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(ⅩⅩⅣ)お迎え

 車を走らせること30分…窓越しに映るのは王国の城にも負けない巨大な城であった。僕が見惚れている内に車は停止した。

「ほい、着いたぞ!さっさと降りてくれ」

 僕達はカーネルさんの指示に従い、車のドアを開け聖団の中に入っていく。するとそこに広がる風景に僕は唖然とした。床には赤い絨毯がひかれてあり、シャンデリアも沢山吊されており、鎧を纏った騎士が順序良く並んでいる。一階だけでもこの広さ……さすがは聖団本部だ。 周りをぐるっと見ていると、奥の方からぞろぞろと騎士がやってきた。

「大佐!ご苦労様でした!」


「な~に、これくらい朝飯前さ。お前ら、後の事は頼んだぜ」


「はっ!」

 あの人、大佐だったのか…失礼なことをしてしまったな。

「気に病むことは無いぞ、エイジ君!俺が詳しい自己紹介をしなかったせいだ。まぁ、ここに居る奴らは階級のことはあまり気にしない奴らばかりだから気楽にいけよ!じゃあな!」

 そう言うとすぐその場を離れ階段を駆け上がっていった。 色々とやらねばならない事があるんだろう……

「さて、君達が大佐に選ばれた派遣組だな!ようこそクロノス聖団本部に!私は君達のリーダーになるオズマン・フリー中尉。そしてこちらの男はハワード・バース少尉。担当は主に戦闘訓練等、君達のサポートをしてもらうことになる」

 ふと僕の顔を見るなり微笑むバース少尉…なんだろう一体?

「では、指示はバース少尉に従ってくれ!健闘を祈る!」

 オズマン・フリー中尉を初め、騎士達は一斉にその場を去った。僕達とバース少尉を残して…

「さてと皆さん!改めましてご挨拶を…私はハワード・バース!階級は少尉!ビシバシいくので宜しく」

 バース少尉…髪は赤色で毛先はきちんと整えられている。さすがはエース…      

「エイジ君…まさか君がここに来るなんて驚いたよ」


「えっ、なんでですか?」


「君、覚えてないのか?一年前、君が彼女に襲われそうになった時助けたんだけどなぁ」 


「……!」        

 思い出した!そうだ、確か一年前助けてもらったんだこの人に!あの時、この人が来なかったら僕は……

「思い出しましたよ。バース少尉、あの時、僕を助けてくれてありがとうございます。おかげ様で僕は……」


「良いって、別に…それにしても良かったよ。君が元気で居てくれて」

 そういえば、あの時は酷く落ち込んでいたんだよなぁ

「エイジ……前々から思っていたんだけど」


「スノウ、どうかしたの?」


「一年前……一体何があったの?」


「…………スノウ、色々言いたいことがあるんだけどこれだけは言わせてもらうよ。一万人を殺した原因を作ったのは僕なんだ。だから今でも僕は過去を引きずっている」 


「……エイジ、あなたがそう思っているならそれは間違いだよ」


「どうして?」


「だってこの前の道案内の時、私を沢山エスコートしてくれて楽しませようとしてたよ。その時のエイジの顔は凄くキラキラしていた。少なくとも今のエイジは前に進んでいるよ。そして最後に帰りしに渡してくれたネックレス…あれ凄く嬉しかったよ!今でも大切に持っているんだから」

 首か襟元から僕が前にプレゼントしたネックレスが姿を現す。

「スノウ……」


「エイジ、私…あなたのことが!」


「ゴホン!良いムードの所すまない。そろそろ現実に戻って来てくれ、お二人さん」


「あ、すみません」                      

「わわわ、ごめんなさい」    

 しまった!ここがどこなのかすっかり忘れていた。真面目にしないと……

「色々場所案内をする。付いてきてくれ」

 こうして僕達バース少尉の指示の下、場所案内をされることになった。場所は様々あるが主に個人部屋、作戦司令室、戦闘準備室、総合訓練所などを紹介された。どれもこれも僕達の予想を遥かに越えた内装ばかりだった。こんなに最新機器があるなんて……ジェネシス王国も随時と進化したものだ。

 そして長い道案内が終わり僕達は昼休憩に入ることとなった。僕はすぐにご飯を食べ、総合訓練所に行く。というのもバース少尉に訓練を誘われたからだ。断る理由が見当たらない……

「やぁ、エイジ君!素直に待っていてくれて俺は嬉しいよ」


「約束は守るタイプですから……」


「良いね。その性格!譲って欲しいくらいだよ……じゃあ遠慮無く行くぜ!!」    

 バース少尉は何かを言いながら召還獣を出した。見た目は鎧を纏った大きな騎士であった。

「デカい……」

 バース少尉は誇らしげに胸を張り

「どうだ!これが俺の相棒、ナイトゴーレムだ!それじゃあ自己紹介も終わったし行くぜ!!」

 鉄球を振り放ち、僕に目掛けて投げてきた。僕はなんとかぎりぎりで避ける。その間、僕は    

「クレイン!」 


「参ります!エイジ!」     

手を繋ぎ、現れた紅の剣を手に宿す。一気に終わらせるんだ!

(今日のエイジは燃えてますね)


「当然!」

 ナイトゴーレムから解き放つ鉄球を視界ぎりぎりに避けながら様子を伺う。それに気づいたバース少尉は

「なるほどね~さすがはエイジ君だ。ならば!」

 バース少尉は腰にぶら下げている剣を抜刀し、こちらに襲いかかってくる。

 僕は負けじと応戦する。

「今日の俺は本気だ!」


「そろそろ終わりにしましょう少尉!」 

 剣に魔力を注ぎ一気にゴーレムと少尉に向かって解き放つ。

「ブレイズ・ルミナス!」

 宙を舞い、僕は巨大なナイトゴーレムを一刀両断にする。次に一気に舞い上がり急下降する。これにはさすがのバース少尉も腰が抜けたようで……

「おぃおぃ、そんなのありかよ…けど、こっちだってそう簡単に負けるわけにはいかねえ!」

 僕の持つ剣そしてバース少尉が身構える剣、二つの剣が互いを交差する。結果は引き分けだった。何故なら互いに首から後20cmの所で剣先があるからだ。   

「負けましたよ」


「いや、今回は引き分けだったが俺にとってはぎりぎりの戦いだったよ。今後も訓練したい時はいつでも言ってくれ!」


「はい!」

 振り返ると観客が沢山周りに居た。いつの間にか注目を集めていたみたいだ。      

「ふっ、どうやら熱くなり過ぎて周りが見えていなかったね」


「そうですね」

 僕達は互いに剣を収めこの場を離れる。だがその時クレインの顔に焦りが出ていたがかなり気になっていた。僕は立ち止まり…

「クレイン、どうかしたの?」


「……エイジ、あの人がこっちに来ます!!」


「……!」

 僕は後ろを振り返る。そこには一人の少女が待ち構えていた。髪は腰までたなびく紫、やがて少女はその綺麗な瞳でこちらを捉えた。

 間違いない、彼女は……

「やっと逢えたわね……エイジ」

 レーナ…一年前、学園生徒や市民を殺害した悪辣非道な子……僕にとっては憎しみの塊。

「レーナ、また君に逢うなんて…」


「さぁ、今度こそ私の所に来て…私と一緒に世界を破壊しましょう」      

 ふと空を見上げると、先ほど広がっていた晴れ晴れしい光景が嘘のように無くなり、今にも落雷が落ちてきそうな光景が変わりに広がっていた。

「一年前にも言ったと思うけど、僕は!」


「いい加減にしろ、貴様!またエイジ君を」

 バース少尉を含め全ての騎士が警戒態勢に入っていた。

「あら、あなたは確かあの時の…一年前はどうも。よくも私の翼を切断してくれたわね、おかげ様で復帰するのに一年掛かったわ」


「まさか懲りずにまたエイジ君を誘拐するとは思わなかったよ……だが今日ここで終わらせる。皆行くぞ!!」

 オーと言う威勢がある声と同時に騎士達は一斉にレーナの下へ攻撃を開始する。だがレーナは空中を舞いその攻撃が見えているかのように次々とかわしていく。

「よっと。なんで私とエイジの邪魔をするのかな~?消えてよ!」

 レーナが右手をかざすと黒い小さな球体が姿を現し、それを騎士達に向かって解き放つ。

「はっ!まずい。退避!退避!」

 黒い小さな球体は地面に接触した同時に衝撃波となって一斉に広がった。

 僕はただそれを呆然と見ていることしか出来なかった。

「くっ、レーナ…君はなんて酷いことを!」

 レーナはその変わり果てた光景を楽しみながら

「ふふふ、これは罰よ。私に逆らってきたんだから当然の報復よ。さて、クレイン…彼を早く説得しなさい。私、この前伝えたわよね?」


「マスター、残念ですがあなたの指示には従いません。エイジと私は一心同体……エイジがあなたを敵として定めているなら私もあなたを敵として定めます」


「その答えは予想外だったわ。あ~あ迂闊だったな。あなたに感情なんか付けなければ良かった…」


「エイジ!」

 スノウがこちらに駆け寄って来た。恐らく騒ぎを聞きつけて来たのだろう。そしてその瞬間、レーナの瞳がスノウを瞬時に捉えた。

「あなた……エイジの何?」


「私はエイジのクラスメートです!」  

 その言葉を聞いた瞬間、レーナは咄嗟に黒い球体を投げつける。僕は瞬時にそれを紅の剣で受け止める。

「くっ!なんて攻撃だ。剣が重い!」


(エイジ!炎の力で浄化してください!)


「あぁ!うぉぉぉ!」

 手に力を全力で込め黒い球体を一刀両断にする。別れた球体はそれぞれの場所に不時着した。

「えっ?何をしているのエイジ?早くそこをどいてよ。エイジに近づく女は消さないと私の虫の居所が収まらないんだよねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


「エイジ!!」

 スノウは弱った僕の代わりに前に出て前線に立つ。

「あなた本当に目障りね…ふふっ、まぁ良いわ。せっかくだしあなたにも聞いて貰おうかしら。私とエイジの過去話を……」

 一年前の出来事を教えるつもりか!?      

「エイジの過去…」 


「興味があるみたいね。じゃあ私達のお話をしましょう。そうね……あれは一年前のことかしら」

 レーナが話すくらいなら!


「いや!僕が話す!聞いてくれ、スノウ!」


「…うん」

 スノウは首を縦に振った。…いよいよ話す時が来たか……

「じゃあ話すよ。一年前……」


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