才がなかったのだ。彼は絶望した。

 しかし、彼に幸運が来たのだ。


「貴様を私の部下にしてやろう」


 ロットルが16歳の時の事、村に他の種族の魔物が襲い掛かってきた。

 勿論抗った。彼等は誇り高き戦闘部族なのだ。

 しかしそれは無意味な行為。

 突如現れた黄金の髪を持つ美しき女の悪魔に村の者全てやられた。

 最後に残るは己のみ。

 女は自分の前に立ち、あぁ殺される、なんと意味の無い生を送ってきたのか__

 彼は静かに目を閉じ、膝を折り、女の持つ刃が振りかかるのを待った。


 __が、いくら待っても来ない。

 彼は目を開く。前には自分と同じ目線にしゃがむ女がいた。

 そして上記の言葉を吐いたのだ。

 信じられなかった。

 何故こんな見た目も中身も弱い自分を部下にするのか問いかける。


「弱き者の味方だからさ」


 たったそれだけの言葉を彼は信じた。

 その後彼は女にロットルと言う名を貰うことで力を手に入れ、またそこから努力に努力を積み重ね、いつからかあの日自分を救ってくれた女の側近まで成長していた。

 側近になったロットルはそれからと言うのも巳を救ってくれた女に尽くす為強力な力を持つ者達を探し続けた。

 ゴブリン達の村を襲ったのも新しき仲間を増やす為である。

 あの日己を救ってくれた主の為に、今日ロットルは村を焼き、弱き者を救い、愚か者を殺す、それが彼の日課だった。

 今回は少し予想外の事も起こりながらも、とてつもない回復魔法を見せた者、始めこそ罵ったがそれでもなお、自分達に抗おうとする強に精神を持つ己と同じ種族の者に出会えたのである。

 あぁなんて今日はついているんだ、ロットルはそう考えていた。

なに、反抗するならば戦い敗北させ、洗脳されば良い、それもひとつの救いなのだ__なんて思いながら。

 案の定、奴らは反抗してきた。

 しかも10秒で倒す?それはこちらの台詞__


(何が起こっている?)


 シャドウウルフに奴等を囲めと命令し、剣を構える。

 構えた、筈だった。


(何故私は宙に舞っているんだ?)


 心なしか頭が痛い、クラクラする。

 よく分からない魔法をかけられたのか?シャドウウルフはどうした?

 彼等は影と影を移動し、余程のものでない限り対応出来ない。

 目を下に向ける。

 そこに見えたのは、無残にも食い散らかされた愚かなる者達__では無い。

 そう、そこに見えたのは自分の分身と言ってもいいぐらい共に過ごし戦ってきたシャドウウルフの姿が確かに見えた。

  __全て何処か破裂している状態で、だが。

 意味が分からない。

 理解したくない。

 だって、B+だぞ?まずBクラスになるものが少数なのに+も付いているんだぞ?そんな我等シャドウウルフが何故、何故!?


「Bクラス?よく分からないが、この程度でよく威張れたものよ」


 あの人間の声がする。

 いや、人間じゃないと言っていたか。

 何故自分の思考を読んでいるのか、口に出した覚えはない。

 あぁ、もうどちらにしよ関係無い、のか。


 ロットル、それは誇り高きオーガの名。

 しかしそんな事世界を征した魔王にはどうでもよい事だった。



「な、にが……起こった?」

「ふん、つまらん。この程度か」


 我があの後宣言すると、ロットルだがリットルだが言う男、目の前の雑魚がシャドウウルフとやらに命令し、剣を掴もうとした。

 まず始めに男の顎を蹴り宙に浮かす。

 軽く10mは飛んだんじゃないか?

 で、その後蹴った反動で体が逆立ち状態になるようにし、そこらに落ちている石を拾う。

 次にもう名前で何するか分かるシャドウウルフが木の影に入り、後ろの青年とカナトの影から出て来たからそのタイミングを掴み、二匹に石を投げた。

 わざわざ見なくても魔力探知があるので確認する必要もない。

 ちなみになんか石が当たったと思われる箇所が爆発した。

 石を投げたら一回転し、地面に足をつき腰を低くして、宙に浮かんでる男と同じ高さに飛ぶ。

 最後に雑魚の頭を掴んで潰した。

 なに、この手の奴はプライドが変に高いから口を割らんだろうし、そんな事に時間を使うなら、情報など後ろに控えている雑魚から聞き出せばいい事よ。

 それだけの事。

 ぶっちゃけ10秒もかからんかった。


「どうする、命が惜しければ情報を寄越せ」


 後ろで待機してた他の雑魚に問いかければ頭をはち切れんばかりに縦に振った。

 さっきの奴より忠誠心が低いようだ。

 はっはっは!素直な奴は嫌いじゃないぞ!



「ま、ひとまず大体の情報は得られたな」



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