(Ⅴ)大会襲撃
大会3日目、それぞれの選手が勝ち抜きいよいよ終わりが近づいてきた。そして今回の見所はなんといってもスノウだろう。あの子は見た目はおっとりしているが一度戦えばクールな子に変貌する。流石、王国の姫……そして準決勝の相手はスノウVSベルとなった。
「ベル……かなり手強い相手が来たな」
「えぇ、流石に準決勝だとどの選手も手強いですね。中でもベルは……」
「電撃使いで有名だな。あの大剣を喰らって立ち上がれる者は殆どいないらしい」
「でもスノウならやってくれますよ」
「最近随分スノウを気にかけているようだが……惚れたか?」
「ぶっ!そそそんな訳無いでしょ」
「ふ~ん」
顔近い、近いから……
「先生~」
「おっと私としたことがすまないな」
「む~」
まずい雰囲気になった。なんとかしないと……
「あっそうだ。スノウ、次の相手はベルだったね。ちょっと説明しても良いかい?」
「私その対戦相手気になってたから説明お願いします」
「うん、じゃあスノウの対戦相手ベルは電気系最強の男でマイティー4の称号を持っているかなりの手練れだ。特に使うのが稲妻を帯びた大剣……これを一度でも喰らえば立てない程の攻撃を味わうことになるから気をつけてね。他に何か質問はある?」
まぁ、もう無いだろうと思った矢先手を垂直に上げるスノウ。まだ何か気になることでもあるのかな?
「どうぞ」
「エイジって一度ベルさんと戦ったことがあるの?」
「……そうだね。確かに一度だけ戦ったことがあるよ」
「どっちが勝ったの?」
「おぃ、スノウこれ以上は止せ」
「良いんですよ先生!……決着は引き分けだったかな」
「何かあったの?」
「うん、ちょっと激闘を繰り広げ過ぎてスタジアムを中破させたんだよね。今思えば少しやりすぎたと後悔してるけど」
「そうなんだ……ごめんね変な質問をして」
「別に良いよ。この回答で参考になるなら大いに活用した方が良い」
「間もなく試合を開始します。出場する選手は舞台にお集まり下さい」
唐突にアナウンスが鳴った。
「いよいよだねスノウ!君が勝利を掴むこと影ながら祈っているよ」
「ここまで来たんだスノウ……負けは許さないぞ」
「はい!では行ってきます!」
足早々に舞台に向かった。頑張れスノウ……
※※※※
「緊張するな~」
高鳴る鼓動、舞台に上がるのはもう3回目だけど、やっぱり慣れない。ベルさんかどんな人だろ?ちょっと楽しみ!
「…………」
「あなたがベルさんですね!宜しくお願いします!」
あれ?恥ずかしがり屋なのかな?
「スノウ・ローゼンだったな」
「はい、そうですが」
「2分で決着を付ける。それまで頑張って耐えることだな」 そう言うとその場から離れ沈黙し始めた。ちょっと感じ悪い…
「それではただいまより準決勝を始めたいと思います」
ゴングが鳴り響いた。試合開始だ!
「先手必勝!いくわよグラ!」
舞台から氷の召喚獣グラキエースが舞い降りる。グラは私が呼んでいる呼称である。
「ほぅ……」
「辺り一帯を凍りつくして!」
グラは私の命令に忠実ですぐに辺りを凍りつくした。これでこのフィールドは私の物になる!
「いくわよダイヤモンド・ダスト!あの男にめがけて飛びなさい!」
大量の氷のつららが男にめがけて直撃する。これを避けきるのは難しいはず……
辺りは煙だらけになり男の周りが見えづらくなった。油断はしちゃ駄目。警戒しないと……
「なる……ほどな」
バチバチバチッと凄まじい電撃が鳴り響く……ベルは何事もないように立ち上がった。
「そん…な」
「時間稼ぎとは良い度胸だ。次はこっちの番だな。開始時間から一分…次のラスト一分まで持つかな!!」
身体に電流を帯びながら超高速で近づいてくるベル。このままじゃ、やられる!
「盾よ防ぎなさい!」
私はすかさず氷の盾で防御体制を取る。だが…
「そんな盾で防げると思うこと自体、愚の骨頂!!」
盾はすぐさま虚しく崩れ去ってしまう。こうなったら次の手段だ!
「ブリザード・ビーム!」
グラはすかさず冷凍の光線をベルに撃ち込む。効果は絶大でかなりてきめんだったようだ。
「やったわ!」
バチバチバチッ
「う…そ!?」
氷の塊を一瞬で消されてしまった。やばいかも……
「たくっ、期待してたのにこんな物かよ。これならまだ漆黒の騎士と呼ばれていたアイツの方がまだ張り合いがあったぜ!」
「漆黒の騎士?」
「ふっ、お前さんなら考えれば一瞬で分かるぜ。じゃあな……ローゼン選手」
大剣を取り、そして…
「スパーク・エン…」
ドカーン!!!
「何だ何だ!」
「何今の?」
「おい、あれを見ろ!」
空を見上げると、ゴーレムが二体居た……どうしてこんな所に?
「緊急事態発生です!観覧席に座られている皆様!すぐに先生の指示に従って避難してください」
「ちっ、こんな時にゴーレムか!命拾いしたな。ローゼン選手!」
ベルは私への攻撃を中断し、ゴーレムに攻撃を仕掛けた。激しい稲妻の攻撃になすすべもなく倒れるゴーレム。こんなに強いなんて……
「ふん、大したことないな」
勝負は終わりかと思いきや奥に男らしき人物が姿を現した 「ほぅ…うちのゴーレムをものの一瞬で…キサマ、名は?」
「俺の名はベル」
「俺の名ルーク……いくぜ!!」
大柄な体系を誇っているルークはこちらに近づいてきた。 「補助します!」
「邪魔にならない程度で頼むぜ」
ルークの拳とベルの拳が互いにぶつかり合う。
「ダイヤモンド・ダスト!」
長引かせたらどうなるかわからない……ここで一気に決着をつけないと!
氷のつららは見事ルークの背中に集中した。
「今です」
「おりゃああああ」
稲妻の大剣を取り出しルークの頭に見事直撃する。やった!
「やっぱり恐ろしい男だね。ベルは…」
「エイジ!」
「ごめんね、遅くなっちゃって…でももう助けは要らないみたいだね」
「本当に凄いよね…ベルさん。私じゃ全然歯が立たなかった」
「大丈夫!スノウなら絶対に追いつくよ!」
「うん、ありがとう」
「お二人共……浮つき過ぎだぞ」
「あぁ、すまない」
「いや、別に良いんだ。奴は始末できたしな」
「ベル後ろ!」
「何だ?」
倒されたはずのルークが起き上がってきた。あんなに攻撃を喰らったのに!?
「ふぅ~、痛たいな~この野郎!ん?何だこれ?なんだよつららかよ。抜いとくか」
次々と私の攻撃したつららを抜いていくルーク。何で……どうして?
「ちっ、俺の攻撃も感じなかったのかよ。コイツ俺以上の化け物だぞ」
「まずいね。これは……」
私はその場で呆然とするしかなかった
※※※※
「スノウ?スノウ!返事をして!」
駄目だ。余りの強さに呆然としているのか?早くこの場を切り抜けないと…
「この剣で奴に攻撃する。その間にスノウを……」
「あぁ、わかった。コイツは俺が責任を持って連れていく。この場は任せたぞ」
「あぁ」
ベルは僕の話を理解した後、すぐさまスノウを連れ会場から立ち去った。後はこの化け物だけか…
いくよ」
(エイジ……彼は強敵です。気を付けてください)
「わかったよ」
「俺を楽しませろ!」 一気にルークの下へ駆け走り攻撃を仕掛ける。ルークは素手で対応するつもりらしい……
剣は右手に当たり、見事に喰らった。
「おいおい、この程度で……ぐわぁ!」 右手に炎をえぐりこんでみたら上手くいったみたいだ。外側は固い装甲、けれど内側は柔らかいらしい。
「熱……い!ぐっ、キサマは俺を怒らせた。うぉぉぉぉ!」 激しい咆哮だ。これは本気で僕のことを殺しにくるぞ。
「長期戦に持ち込ませるとかなりまずい」
この男はかなりの強敵だ。このまま戦えば、僕の命が危ない。
「一か八か、必殺技をぶつけるしかないか…」
(エイジ……)
「いくよ、クレイン」
僕は剣に魔力を注ぎ込み、構える。
「死ねやぁぁぁ」 「そこまでです。ルーク」
会場の席に黒い服を着た男が見えた。仲間か… 「まだだ!俺はコイツを殺す!」
「やれやれ、あなたという人は……ぬん!」
闇の念力らしき物がルークに直撃する。こいつら仲間じゃないのか?遠慮が無さ過ぎる。
「帰りますよ、ルーク。用事はもう済みました」
「あぁ……わかった」
「待て、お前達の目的は何だ?」
するとメガネをかけた男は
「そう易々と目的を敵に教える義務はありません…エイジ・ブレイン、あなたとはまたどこかで会うことになるでしょう。では……」 逃げられたか。でもこれ以上戦ったらどうなるか分からなかったから良かった。それにしてもどうして僕の名前を…… (エイジ……帰りましょう)
「あぁ、そうだね。早く帰ろう」
僕は駆け足でこの会場を後にした。
この後、大会は当然中止となり、ジシスは突然の終了を告げられることとなった。