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(Ⅳ)紅の騎士、爆誕

 あれから7日経った、そしていよいよ大会が始まった。

 大会の場には大勢の参加者が居た。僕も勿論その中の参加者に入ることになるが、周囲に対する僕への視線は冷たい目だった。正直ここで帰ってしまおうかとも思ったがスノウの為にも僕は一歩も引けなかった。

「……という訳で説明は終わりだ。それでは対戦相手を発表する」

 パネルに展示されるのは顔付きの対戦相手。僕の対戦相手は昨日アリシア先生が言っていたM8キマリスだった。

「ごめんね、エイジ。私の対戦相手違う人だったみたい」

 スノウは申し訳無さそうな顔で僕に謝罪した。

「対戦相手がキマリスはちょっと部が悪いけど僕の全力を彼にぶつけてみるよ。だから気にしないで」


「ありがとう、エイジは本当に優しいね」

 ニコリと微笑むスノウ。一瞬の僕の鼓動が早くなったような気がした。

「へへへ、まさか初戦の相手がお前とはな、こりゃあ勝ったも当然だな」

 キマリスは僕が対戦相手だと分かってか、かなり余裕な態度を取っている。でも僕だって!

「キマリスさん、まだ戦ってもいないのに、勝ち誇った気でいると怪我しますよ」


「ほざけ、人殺し。この試合、俺が勝ってそこの女を俺の物にすることは絶対に決まってるんだよ。まぁすぐには殺さねえからゆっくり殺し合いをしようぜ。ハハハハ」


「エイジ……あんな男に負けないでね。エイジなら絶対に勝てるから!私応援する!」


「うん、ありがとう。この試合勝ってみせるよ」

 スノウの為にも僕はなんとしても勝ってみせる!

※※※※

 盛り上がる大会。こんな感じ初めて味わうかも……

「隣座って良いか?」


「先生!どうぞどうぞ」

 観覧席に座るアリシア先生、こうして隣で見ると結構美人だなぁ……

「私の顔に何か付いているか」


「いえいえ、何でもありません」

 私は恥ずかしさが勝って下に俯いた。            「……対戦相手キマリス、かなり厄介な選手になってしまったな」


「エイジは絶対に勝ちます!」


「ほぅ~、その根拠は?」

 私の顔をじっくりと観察するかのように凝視している。ここで何か言わないと……


「エイジは躊躇いもなく、私に勝つって言ってくれたんです。絶対勝ってくれます」


「やれやれ、君という奴は……まぁ私も彼が勝ってくれることを望んでいるが」


「先生……キマリスってどんな能力を持っているんですか?」


「それは実際試合を見た方が良いだろう。もう間もなく始まるからな」

 五分後アナウンスが鳴り、大会の開幕宣言が始まった。頑張ってねエイジ……

※※※※

 大会の開幕宣言のゴングが鳴った。いよいよだな。

「では、初戦の対戦相手はマイティー8の……キマリス・フレッド!!!」

 ワーワーワー!という大歓声が鳴り響く。やはり大物、格が違う。

「続いて……エイジ・ブレイン!」

 一斉に鳴り止む大歓声。僕はその音声に耳を貸すこと無く舞台に上がる。

「頑張ってエイジ!そんな無神経男ボコボコにしちゃえ!!」

 スノウの声が聞こえた。振り向いてみたらとびきりの笑顔で僕を見つめていた。この試合負けられないな。

「ふん、さぁてようやく人殺し……お前を遠慮無くぶっ殺せる。俺の弟の仇!」


「君の弟には申し訳無いことをしたね。今ここで謝ろう。でもここは試合だ!僕も全力でいくよ!」


「はっ!泣いて喚いてもしらねぇぞ!人殺し!」              

「では、試合を開始します!レディーーファイト!」       カーンとゴングが鳴り響く。試合開始の合図だ。

「いくぜ……召喚!デーモンハンド<鬼の手>」  

 キマリスの両手に鬼の顔をした手型が装着された。早速それを使うか!

「へへへ、一年前のお前はヤバすぎて勝ち目が無いと思ったが今のお前はただの雑魚!このジシスに参加したことを悔やむんだな!」

 キマリスは一気に突進してきた。僕は走りながら右へと避ける。

「逃げても無駄だぞ、人殺し!」                僕は鞘から剣を抜き抵抗する。くっ、威力が違いすぎる。「何だよ、その寂れた剣は……それで俺に勝てるとでも思っているのか!あぁん!」                

 フィールドの壁に吹っ飛ばされる。ぐっ、やはりあの武器をどうにかしないことには……

「休んでいる暇はねぇぞ」

 続けざまに飛んでくるキマリスの猛攻、このままだと剣が折れかねない!

「まだだ!」

 僕は手に力を込め懐に横斬りをした。だが……

「へっ、そんな攻撃で……俺が倒れるとでも思ってんのかー!!」

 パーンと無情な声が鳴り響く。僕の身体はもはや限界に近かった。

「うっ……視界が」            

 ぐらぐらする。まずい、このままだとリタイアになりかねない。

「駄目よ!エイジ戦いなさい!」                スノウの声が聞こえた。

「あなたが一年前どんな過去が起きたかは私直接は見たこと無いけどこれだけは言える!!」


「……スノウ?」


「あなたは世界一格好いい!絶対に格好いいんだから!そんな弱小ぶっ飛ばしちゃいなさい!」

 スノウ……君という子は本当に……

「ハハハハ!マジか?お前が格好いい?笑わせんな!!もう良いぜ……お前の顔をグチャグチャにする!そうすればお前の薄汚い顔を見ずに済むからな!」

 僕はこんな所で負けられない。まだ成し遂げたいことが沢山あるんだ。だから!

「剣よ!僕に力を貸してくれぇぇぇ」              直後、剣の辺りを覆う皮がバラバラと崩れ去る。そして全てが崩れ去った時…  紅の剣がこの世に誕生した。

「何だ…それは?」


「これは……一体?」


「おぉっと、ブレイン選手が持つボロ剣から新しい剣に生まれ変わりました!」


(エイジ……私の名前が有りません。名前を付けて下さい) 

 頭の中で女の子の声がした。気のせいでは無いのだろう。名前か……

「君の名前はクレイン…で良いかな?」


(はい……ではいきましょうエイジ!あなたの力、今度こそ見せ付ける時です)


「剣とのお喋りタイムは終わったかな?じゃあ、これで終わりだ!」              

 キマリスは鬼のような形相で僕の顔目掛けて飛んで来た。僕はそれをヒラリと避けた。

「なっ!?」

 君の攻撃はいつも突進。よく言えば相手に絶え間ないダメージを与えられる。逆に悪く言えば……

「キマリス!君の行動パターンはとても読みやすい!」

 背後を捉えた。これで終わりにする!  

「後ろから!?」


「ハーー!」

 僕の背後からの奇襲に気が付いたのか、デーモン・ハンドをすかさず剣にぶつけた。

「ふー、セーフ!危なかったぜもう少しでやられ……」

 ピキピキッと割れる音がした。すると彼は予想外だったのか……

「なっ、有り得ない。この俺の武器が砕かれる事などあってはならない!」                                 

「じゃあ君の武器を砕くのは止めておくよ」

 僕は一旦後ろに下がる。そして剣に僕のありったけの魔力を注ぎ……

「させるかよ!」


(エイジ……私が技の名前を言いますのでそれに続いて言って下さい)


「あぁ、わかったよ。」


(せーのー)


「ブレイズ・バースト!!」

 剣を振り下ろすと、煉獄の炎が一直線上に飛んでいった。突進して抵抗を図るキマリス……無論そんな行動に意味は無く……

「ぐわわわわわ!」        

 煉獄の炎はそのままキマリスへと直撃した。

「あぐっ……てめぇ」


「僕の勝ちだ。キマリス……」 

 バタンと倒れるキマリス……そして僕はなんとか初戦を勝ち抜き、スノウに勝利の方告をすることが出来た。

※※※※

「やっぱりエイジは強いね!私が見込んだ通りだった!」


「まぁ、この試合に勝てたのも君のおかげなんだけどね」


「うぅん、私はただエイジの背中を少し押しただけだから……」


「スノウ……君に言いたいことがあるんだけど良いか  な?」                            「ええと……何かな?」

 此処で言わないと後悔する。だから言わないと……僕は意を決して……

「エイジ・ブレインちょっと良いか?」


「キマリス……」                       キマリスは突然両足と手を地面に置き、そして……

「人殺し呼ばわりして大変申し訳ございませんでした!」

 僕はどうして良いかわからずスノウの顔を見る。スノウは許して上げてと首を縦に振っている。

「……わかったよ。でも僕から言わせてくれ」


「何だ?」


「二つあるんだ。一つ目は君の弟の命の分も僕が背負うこと、そして最後二つ目は僕と友達になって欲しい……」

 キマリスは驚いた顔で

「お前を散々罵ったのに……良いのかよ本当に」


「勿論!」


「俺は…俺はぁぁぁ!」

 その場で号泣するキマリス。これで良いんだこれで…


「やっぱりエイジは優しいね」


「そう……かな」

 晴れやかな夕日が僕らを照らし続けた。まるで今日僕の心を浄化するように…

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