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(ⅩⅩⅥ)白き翼vs黒き翼

「これが一年前の出来事だよ」


「エイジ、ごめんね。そんな辛い話をさせて」


「いや、良いんだ。スノウにはいつか話さなきゃいけないと思っていたから」

 エイジの顔が酷く震えている。それ程までに恐ろしい光景だったんだね……

「ふふっ、これでわかったでしょ?私とエイジは切っても切れない永遠の赤い糸で結ばれているのよ。だからあなたの入り込む場所は…無い!」

 そんなのただ横暴だよ。だって…

「レーナさんだっけ?今の言葉はエイジには届いて無いわ」


「は?何を言っているの?今でもエイジは私にぞっ」


「エイジがこんなに苦しい顔をしているのに?」


「っ!」 


「あなたは都合の良いようにエイジをコントロールしているだけに過ぎないわ」


「黙りなさい!」

 背中から黒い翼を取り出し宙を舞う。もう話し合いは無理かもしれない。

「あなたを消して、エイジを手に入れる!だからここで綺麗に死になさい!」

 手のひらから黒い槍を生み出し、攻撃態勢に入る。

「スノウ…レーナを殺してくれ」


「本当に良いの?」


「今の僕では飛べない時点で決着が付いているような物だ。けどスノウ、君なら彼女を殺せる力がある!頼む!」


「……わかった。ルーン発動!」    

 召還獣と一体化し、私は空へと浮上する。

「ふふっ、ではまずあなたから八つ裂きにしてエイジを手にいるわ」


「そんなことは絶対させない!」

 私は無数のつららを取り出し一斉に掃射するもレーナはその攻撃が見えているかのように避けた。

「はぁ~、せっかくのルーンが無意味じゃない。期待させといてそれ?」

 レーナは再び槍を構え、こちらに奇襲をかけてきた。すぐさま私はシールドを使って防御行動に出る。

「くっ!」


「ふふっ、そんな見かけだけの盾……すぐに壊してあげるわぁぁぁぁ!」

 氷の盾は数分も持たずに崩れ去る。このままやられるわけにはいかない!

「あなただけは、私が絶対に止めてみせる!」


「出来るもんならやってみなさい!」


「この技は威力がでかすぎるけど……今はやるしかないよね」

 私は雪の結晶を魔法陣のように作り出し解き放つ。

「ブリザート・クラスター!!」

 白くそして冷たき光線がレーナに目掛け放たれる。

「これは!?まずい……避けられない」  

 レーナは咄嗟に防御行動に出るも、耐えられず地面に押しつぶされる。私はさらに追い討ちをかけるためもう一度無数のつららをレーナに全力でぶつける。これでどうだ!

「がはっ。はぁはぁやってくれるわね、こっちも本気を出そうかしら」

 よろよろとレーナは立ち上がり、手をかざし呪文を唱えた。すると手のひらから巨大な黒い球体が発生した。まさかぶつける気なの?そんなことをしたらこの場所が崩壊してしまう!

「さぁ、これでくたばりなさい!」

 放たれる前に止めないと!私は一目散に彼女の下へと向かう。だが肝心な所で私の身体は正直に動かなくなってしまう。くっ、ここまで来て……

「どうしてなの、なんでこんな時に」


「あはは!どうやら時間切れのようね!そこまで出来たら良く保った方よ。けどね……ここは戦場なの、手加減は出来ないわ!悲しいことだけど…じゃあね雪女」

 巨大な黒い球体は解き放たれ私の方へと向かう。こんな所で……

「うぉぉぉぉぉ!」      

 エイジは私の前に来て黒い球体に突っ込む。私はすぐ、グルにビームを撃たせ打ち消してみようと試みる。でもやはり相手が相手なため阻止するのはとても困難な状態だった。誰か来てくれれば…

「そろそろ出番かな」


「見物は終わりです」

 二人の男がこちらに近づいてくる。カーネル大佐とオズマン中尉だ。

「デスカル、出番だぞ~」

 カーネル大佐が一言呟くと何にも無い所から扉が出現しドクロが現れた。

「ウゥゥ」


「あの球体飲み込んじゃって♪」

 ドクロは口を開き黒い球体を物の一瞬で飲み込んだ。

「私の高出力の魔法が一瞬で!?」


「やれやれ面倒ごと増やしてくれちゃって。迷惑なんだよね~補修費かかるからさ~」


「もう良いわ。こうなったらエイジ以外全力で殺すわ!生きて帰れるとは思わないことね!」

 レーナの黒い翼がさらに禍々しいオーラに包まれている。まだ戦える力があるなんて…私の魔力は殆ど空になっているのに…だがそこに一人の男が何の変哲もない場所から姿を現した。

「そこまでです、クイーン」


「ビショップ…邪魔しにきたの?」


「あなたはそろそろ自分の立場を理解した方が良い。本来ならここで処分している所ですが、王の慈悲によりあなたは許されました…退く意外の選択肢は無いと思って下さい」


「ふ~ん、私の行動にケチを付けるんだ」


「私個人としては今すぐにでも抹殺したいのですが、輪を乱す存在はもはや不要ですから」


「ビショップ、参謀担当か…現れてそうそう悪いけど君をここで捕獲するよ」 

 ビショップはカーネル大佐を見てニヤリと笑う。


「カーネル大佐、あなたの実力は耳に挟んでおります。今日はちょっとした挨拶ですので今回はここで退くことにします」


「逃さん!!」

 オズマン中尉は腰に付けてある鞭を取り出しビショップ目掛けて振り放つ。だがビショップはそれを魔法で弾き飛ばした。

「っ!」


「オズマン中尉、あなたの照準は正確でした。ですがそれ故に対処し易いのです。ではご機嫌よう」


「待ちなさい、ビショップ!私はまだ帰るとは言ってな」


「くどいですね。なんならここで消しても良いんですよ!」 


「くっ……エイジ、もう少しだけ待っていてね。絶対に迎えに行くから。それまでにあなたの答えを聞かせて」

 魔法陣が現れ二人は一瞬でこの場から姿を消した。

「さてと中尉…医療班の手配を頼む。このまま皆に死なれたら困るからな」


「はっ!」

 長い戦闘が終わった。私はほっと一息つきその場で倒れた。

「スノウ!スノウ!スノウ!!」

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