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(ⅩⅩⅢ)お別れ

「お兄さん本気ですか?」


「うん、これは僕が決めたことだから」   

 僕は今、話し合いの場に居る。今日はあったことは伝えなければならないと思ったからだ。

「……お兄さんの目はどうやら本気のようですね。分かりました、気をつけて行ってくださいね!」


「ありがとう」

 ユリンになんとか許しを貰った。これで心置きなくクロノス聖団に行くことができる。

「そうですか、エイジも遂に大きな決断をしたのですね」


「えっ、いつの間に!?」


「先からずっと居ました」

 全くクレインは神出鬼没だな……

「ユリン、ちょっとこの部屋から退出して貰っても良いですか?」      

 不服そうな顔でユリンは

「お兄さんに変な事したらただでは済ませませんよ……」

 あのどす黒いオーラは何だ!?今日のユリンは一段とヤバいかもしれない。

 だがクレインは至って冷静に…

「そんなことはしません。ただ単にエイジだけに話しておきたい話があるだけです」


「……そう言うことなら致し方ありませんね。では私は少しばかりお外に行くことにします」

 そう言うとユリンは素早くリビングを出て玄関のドアを開け早々に行ってしまった。

「エイジ、これから重要な話をします」               

「うん」

 何だろうか?二人きりにしてまで話しておきたい話って?

「先日私が寝ていた時、脳からある人の伝言が入りました」      

「またある人か……で?」


「エイジを迎えに行く準備が出来た。クレインは明日、私と共にエイジを説得しなさいと…」

 迎えに行く……まさか!

「クレイン……その人ってまさか」

 僕は恐る恐るクレインに名前を聞く。

 誰かは分かっているんだ…けど僕の予想が当たって欲しくは無い。

「もう取り繕う意味は無いですね。そう、その人は一年前あなたに仕えていた人型の召還獣……レーナです」

 そんな、まさかまたレーナが僕の所に来るなんて……

「レーナがまた僕の所に来るのか?」


「はい」                                    

「なら、僕の答えは決まっている。……僕は彼女を殺す」

 あの子はもう末期で手遅れだ。だから僕の手で葬らなければならない。

「本当に良いのですか?あなたの想い人ですよ?」


「それは一年前までの話だよ。今はもう殺意しか湧かない…」


「そうですか、それがエイジの答えですか。なら私はエイジに従います。」

 意外だ…仮にもレーナは君を作ってくれた親の筈なのに……

「良いのかい?君を作ってくれたのはレーナだけど?普通ならそこはレーナに従う所だろ?」


「それとこれとは話が別です。私はエイジと幸せに生きたいだけですから……エイジの進む道に私はただ付き従うだけです」


「そうか、ありがとうクレイン!」


「そう思うなら頭を撫でて下さい」


「ハハ、しょうがないな」

 僕は手のひらをクレインの頭に乗せ、そっと撫でてあげた。

「エイジ……気持ち良いです。このままずっと」


「あぁぁぁぁ!クレイン!あなたは絶対に許さない!!」

 しまった!見られていたのか!あぁ、まずい!部屋が凍り付く!何とかして止めないと!

「ユリン、これはその誤解だよ。そう!なにかの間違いだ」 


「へぇ、そうですか……へぇ」


「ユリン、顔が笑ってないよ」


「お兄さんもお仕置きです!」 

 その後のことは何故か覚えていない。 何でかな?

※※※※

「エイジお兄さん、クレイン。どうか気をつけて」


「了承しました」


「うん」


「エイジお兄さん!」    

 急に飛び付くユリンに僕はタジタジになる。クレインが目の前に居るのに…                    

「必ず絶対無事に帰って来てくださいね!私はいつまでもここで待っていますから!」              


「ユリン……あぁ、必ず僕は帰って来るよ。このお家に!」       

「その約束、絶対ですよ!」   

 その時のユリンの顔は涙に溢れていた。僕はユリンの涙を手で取り払い、学園と向かって行った。道なりを歩くこと数分、彼女の背中が見えた。

「スノウ、おはよう!」


「あっ、エイジ!おはよう!今日からいよいよ…だね」


「うん、そうだね。確か今日の朝ぐらいからカーネルさんが迎えに来てくれるんだよね」


「…何だか緊張するなぁ~」

 今日のスノウは一段と落ち着いていないな。やっぱりクロノス聖団に行くからよほど緊張しているかな?

「大丈夫、僕達が付いているから」                 

「こういう時こそ、リラックスです」


「そ、そだね!よーしリラックスしていこう!」  

 腕を伸ばしてリラックスを図ろうとするスノウはなんか可愛かった……そして歩いていく内に学園に到着し、僕達は普段通り教室に入る。そこには先生をはじめザイン、ミレーナさんが待ち構えていた。

「おはよう、エイジ君♪」


「お久しぶりです、ミレーナさん」


「えぇ、久しぶりね!それにしても随分と会わない内にたくましくなったわね」


「え、そうですかね?」


「絶好そうよ!もっと自信を持ちなさい!むしろ私の好みに近く…」       


「それで生徒会長さんは一体何のご用ですか?」


「あら?もしかしてあなたがこの前転校してきたスノウさん?」


「はい、そうですが?」


「初めまして、私が生徒会長のミレーナです。来年はもう卒業しているから今年だけだけど仲良くしていきましょう!」   

 手を伸ばすミレーナさんにスノウは

「こちらこそ!宜しくお願いします!」


「あの、ちょっと痛いんだけど……何で力を入れているのかな?もしかして嫉妬?」


「あはは、そんなんじゃありませんよ!」

 良くわからないけどこの二人からヤバい雰囲気が伝わってくる……初めて会ったはずなのに何でだ?

「お前ら…そろそろ席に付け」

 先生に言われ、渋々指示に従うスノウ。僕も座るか…

「さて、今日は……スノウ、エイジ、クレインがクロノス聖団に行くことになる。これからはしばらくここには帰って来れないだろう…というわけで軽い別れの挨拶をしてくれ。代表はエイジ!君が言ってくれ…」     

 えっ!どうしよう何を言おうか?悩みに悩んだ末、僕は…

「皆さんというよりアリシア先生にザイン、そして生徒会長ミレーナさん…今日から僕達はクロノス聖団に派遣としていくことになります。仕事内容は恐らく危険なことをすると思います。最悪死も免れないかもしれないです。けどこれだけは絶対言えます!僕達は必ず生きて帰って来ます!だから……その時は暖かく迎えて下さい」

 長い沈黙、だがザインそこで口を開き…

「たくっ、湿っぽいこと言いやがってむかつくんだよ。……ともあれ絶対生きて帰って来いよお前ら!」


「あぁ、必ず!」


「うん!」


「元よりそのつもりです」                    

「エイジ、何かあったら困ったことがあったら必ず連絡をしろよ。いつでも相談に乗るからな!」


「ありがとうございます。先生!」


「……時刻8時50分、そろそろ行きましょうか。エイジ君、スノウさん、クレインちゃん」


「「はい」」

 僕達はミレーナさんに従い、この教室を後にした。

 正門まで行くと、黒い高級車と共にカーネルさんが待ち構えていた。

「やぁ、待っていたよ!エイジ君にスノウさんそしてクレインさん……おや、あなたは確か?」

 ミレーナさんの顔を見た瞬間、顔付きが変わったけど、どうしたんだろう?

「こんにちはカーネルさん。現在ご不在のゴードン学園長に代わりましてご挨拶をさせて頂きます」


「あぁ、誰かと思ったら学園長のお孫さんか~。大きくなったもんだね!」


「三年ぶりですよね。本当に懐かしいです」

 えっ…学園長の孫?そんなこと全然聞いていないんだけど

「エイジ君、その顔は初耳でしたって感じだね♪」


「そりゃあ、まさか学園長の孫だったなんて初耳でしたから」


「学園長のフルネームはゴードン・スマイラス…そして私の名前はミレーナ・スマイラス。まさか気づかなかったの?エイジ君……」

 全然気が付かなかった。というのもゴードン学園長は人前でめったに顔を見せない。だからフルネームで名前を聞くこともなかったからだ。     

「すいません、今日初めて気付きました」


「もうっ、エイジ君ったら!」


「さて…こんな所で長話は抜きにしよう。皆、待ってくれているからね」


「すいません、カーネルさん。じゃあ三人とも向こうに行っても頑張ってね♪」


「「はい!!」」

「良し、三人共!車に乗り込んでくれ!さっさと本部に行くぞ!」

 僕達は車に乗り込み、いよいよクロノス聖団本部に行くことになった。

 これからどうなるのか楽しみだ。

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