(Ⅸ)ユニバース王国で気分転換
翌日、僕は早朝に起きた。どうやらいつもより早く起床したらしい。
「まぁ、今日は休みだし、もう一回寝るか」
「エイジ…お腹すきました。ご飯下さい」
何で僕のベッドに居るんだろう?昨日確かにユリンと一緒に連れて行かれるのをこの目で見たのに
「……おはよう、クレイン。じゃあ朝ご飯にするから顔洗ってリビングの席に座っといて」
「わかりました」
適当なTシャツをクローゼットから取り、扉を開けた。
ユリンはまだ寝ているみたいだ。ちょっと安心する僕であった。
※※※※
せっかくの休日なんで朝食は豪華にした。トーストはいつものことだが、それ加えハムサラダとタマゴエッグを作った。
「さて、頂くか。いただきます!」
続けてクレインもいただきますと言った。この子は割と順応で教えた事はすぐに覚えるから本当に良い子である。
「どれも美味しいです。」
「そう言ってくれると作ったかいがあったよ」
「お兄さん!まさか朝食を作ったのですか!?」
「ユリンおはよう。席に座りなよ、暖かい内に」
「お兄さん……私、私今凄く感動しています!」
朝食作っただけなのに何で泣くんだ。 ユリンは本当に涙もろいな。
「エイジ……おかわり下さい」
もう食べ終えたのか!食べるの早すぎ!
「トーストもう一枚焼くから待っていて」
「はい」
「あぁ~お兄さんの朝食最高です」
「そんな大したことことないと思うけどな」
ユリンは満足気に部活に行き、クレインはトーストを軽く三枚食べた。この子のお腹は一体どうなっているんだ!?
結局何だか落ち着かない朝食になっちゃったけど、これもこれで悪く無いなと思った。
※※※※
ふ~暇だな。何もすることが無いとちょっとキツい。
Prrrrr
「ん、電話か?電話主はスノウ!」
スノウと連絡先を取ったのは昨日の昼食の時……どうしてもと言われたので仕方無しに取ったのだ。まさか今日来るなんて……取りあえず出よう。
「はい、もしもし」
「あっ、やっと出てくれた。エイジ!」
「やぁ、スノウ。どうかしたの?」
「うん、せっかくの土曜日だから…ちょっと私の国にご招待したいなって!帰りは日曜日になりそうだけど良いかな?」
ユニバース王国か……そういえば噂でしか聞いたこと無かったし…ちょっと気になるな。
「全然大丈夫だよ!それに前から気になっていたし…」
スノウは嬉しそうな声で
「本当に!?良かった!じゃあ集合場所は駅に集合で!」
「わかったよ。すぐに行く!じゃあまた後で」
「うん、また後で」
僕は電話を切り、急いで服を着替える。あっそうだ。ユリンにメールでもしとくとか。帰りは日曜日の夜になると…これで良し。後は……
「クレイン!」
「どうかしましたか?」
「ちょっとユニバース王国に行くんだけど付いてくるかい?」
「私は寝たいのでお休みさせてもらいます」
そう言うと早々にソファーの上で居眠りを始めた。仕方無い…僕一人で行くか。別に一人にしても問題は…無いよね。
「じゃあ行ってきます」
僕はしっかりと鍵をかけ、急ぎ足で駅へと向かった。
※※※※
電車で移動か……電車に乗るのも結構久しぶりだな。
「お待たせ!」
しばらくするとスノウがやって来た。服装は黄色のドレスに首に綺麗なアクセサリーを巻いている。まずい!僕の目がもたない!
「どうしたの?エイジ、何か顔赤いよ?」
「気のせいだよ!多分…じゃあ行こうか」
「うん!」
電車まで王国は約1時間、長い距離になる。
「どんな国何だろうね?」
「着いたらわかるよ!楽しみにしてて」
僕はウキウキしながら国に着くまでスノウと雑談をした。
※※※※
一時間後、電車は予定通りユニバース王国に到着。僕は電車を降り駅に出た。
「うわぁ、結構古代的だね……」
「そうなんだよね。だからジェネシス王国に来た時驚いちゃったよ!とにかく近代的だったし」
ジェネシス王国……僕が住んでいる街で都会化が進行している所だ。このまま進むと魔法を使わなくなるかもしれないと言われている。
それに引き換えユニバース王国はかなり古代的だ。馬車があったり、城があちこちにあったりと、とにかく古代のままである。
「じゃあ、そろそろ行こうか?私の家に……」
「あぁ、そうだね。でもその前に…」
「前に?」
初めて来たんだ。この国に…せっかくなら遊びたい。
「ちょっとこの国を散策して良いかな?」
「うん、わかった!じゃあ私のオススメの場所案内するね」
「宜しく」
様々な場所をスノウは紹介してくれた。公園や歴史的建造物や僕の国にはないお店など……数え切れないくらいの場所を紹介してもらった。僕もいつかスノウに自分の国の紹介をしないといけないな……
「あっ、夕方になっちゃった!」
ふと言われて空を見上げると色が橙色になっていることがわかった。結構歩きまくったな。
「こうしちゃいられない!早く行こうエイジ!付いてきて!」
「あぁ、わかったよ」 僕達は大急ぎでスノウの家に向かった。
※※※※
「はぁ、やっと着いた!」
「えっ?ここが…」 「うん、私の前に住んでいた家だよ」
デカい!デカすぎる!門が構えられてはいるけど僕にはわかる。この城絶対デカい!
「お嬢様お帰りなさいませ。してこの男は……」
鋭い目線で僕を見る二人の門番。かなり警戒しているようだ。
「この人はエイジ・ブレイン…クラスメートです。私確か連絡していると思うのですが……」
「はっ、申し訳ありませんでした。エイジ・ブレイン様!どうぞお通り下さい」 二人の門番は警戒を解き、直立の姿勢から微動だにしなくなった。かなり鍛えられているな。 「さぁ、行こうよエイジ!」
「うん」
僕は内心緊張しながら城に入っていった。
※※※※
「お帰りなさいませ!スノウ姫!」
廊下にずらりと整列して並ぶお手伝いさん。圧巻の光景だった。まさかこんな光景を目にするとは思わなかった……
「ただいま!お父様はどうなされているのですか?」
「ローマイアス国王はある方の話し合いの準備があるとのことでそちらには来られないとのことです」
「そうですか……」
「食事の方が先に出来ておりますので、準備が出来ましたら食事部屋へお越しください、それとお客様……」
「はい!何でしょうか?」
「お客様の部屋をご案内します。どうぞこちらへ…お荷物をお持ち致します」
僕は荷物をお手伝いさんに渡し、付いていった。部屋の数が沢山あるのを確認した。どこか適当にウロウロしていたら迷子になることは必然だ。
「こちらの部屋をお使い下さい。お荷物の方はこちらに置かせていただきます」
「あっ、どうも」
お手伝いさんは礼をしてからドアを閉めて去っていった。まさかスノウ……ここまでお姫様だったとは…かなり驚いた。
「とりあえずちょっと寝るか」
僕は広々と敷いてあるベッドにダイブし、10分間の休憩を取った。
※※※※
起床した後、お手伝いさんを呼び食事部屋まで案内してもらった。お手伝いさんが開けると、僕の部屋とは全く違った光景に唖然とするしかなかった。
「エイジ!こっちこっち」
僕はスノウと向かいの席に座り、エプロンをした。料理を拝見。どれも僕の家では到底食べれなさそうな食べ物ばかりだ。
「いや…凄いね。コレ」
「そうだね…取りあえず早く食べよ!」
いただきますと言った後、僕はオマール海老やステーキなどを手に着けた。
「凄く旨い!!!」
特にステーキ!こんなに柔らかいなんて…最高すぎる!その後どの料理も美味し過ぎたので全て平らげてしまった、本当に満足だ。僕はこの後風呂に入り明日の予定を考えながら眠った。
だけど……その明日は迎えることなく悲鳴の声で目覚めることとなる。