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(ⅩⅩⅩ)決意

「お前を殺す」

 あの狂気の顔がまだ僕の残像に焼き付いている。仮面越しに伝わる深い憎しみ……それはただただ恐怖でしかなかった。

「エイジ」

 誰だ?僕は必死に辺りを見渡す。だがそこに人影は見当たらなかった。ただ何も無い真っ暗な光景が僕の視界に映っているだけだ……

 必死に辺りを走り回る。だがどれだけ走っても真っ暗や光景が嫌というほど広がっているだけだ。 走り疲れ息を漏らしていると不意に肩を叩かれた、僕は何だろうと後ろを振り返る。そこにはあの男の顔が突如映った。

「キング!?何故此処にいる!?」


「エイジ……私は必ずお前を殺す!お前と私がまた会った特……全てが終わるだろう!」


「終わらせてたまるか!世界を壊すあなた達を許してはおけない!」


「クックックッ、ハハハハッ!面白いことを言う……だがそんな戯れ言を吐く口はもうまもなく終わる。お前と私がまた戦うその日に俺を完全な脅威対象として世界中が見定めるだろう!その時に私は自らの計画を実行する!それまで楽しみに待っておくことだな!エイジ・ブレイン。ハハハハッ!」   

 僕の視界がどんどん薄くなってきている、こんな所で僕は……くそっ!

「キングーーー!」


「エイジ!しっかりして!」


「はっ!……スノウいつからそこに居たの?」 


「一週間前かな?エイジが倒れたって聞いて私驚いたんだから!もう!心配させないでよ……」         


「ごめんね、スノウ……でもおかげでこうしてまた出会えたんだ。感謝しないとね」


「そう……だね。ちょっと待っててエイジ!すぐお医者さん呼んでくるから!」          

 スノウはそう言うとすぐさま病室の扉を開け廊下を走っていった。

 ……あれから一週間がたったのか。僕の感覚では1日くらいしか経ってないけど……それにしてもあの悪夢は恐ろしかった。けど夢のようで夢じゃないような気がしてならない。まるで本人と直接会話していたような気が…僕が深々と考えごとをしている内にノックの音が聞こえた。どうやら担当のお医者さんが来たようだ……

「やぁ、気分はどうだい?」

 僕に声をかけてきたお医者さんは髪の色が白で見た目からしてベテランの雰囲気を漂わせていた。僕はそんなお医者さんを見て返事をした。

「えぇ、気分は悪くないですよ。外の天気も明るいし本当に気持ちが良いです」


「ほほっ、それは良かった。じゃあ早速、起きたばかりで悪いんだけど身体を見させてもらうよ」


「わかりました」

 お医者さんの指示に的確に従い順調に検査を終わらせる……そして最後に

「全体的に見てあまり異常は無いね。じゃあ最後に立てるか見させてもらうよ。勿論君のペースで立ってくれて構わない……我々が急かすのは良くないからね」


「わかりました」

 僕は検査で上半身を起こした身体を左に向き両足を床に置く。この時若干の痛みが僕を襲ったがすぐに消えたので問題はなかった。

意識をまず左足に集中し力を入れながら身体を立たせる。何とか立てた……だがその直後右足が急にふらりとなり前のめりに倒れた。

「おっと、危ない危ない」                

 前のめりに倒れそうになった身体をお医者さんが支えてくれたため何とか怪我をせずに済んだ。そうか僕は骨折していたんだ!くっ何でこんな時に!

 お医者さんは僕をベッドに座らし

「足のレントゲンを昼から取ることにするよ。それまではゆっくり疲れを取っておいてね」


「……わかりました」

 お医者さんが部屋を出た後、僕は大きな溜め息をつく。

「そうか、僕はキングに骨を折られたんだった」 

 幸い足だけで済んで良かったかもしれない。本来なら足だけでは済まない重傷を受けていたかもしれないから……

 ノックの音が聞こえた。そちらの方に目をやるとスノウが見えた。かなり浮かない顔をしている

「エイジ……足が」                        

「うん、どうやら足を折っちゃったみたい……」


「エイジ、私も出来る限り協力するから何でも言ってね!」 

 スノウは僕に微笑んだ。僕はその一言だけでも嬉しかった。今の暗い心が少しでも明るくなるから……その後、昼の検査を受けお医者さんと話し合った結果リハビリすることに決めた。それからな日々は地獄の猛特訓だった。

 まずは車椅子から立つことから始まった。ここで僕は手すりに掴まるのに1週間もかかってしまった。次に杖をついてリハビリ部屋の手すりを使い往復。これが一番の地獄だった。  

 それでも僕が抗えたのはスノウのサポートのおかげだった。そして1ヶ月後……

「よお、エイジ久しぶりだな」


「お兄さん、身体の調子はどうですか?」

 ザインにユリン……なんか久しぶりに顔を見た気がする。

「久しぶりだね。二人とも」


「たくっ、いつの間にか怪我しやがって。お前本当についてないな」


「まぁね。学園生活はどう?」

 僕がそう切り換えすとザインの表情は急に真剣な眼差しになった。

「……実はそのことで来たんだ」

 ザインの話によるとシャウト王国が四週間前に陥落し残りはいよいよジェネシス学園のみという状況になった。マイティーも数人が大重傷、現在も治療中の者が多くいるらしい……こうした状況の中ジェネシス学園は学業をするには困難と判断し首謀者キングの件が落ち着くまで無期限の休校となった。

「ここまで話したけどなんか気になることはあるか?」


「……首謀者キングに動きはあるかい?」


「いや、今の所は何も起きてないな。にしても不思議だよな……四週間前にシャウト王国陥落させたんだからそのまま攻め込めば良いのにな。これじゃあ相手側に準備させる時間を与えているだけだろう……」

 恐らくキングは待っているんだ。僕が復活する時を……

 僕は押し黙った。今ここで喋っても意味が無いような気がしたから……

「多分キング側も何か作戦を練っているじゃないかな?いずれにせよ油断は出来ないね」


「あぁ、その通りだ」

 ザインは一通り話した後、用事があると言って病室から去った。ザインが部屋を出るのを確認した後ユリンは僕に詰め寄って来て……

「お兄さん!今日私とお出かけしませんか?良ければすぐにでもお医者さんを」


「今日はちょっと言いたいことがあるんだ。だから、ごめんねユリン」

 そう僕は1ヶ月スノウに色々支えられて気づいたんだ。いやもっと前から気づいていた。この気持ちを今日絶対ユリンに伝えないと!

「なんだかお兄さんが遠くなりそう気がします」

 気づいているのかわからないけどユリンの目の瞳は涙に揺られてた。

「ユリン、本当にすまない。今ここで言うよ……僕はスノウのことが!」

 次の言葉を伝えようとした時、人差し指で僕の口を防いだ。

「わかっていました。お二人を食堂で見てた時から薄々は……だから危険だと思って消そうとは思ったのですがどうやらもう私にはどうすることも出来ませんね……お兄さんその言葉の続きは本人に伝えて下さい」


「ユリン……」

 笑顔で答えているがユリンは気づいていないんだろう……自分が今凄く泣いていると

「お兄さん、必ず幸せになって下さい!ユリンはいつまでも側で応援しています!」

※※※※

 ユリンが病室を去った後、僕はすぐさまスノウに連絡し屋上に来るように伝えた。時間は夕方の5時。勿論お医者さんに許可は貰っている……後は気持ちの問題だ。そうして僕が気持ちの準備をしている間にあっという間に時間は過ぎていった。時間は4時30分……よし!

「行こう」

 僕はゆっくりと立ち上がり病室を出る。廊下を少し歩いた所でクレインが居ることに気づいた。

「クレイン、どうしたの?」


「……エイジ、とうとうお伝えするのですね?自分の気持ちを」

 どうやらクレインにも気づかれていたみたいだ。

「クレイン、僕は行くよ」


「私に止める権利はありません。どんな結果になろうとも私はエイジの剣であり続けます」


「ありがとう、クレイン」

 僕はクレインに一礼した後、エレベーターに乗り屋上の階を押した。一瞬で到着し扉が開かれた。後はここの階段を少し上がれば屋上だ。扉を開けるとそこに広がる景色は夕日の橙色の綺麗な光が差し込まれ、街の景色と相まって鮮やかな光景が僕の瞳を眩く映した。そしてそこの中央で立っている雪のような白い髪の女の子がさらに景色を際立たせている……

「スノウ、随分と早かったね。ゆっくり来ても良かったのに……」


「そんな訳にはいかないよ。今日のエイジ、なんか話し方が真剣な感じだったから急いで来ちゃった」


「そうなんだ」

 いざ言おうとした時、僕の口ははばかられた。まずい……僕の鼓動の動きがかなり早くなっている……落ち着け!

「エイジ、何か話があるんだよね?」

 もうここまで来たんだ。後戻りは出来ない!伝えよう、僕の想いを!

「スノウ!君はこんな心が弱い僕に笑って手を差し伸べてくれた!その時から僕の心は救われてた!道案内の時もそうだった!君の純粋な笑顔に僕は君に惹かれていた!でもそういうのはただの理由でしかないんだ……本当は君を最初に見たときから一目惚れしていたんだ!だから言わせて欲しい……僕はあなたの事が好きです。僕と付き合って下さい」

 言い切った後、長い沈黙が空間を支配していた。スノウの顔は暗くて窺えない やがてスノウは顔を上げ      

「エイジ、私も……あなたの事が好きだったの!今日まさかエイジから告白されるなんて夢にも思わなかった!翌日私から言おうとしたのに!」


「えっ?それって……」


「私とエイジ……両想いってことだね♪」

 そうか、もう僕達は前から互いを想い合っていたのか……ただ言うのが遅かっただけなんだ。

「ははっ、そうだったんだ。スノウそれじゃあ」


「うん、今日からもそしてこれからもずっとこんな私で良ければ宜しくお願いします」


「僕からも宜しく、スノウ」   

 僕達二人は互い身を寄せ、長い口づけを交わした。夕日に包まれながら……

「エイジにキスされるなんて今日は本当に最高な気分だよ」


「あぁ、夢みたいだよ。こうしてスノウとキスが出来るなんて……間近で見たら本当に可愛いよね、スノウは」


「もうやめてよ!そういうのは女の子にとっては恥ずかしいんだから」


「うっ……なんかごめん。次から気をつけます」


「宜しい」

 幸せな空間が僕達二人を包み込む。そんな時僕のポケットから振動が鳴り響く。僕はスノウに断りを入れてからタブレットを取り出し、電話番号を見た……

 この番号、見たことがないな。誰だろう?

「もしもし?」                        

「やぁ、そろそろ体調は戻ったかな?エイジ・ブレイン君」 


「……キング!?何故僕の電話番号を!」


「そんな事は今問題では無いのだよ……今日話したい事は君ならわかるだろ?」        

 そうか、いよいよ攻めるんだね。ジェネシス王国に!

「あなたのその愚かな野望を僕は絶対に阻止します!」


「その答えを聞けて安心したよ。だが今君の状況では弱すぎから1ヶ月の猶予を与えてやろう……攻め込む日は10月1日!では楽しみにしているぞ」

 電話は突然切られ僕は空を見上げる。10月まで強くならないとこの国は最悪キングの手によって葬られる。それだけは阻止しないと!       

「エイジ、いよいよだね」                   

「スノウ、僕はなんとしてもキングを倒さないといけない!そのためにも協力して欲しい!」


「勿論協力するよ!だって私達はもう……」


「そうだね、もう僕達は」

 僕達二人は街の景色を眺めた。この綺麗な景色を守るために僕はあなたを絶対に倒す!

 僕の決意が決まった瞬間であった。

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