(ⅩⅩⅡ)ようこそ
翌日、学園に登校した僕は先生から連絡を受ける。その連絡とは午後に学園長と面会せよとのことだった。しかもスノウと一緒に……何か良くない予感がする。
「エイジ、なに深刻そうな顔してんだよ。こっちまで深刻になるだろうが…」
「あぁ、ごめん。学園長に話とかってあまり無いからどうなるのかなと思って」
「まぁ、確かにな。俺もこの前一回だけ間近で学園長と面と向かって喋ったぜ」
「どんな話を?」
「釈放うんぬん」
「……そっか」
聞かなきゃ良かった。
「エイジ、そろそろ行こう。学園長が待ってるよ」
「あぁ、行こうか!」
僕達は急いで学園長の部屋へと向かった。部屋は五階の筈だ。何だか久しぶりだなぁ……
「何か緊張するね」
「大丈夫!学園長は優しい人だから、緊張しなくて良いよ」
「うん」
僕は意を決して扉をノックし部屋に入室する。
「失礼します。エイジ・ブレイン並びにスノウ・ローゼン参りました」
「おぉ、直接顔を見るのは久しぶりだな。エイジ君!」
お茶で和んでいるおられるようだ。
「まぁ、そんな立ってないで早くそこのソファーに座りなさい」
「失礼します」
「失礼します」
僕達二人は同時にソファーに座る。机の上には適当な駄菓子と熱々のお茶が置いていた。
「あぁ、その机にある物は私が用意したものだ。遠慮せず食べてくれ」
「ありがとうございます。では早速」
クッキーを摘まむことにする。ん!これは中々……
「さて、喜んでいる所悪いが本題について話そう」
学園長はおもむろに席を立ちこちらのソファーに座ってきた。
「今日来てもらったのは…あるお願いがあるからだ」
「お願い…ですか?」
「うむ、実は昨日クロノス聖団から依頼があってね……君達二人を聖団に派遣して欲しいそうだ」
「うそ……クロノス聖団が!?」
「クロノス聖団!?」
クロノス聖団は確かエリート揃いと聞いているけど、まさかそんな所から派遣の要請だなんて……信じられないなぁ。
「まぁ、無理も無いの。急な話で頭が混乱するのもわかる。そこで今日、クロノス聖団の依頼者が来ている。どうぞ!」
扉を開け一礼する男はまさかの……
「よぉ、昨日は良い戦いを見せてくれたね!」
「あなたは、カーネルさん!?」
「覚えていてくれたんだ~おっちゃん嬉しいぞぉ。それにしてもまた会えるなんて運命を感じるね~」
「あの!私はスノウ・ローゼンと申します!以後お見知りお…」
「そう、堅くならなくて良いよ。スノウちゃん!仲良くいこうよ!」
「君も早く座りたまえ」
「はいはい、分かってるって!よいこらせと!」
勢い良くソファーに座り……
「で?話は概ね聞いているよね?」
「一応は」
「じゃあ単刀直入に聞くけど……返事は?」
「その前に派遣での仕事は具体的にどういうことをするのですか?」
「具体的にね~。まぁ今後出没するキングに対処することかな」
「対処ならマイティの人達でも可能なのでは?」
「確かにね~。けどね俺は君達の腕を見込んでいるんだよ。昨日の試合、空中カメラから見させてもらったけど惚れ惚れしたよ~エイジ君の剣術そしてスノウちゃんの……ルーン」
「……」
「ルーン!?スノウ本当なの?」
「…うん」
ルーン、召還獣と人間が一体化すること。その力は強大だがリスクも激しい諸刃の剣……最も使える人はごく一部と聞いていたけど…
「驚いたよ~まさか今でも使える子が居たとは!胸熱だったよ!」
「ありがとうございます」
「…さて、もう一度本題!返事は?」
どうする?この件を断っても別に大丈夫そうだけど……
「スノウ、君ならどうする?」
「えっ、あたし!?うーん」
「やっぱりね~。まぁ今回の件は少々事が事だから考えるかもしれない。けど君達が入ってくれることで流れが大きく変わるかもしれない。今の君達ならそれが出来る!だから頼む!」
強く頭を下げるカーネルさんに僕は……
「お受けいたします」
「エイジ!?」
「本当か!」
「この世界は今、未曽有の危機に晒されています。少なくとも僕はこの状況を放置することは出来ません。だから僕はこの話を引き受けます」
「エイジ……」
「スノウ、君が嫌ならそう答えてくれて良いんだ。これは強制じゃない」
「……私もいきます!」
「本気かい?スノウ?」
「うん、私もエイジと同じ……今の状況をただ眺めているなんて出来ない!」
「スノウ……」
「良し、決まったな!お二人さんの気持ち有り難く頂戴する!」
「ほほ、契約成立ですなぁ。良かった良かった」
「あっ、そうだエイジ君。君に仕えていた……」
「クレインのことですか?」
「そうそう、あの子は大丈夫なの?」
クレインなら……迷わず来てくれるよね。
「大丈夫だと思います。きっと来てくれるでしょう」
それを聞きカーネルさんの顔が大層晴れやかになった。
「そっか、そっか。それじゃあ明日9時に俺が車で迎えに行くわ。その時間帯までにはしっかりと朝食を取って準備をしてくれ。行く場所は勿論クロノス聖団本部…そこで自己紹介やらをするんで宜しく!そして最後に……」
長い間を作り、笑顔でこう告げた。
「ようこそ、クロノス聖団へ!」
こうして僕達のクロノス聖団の派遣が決まったのである。