5話 お着替え
「クレエ」
人間はあれからも考えてずっと難しそうな顔をしていた。そしてさぁ寝るかーと話になった途端、急に言葉を発した。
「クレエ?」
「えぇ。創造する、という意味です。なかなか音が良くないですか?」
「クレエ……クレエか。うん、いい。いいぞ!」
クレエ
音は少し女っぽいが、良い。気に入った!なかなかいい名を思いつくではないか!
「うむ、気に入ったぞ。では、明日は人間に化けてクレエと名乗ろう。お、そうだそうだ。忘れるところだった」
「どうしました?」
「ふっふっふっふっ。それは明日のお楽しみよ。明日に備えて寝るが良い!」
さぁさぁとカナトを先ほど作り出した毛布に入れる。
この毛布は先程我がカナトに話を聞きながら作ったのだが、やはり駄目だな。実物ときちんとした材料が無いと納得出来ん仕上がりになる。
え、なら始めから出しとけ?忘れてたんだ。わっ悪いか!?
コホン。我の創造の力の良い所は材料を必要としず、魔気を消費するだけで良いことだ。
だが、それはその材料を理解していないとどうやらいけないらしい。
この毛布もカナトの言うモメンを元としておるが、ゴワゴワしておる。
うーむ、勉強不足か。だって今まで必要しなかったし……まぁカナト曰く、この能力上手く使えばいい商売できると言っておったしな!
なーに。時間はたっぷりとある。はっきりとした目的がない今はゆっくりとするかな。
「カナトは……もう寝ておるか」
やはり慣れない環境には疲れるのかいつもさっさと寝てしまう。
いや、単純に疲れてるのか?あんだけ毎日歩けば人間なら疲れるわな。
「明日からきっと本番だ。今は休むといい」
さて、我は明日の用意をするか。何も用意するか、それは__
「いやーホントに魔力探知あって良かった」
何を隠そうと、いまから我々の服を作るのだ!この国?この世界のそれっぽい服はだいたい似ておるし、ゴブリンやここよりもっと遠い人間の国を少し観察すればいいだけの事。
我はともかく、カナトの服では動きやすそうではあるが目立つ。
さっき創造の力の欠点は言ったが、少し粗悪品ってだけだ。売るにはアレだが、自分たちで使う分には問題ない。
人間の国に行ったらまた買うか真似すればいいだけの事よ。
「ふむ。シンプルに、なおかつ旅の者のような服にしなくてはな」
待ってろよ、カナト!
「おはようございます……あれ」
「起きたか!飯の用意は出来ておるぞ」
肉の焼ける音と匂いに釣られたのか、カナトは目を覚ましたようだ。
「今日はお早いんですね」
「まぁな。ほれ」
「え、なんです……わっ!?つくったんですか、これ?」
「ふっふっふっふっ。大体サイズも合ってるはずだぞ。飯を食ってから共に着替えようではないか!」
カナトは我が作ったのものを気に入ったのか、少し興奮しているように見える。
いやー照れるなー
「一応最後に確認としましょうか」
「あぁ」
取り敢えず我々はゴブリン共の村に旅の商売人として行く。
次に、値段は少し落として情報を得る。値段を落とす理由は簡単だ。
感謝させる為。
詳しいことはよく分からんが、どうやらゴブリンの村は寂れており、怪我をした奴が多いようなのだ。
今はまで言わなかった理由?興味なかった。
感謝をされれば贔屓にできる。贔屓させたら「こいつらは有能」と噂が勝手に出来る。
噂が出来れば他の魔物、人間にだって広まるだろう。
広まればこっちのもの。色々と都合が良い。
「しかし、動物達はいても魔物は少ないんですよね?ゴブリンの村でも何かあったんでしょうか」
「大方今まで以上に強い奴が現れて強者ぶってるのだろう。よくあるよくある」
「うわー興味なさそ」
「雑魚の事は興味ないからな」
だがゴブリン達の状況確認は必須。
ものによっては関わる可能性大だからな。
でも強いなら戦いたい。
「さーて、食い終わったし、着替えるか!覗くなよ!?」
「覗かないわ!」
_お着替え中_
「うむ、これでよし」
池の水に映る自分を見て身だしなみを整える。勿論人間に化けているぞ?
「着替えたかー?」
「いいですよー」
「よしっ……ふむ。流石我。サイズも見た目も完璧だ」
「うわっ誰だこのイケメン……」
「感想を頼む」
「ええ……
えーと、そうですね。今自分の目の前には柳煤竹……灰色がかった暗い黄緑色の髪に赤目褐色肌。服はレモン色で腕まくり?この説明」
「一応だ」
「もしかしてこれ自分も……あーはいはい!
肩より少し短めの髪を後ろでまとめ、藍色のポンチョっぽいのを着てます。下はクレエと色違いのお揃いです。ブーツですっ!!…………これでいいでしょう!?」
「ご苦労!!」
いやー敢えて他人に言わせることで自分を引きただせるのはいいな!ははははは!!!