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4話 貴方のお名前は?

「さて、では人間に化けようか」

「……案外簡単に化けるんですね」


 パッと魔気を抑え人間に化けると伝えると人間は少し我を睨んだ。

 少々からかい過ぎたな!ハッハッハっ!


「ハッハッハっ。そう睨むな、スマンスマン」

「……」


 ジィと我を睨んだのち溜息をつきながら人間は元の表情に戻った。


「そういえばその……変身?ってやっぱり難しいんですか?」

「ん?ああこれはな、我だから簡単に出来るのであって、それに特化した魔物(雑魚)以外は力がないと無理だ。


 変化には2種類ある。ひとつは幻影などの力で姿を"誤魔化す"こと。もうひとつは魔気を身体に巡らせ姿を"変える"こと。

 この2つは似ているようであって違う。

 お主のような初心者で異世界人に分かりやすく例えると……そうだな、誤魔化す方はマジシャン。

 なんとも素晴らしい手品を披露するがタネを知られたら終わり。客は去ってしまう。

 だが、姿形を変えてしまう方は変態__つまりは身体自体が"それ"になるのだ。だから見破れるものはそう多くはいないだろうな。


「と、ゆうことだ」

「なるほど。勉強になります」

「うむ。励むといい!」


その後も魔気の扱い方や魔物の基礎知識等を歩きながら教えた。

 ゴブリンの村までは後半日でつくが、その後の話をする為に一数キロのところで一旦止まる事にし、ついでにそこで人間に化けるとでもするか。


「そういえばお主の名を聞いていなかったな」

「なんか今更感ありますね」


 人間は少し笑いながら肉を食べる。

 人間の口は小さいからなのか先程からあまり減っていないように見える。  が、こいつはなかなか食べる奴で、減っていないと思ってたら次の肉に移ってたりする。

 食うスピードは速いようだ。


「この世界ではどうなのか知らんが、我の世界だと真名を言うと魂を操られたりするからな。我は最強たるゆえそんなことはなかったがな!」

「そもそも名前が無い、ってのはやめてくださいよ?」

「………………」

「まさかの図星かいっ!!」

「し、仕方ないだろう!?基本魔物は種族名で事足りるし、個人名をつけるとなると親か力のあるものしか出来んのだ!第一名前とは一種の呪縛だからむしろ個人名をつけられるのを嫌がる種族もいるのだぞ!?」


 まさか人間に名前が無いのをバレるとは思わずつい荒ぶってしまったが、これは本当の事だ。

 力が強く世界を揺るがすほどの魔物なら通り名ぐらいはあるが、我ってば通り名つく前に世界を消しちゃったからな!


「まぁ大体の予想はつくのでいいですが……あれ?だとすると自分の名前言ったら駄目なんじゃ……」

「いやむしろここでお主の名前を掴んでいた方がいい。我の方が強いから何者かに主導権を取られることもないからな。そしてそれは、我にも言える」

「つまり……?」

「お主が我の真名をつけることにより、例え通り名をつけられてもそれが真名になることはない。そしてお互いがお互いの魂を掴むことで強固なものとなり、そうやすやすと魂や体を操られたりすることがなくなるのだ」

「なんだか難しいですね」

「慣れよ慣れ」


 空はもう暗く、月も隠れているのか森はここ以外は全く見えない。

 まぁ我は見えるけど。人間は二本目の肉を食べ終えると自分が採ってきた木の実をちびちび食べている。


「食べ過ぎるなよ?」

「そちらに言われたくはないです」


 確かに我は四本食べたが。あぁ、何故食料を残すのかというと、ゴブリン共に交換材料として持って行く為だ。

 一応違う世界の者とはバレぬように旅の商売人的なノリで情報をもらいに行く事になったのだ。

 正直面倒だが、人間によれば「ここでうまく名を残せばこれからも使えます」だそうだ。なるほど。名を残すのは大事だな。


「じゃあ今更ですが自己紹介を。名前を真宵奏人(マヨイカナト)と言います。これからよろしくお願いします」

「カナトか。よろしく頼む」

「で、そっちの名前ですが……」

「かっこいいので頼む!」


 えぇーぶちゃぶりにも程がある……


 人間は頭を抱えながらボソボソと何にしようか考えはじめた。ん?いや、名前を聞いたのだから人間は失礼か。

 カナト。いい名だな。


「何か得意な魔法とかあります?」

「んー我、不得意なものもないが得意なものと言っても……完璧たるゆえ、分からぬな!」


 がはははは!と笑えばカナトは文句をと言いたげな顔をした。仕方ないだろう!?


「好きなものとかは?」

「好きなものか……そうだな、物を作ることは案外好きだぞ」

「え」

「何だその顔は」


 カナトは意外そうな顔をしながらこちらを見た。


「そらなー我が世界を滅ばした後、すっごく暇だったんだぞ?破壊してしまくったから壊すものもないぐらいには。だから逆に考えたのよ。我が住んでた城だって、雑魚共が作ったものを真似して造ったものだったしな。はー流石我ってば天才」


 はぁーとカナトは我の言葉に納得したのかウンウンと首を縦に振った。呆れるようにため息ついたのは知らん、知らんぞ!

 後、破壊しまくって飽きたのも正直ある。

 だって雑魚共みんな絶望の顔して抗ってこなかったし?で、始めこそ上手くいかなかったが、だんだんと慣れてきたのだ。

 ん?そう考えると、創造って我の得意分野じゃね?


 そんなことを考えていたからか、我とした事が人間の小さな呟きに気付かなかった。


「なんか、皮肉ですね。世界を滅ばした最強のドラゴンが創作好きって」


 それは、何処か悲しげに、憐れむように、ボソリと風と共にに消えていった。




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