(Ⅲ)眠りし剣
「お邪魔します」
「あぁ、どうぞ」
先生の家は二階構成で一階はリビング・自室・トイレなど良くある構想だ。玄関先の花瓶には赤薔薇が供えられている、これは先生の趣味だ。
「さて、夕飯でも作るとするか。お前は適当にテレビでも見てくつろいでくれ」
「先生、さすがに夕飯をご馳走になるのは……」
「良いじゃないか、別に。あっ、一応妹の方にも連絡しておけよ。帰り遅くなりますって」
冷蔵庫から適当な材料を取り出す先生。参ったな、やる気満々だ。仕方ない……僕は一度リビングを出てユリンに電話を入れた。ワンコールで繋がった。
「はい、どうかしましたかお兄さん?」
「実は今日、先生の家で夕飯食べることになったから帰り遅くなるかもしれないと思って電話を掛けたんだ」
「そうですか…………」
「ユリン?」
「どうぞ、後勝手に!!!」
ブツッと切れる。ユリンなんで怒っているんだろう?連絡も済んだのでリビングに入る。すると僕の顔に気づいたのか先生は
「どうしたんだエイジ?顔色悪いぞ」
「いや、さっき連絡入れたら何か怒っていまして、何でだろう?先生の家でご馳走になるだけなのに…剣のことも言えば良かったかな」
すると先生は呆れ顔で…
「乙女心は複雑なんだよ」
「乙女心…ですか」
「ふっ、まぁお前が理解するのは恐らく無いと思うがな」
料理を再開する先生。出来上がりが楽しみだ。そして20分後、料理が完成した。どれもこれもとても豪華で正直どれを手に着けるべきか迷うものばかりだ。
「そんな深く考える物じゃないぞ料理は……いいから早くどれか食ってくれ」
仕方ない、僕はまずペペロンチーノから手を着けることにした。うっ、これは!
「どうだ味は?」
「旨すぎます。さすがですね先生!」
「そうだろうそうだろう。さっさ食え食え!」
僕はこの後腹八分目になるまで沢山食べた。
※※※※
「先生、ご馳走様でした。後片付けは僕がやりますね」
「いや、それは私がやっておく。それより二階に上がるぞ」
「はい、わかりました」
リビングを出て二階に上がると目の前に大きな扉があった。先生は扉を開き部屋の電気を付けた。するとそこには……
「これは一体」
「武器部屋だ。お前にはもう話していると思うが私は趣味で剣型の武器を発掘している。どれか好きな物を取れ」
辺りには剣が数え切れないほどあった。
「振りたければ遠慮無く振って良いぞ。但し物は壊すなよ」
「わかってますって」
僕は目に付く全ての剣を一振りし、感触を確かめた。
「……やはりお前の好みに合う奴はないか……」
「すいません、もうちょっと時間がかかるかもしれないので下でくつろいでいて下さい」
「分かった、洗い物もあるし私は一旦下に降りるとするよ。何かあったら何時でも呼んでくれ」
そう言い残し、一階に降りていった。さてと……
「僕が納得いきそうな剣を探すか」
僕は無我夢中で所々にある剣を降り続けた。
※※※※
ブンッブンッブンッ
「難航しているな」
あれから30分、僕はまだ自分の納得のいく剣が見つからないままでいた。まずいなこのままだと
「うーん、どれも切れ味というか、速さが足りないんですよね」
「なるほど……確かにどの剣も破壊力はあるがこれといって速さが無さそうな剣ばかりだからな、お前に合う剣はやっぱり……はっ!すまない私としたことが」
「いや、良いんですよ。僕が合ってたのはやっぱりあの剣ですからね」
「……明日にするか?まだ大会まで時間はあるし…」
「いえ、もうちょっと探してみます。あっ!先生、気になることがあったので質問しても良いですか?」
「あぁ、何だ?」
「あの奥の最も古そうな剣はなんですか?」
僕が振ってる時からずっと気になっている剣があった。それが奥にある剣。どの剣も輝きを持っていたのに対し何故だかこの剣だけ古びていたので目に付いいたのだ。
「あぁ~その剣か。実はその剣、私がいくら磨いても全く輝きを放たないからここ一年放置しているんだ」
「それはもったいないですね。一度振っても良いですか?」
「存分に振ると良い」
先生から許可を頂いたので僕は奥にある寂れた剣を取り、一回振ってみることにした。
フンッフンッ
「この剣……」
「どうかしたか?」
何だろう?決して強そうに見えないのに何だか凄いオーラが僕の手に伝わってくる……よし!
「この剣にします」
「良いのか?そんなオンボロの剣で」
「僕が気に入ったんですから別に良いんですよ」
「そうか。まぁ人がとやかく言うことじゃないからな好きにすると良い。あっ!鞘を作らないとな、ちょっと待ってろ直ぐに用意する」
早々に部屋を出る先生。その後僅か五分後に鞘が来た。さすがに用意が良すぎるが……まぁいっか
僕は先生と別れた後、適当な場所で素振りを100回してから自宅に帰った。大会まで後7日、それまでにはこの剣を見極めて、なんとしても勝ってみせるんだM8に!