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(ⅩⅩⅦ)レクイエム

「スノウ、起きませんね」


「仕方ないよ、この前あれだけ凄まじい戦闘をしていたし……」

 あの後スノウは病室に運ばれ治療を受けたがこの2日間まだ目覚めていない。あんな戦闘をしていたら身体が悲鳴を上げるのは無理もないか。

「スノウ…早く目覚めてくれ。僕は君の笑っている顔が見たい」

 彼女を見つめていたらコンコンと扉を叩く音がした。誰だろう?

「はい、どうぞ」


「やぁ、ローゼンの様態は…まだ絶望的か。それにしても病室はやっぱり暗いな」


「そうですね」

 病室は個人部屋で辺りの天井や壁周りは白に均一されている。華やかなのは僕が花瓶に詰めている花だけだ。

「…そういえばバース少尉、何かお話があるのでは?」


「はっ!そうだった。今日は少々お話があってここに来たんだ。今朝会議があっていよいよ我らはある国に向かうこととなった」


「ある国?」


「ルベニカ王国…経済で一番強い国だ。恐らく次の座標はここになるだろう。現在マイティーが四名滞在している…準備は万全だろう」

 次はルベニカか…この国がつぶれたら残る王国は二つとなる。絶対に阻止しないと…

「行きます!未来を守るためにも!」


「良いのか、本当に?」


「大丈夫です」

 僕は真剣な眼差しでバース少尉を見つめる。すると意志が伝わったのかはわからないが…

「わかった。では10分後に病院の入り口で落ち合おう。我々には時間が無いからな…それとこれが制服だ。着用しておけ」

 バース少尉は紙袋から聖団の制服を取り出し机に置いた。

「はい、わかりました」

 僕はバース少尉を見送りスノウの所に駆けつけ

「スノウ、早く目を覚ましてね」

 雪のような真っ白な髪を撫で、トイレで制服を着用した後病院を後にした。

 入り口に行くと騎士達が大勢待ち構えていた。その中にバース少尉が居た。

「準備は良いか?」


「はい!行きましょう…ルベニカへ!」


「よし、作戦の詳細は車の移動中に行う。行くぞエイジ君!」

 僕は病院に別れを告げ、車に乗り込んだ。目的地はルベニカ王国……そこに最悪の敵、キングが居る。止めるんだ、僕の手で!

 そして大勢の騎士達を乗せた車はエンジンをふかしルベニカ王国へと向かった。    

※※※※

「キング、本当にエイジがここに来るの?」


「まぁ、待てば来ますよ。気長に待ちましょう」

 クイーンは相変わらずエイジにご乱心か…まぁ良い。私の目的はただ一つ

「ジャイロ国王の首…必ず手に入れて見せる」


「キング、少々お話したいことがあるのでこちらに来ていただけますか?」

 珍しいな、ビショップが質問するなんて……まぁ、良い。聞いてやるとするか。私はその場を離れビショップと向き合う。…どうやらクイーンには聞かれたくないらしい。

「それで、ここまで連れ出して一体何の話だ?」 


「クイーンは我々にとって不要な存在になりつつあります。キング、ここは是非私に抹殺命令を出してください」

 ビショップの奴、クイーンのことをさっさと殺したいみたいだな。だが……

「断る」


「何故なのです!?キング、正気ですか!?あの女は輪を乱す不届き者です!今すぐ抹殺するべきです!」  

 やれやれ、ビショップはこういう時、中々考えを変えてくれ無いから骨が折れる。           

「クイーンの始末はいずれ私が出そう…だからビショップ、今は待て!」                       


「…キングの命令なら仕方ありませんね…かしこまりました。では私は準備があるのでこれにて失礼致します」

 ビショップの奴、何とか理解してくれたか。さて……

「クイーンをどうにかするか」

 今回の作戦でクイーンに来られると邪魔だしな。早めに対処するか……    

 私はクイーンの所に戻り、そして右手を構える。魔法は唱えた……後は                       「クイーン」                          

「何か用なのキング?」                       

「あなたには少々遠くに飛んでもらいます」           

「くっ!させない!」    

 クイーンが手を出そうとした瞬間、私は咄嗟に魔法で遠くの場所に飛ばした。 これで邪魔者は消えてくれたか…… 

「……?血か、やってくれるなあの女」

 どうやら頬に傷を受けたらしい。さすがはクイーン、厄介な奴だ。                           「さて、行くか」      

※※※※

「各員警戒態勢!奴らが来るぞ!準備をしておけ!」

 一斉に散らばる騎士達……俺レグナス・ハートはその光景を淡々と眺めていた。

「どうしたんだよ、レグナス!これから凄い戦いが始まるのにさ~」                          

 この鬱陶しい奴はM3のルーサ。髪は赤色で全体的にボサボサである。魔術はそこそこだがお得意のハンマーで敵を叩き潰すのは得意だ。      

「うるせぇ。お前は向こうの壁の彼方でめり込んでおけ」


「そういう訳にはいかねぇよ。相手があのキングなんだ…今でも俺、結構緊張しているんだぜ~」

 そういう風には見えないけどな。

「ルーサ、君はもう少し落ち着きたまえ。せっかくの決戦の場が台無しになる」


「…っ!わかってるよ!」


「わかったなら言葉では無く行動で示しなさい」


「…あいよ」

 このいかにも礼儀や作法にうるさい男はM2のイザナギ。髪は水色で神が着そうな服を着用している。主に風を得意とし、様々な風の魔法で敵を翻弄する。   

「イザナギか…あいつはどうした?」


「M7のマーサーですか?彼なら外で準備運動をしていますよ。全く野蛮な奴です」

 相変わらず余計なことを喋るな。

 俺達が喋っているとお偉いさんがこちらに近づいて来た。

「マイティーの諸君。そろそろ準備をしてくれ、我々はすでに配置を済ませている」


「よっしゃー!張り切っていくぜぇ!」    

 はぁ、ルーサの奴。もう少し音量を抑えてくれ…耳が痛いんだよ。

「レグナス殿、参りましょう。我々が求めるのは勝利のみです」


「あぁ、そうだな」       

 俺は適当に返事をした後所定の位置に立つ。とはいえ城の正門なのだが……

「また、戦うのか。何人斬れば終わるんだろうな、この戦争……」


(君が心を捨てれば戦争なんて軽く終わるさ)

 俺の中に居るクソガキが言わなくても良い言葉を吐いてくる。

「うるせぇよ。お前は黙ってこき使われていろ」


(ハハハ!相変わらず面白いね、君は!今日は沢山斬れるから楽しみだなぁ~)       

 面倒くさいから、無言を突き通す。相手にするとコイツはすぐに調子に乗るからな。

 俺は目を閉じた…しばらくすると警鐘が鳴り

「全員!敵が襲来した!数は1000!各自戦闘態勢を取れ!」


(始まったね!どうする?)


「決まっているだろう……突撃する」              

(さすがだね~それでこそレグナスだよ)

 俺は片足を強く蹴り、敵の方角へと向かう。向こうで叫んでいる気がするが俺には関係ない。

 俺の好きにさせてもらう。

 歩くこと数分かからず街の中心に到着する。すると黒の服をまとった人が次々と市民を問答無用で襲っていた。

(うわぁ~えげつないね。ひどいひどい!)

 相変わらず人の血に何も感じないんだな。コイツは……

「いくぞ、ライア。力を貸せ」


(ハイハイ)

 俺は鞘に収めている剣を取り、ライアの力を入れる。

 そしてその剣は青く透き通った色に染め上げられていく。

「それは何だ?」    

 黒の服を着た一人の男が問う。

「レクイエム……てめぇを一瞬で終わらせる魔の剣だ」


「ほざけ!お前は我らの未来の為に死ね!」

 鎌を持ち、勢い良く振り回す。だが俺はそれを振り払った。

「ソウル・エッジ!」

 剣を横に振り払い、青く染められたらカラスを呼び出す。そしてカラスは男に突き刺さり、悲鳴を上げ無残に燃えかすとなって死んだ。       

(あらら、僕達に逆らうからこんなことになっちゃったんだよ!ざまぁないね!)


「……来たか」

 男の叫びを聞いた者達が大勢集合する…数だけは立派だな。

「お前らも死にたいんだろ?早く楽にしてやる。感謝することだな」


「死ねぇ!」                   

 ちっ、面倒くさい奴らだ。

「ソウル・エッジ」                      

「うがぁぁぁ!」

 無駄な時間だったな。

(そろそろ来るよ、あいつらが♪)

 前を見るとそこに奴らが居た。間違いない奴らは……

「ほぅ、ここまでやるとは思いませんでしたよ。一応彼等は殺し屋なので鍛えてはいるはずなのですが……」

 王の首をはねた野郎の仲間か。

「あなた、お名前は?」


「てめぇに名乗る名前はねぇよ」


「なるほど、ならば私が直々に口を割らせて差し上げましょう!」

 男は分厚い本を宙に広げ呪文を唱え始めた。だがその態勢をある男が止めた。     

「……?何故止める、ルーク?」                  

「ビショップ、ここは俺に任せろ。お前は先にいってキングを守れ」 


「…良いでしょう。ではこの場は任せますよ。子奴の首必ず持ってきてください」


「了解」

 ビショップは宙を舞った本を自分の手に戻し、遠くに去っていった。

「さて、じゃあビショップに代わってこのルーク様がお前をギタギタのボコボコにしてやるぜ」

 格闘タイプか、俺にはうってつけだ。

「さっさと来いよ、お喋りは嫌いなんだ」


「うおぉぉ!」

 どこからともなく斧を取り出しこちらに全力で掛かってきた。すかさず俺は剣で受け止める。

「受け止めたって意味ないぜ」


「…足がめり込まれていく。このままだと沈むか」


(どうするの?)


「決まっている」

 俺は足蹴りで後ろに下がり

「ソウル・レゾンド」

 剣はもう一つ増え片手剣から両手剣になった。

「増えやがった!なかなか面白いな、お前!」


「これで終わりにしてやる」 

 俺は前へと駆け走る。ルークもその反応を見て、自身も前へと走る。

 互いに衝突する斬撃は火花のようにあちこちに散らばり周囲を戦場と化している。

「コイツ……!」


「そろそろ終わりにしてやるよ。いくぞ、ライア」


(やれやれ、人使いが荒いね~)

 魔力が一斉に剣へと注がれる。強烈な痛みが俺を襲うが関係ない。俺は今ここでコイツを終わらせる。      

「ソウル・ジャッジ!」      

 カラスのけたましい咆哮が剣から鳴り響き、その鳴り響く剣を身構え突撃する。

「こけおどしの技で俺のヘルアックスに勝てると思ってんのか!」

 最大解放……俺はコイツを

「切り裂く!」

 ヘルアックスの攻撃をギリギリの所で回避し、Xの形で切り裂く。そしてルークという男の身体はバラバラの死骸となって消滅した。

 哀れな末路だ…

(お見事!)


「次いくぞ、首謀者のキングはあそこしか考えられない」


(そうだね!よ~し、出発だ~)

 俺は剣を鞘に収め 城へと戻った。

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