(Ⅱ)宣戦布告
「先生…この子は優秀な子だと思うのですが……」
「確かにな、だがこの教室に入れたのは明確な理由があるからだ」
「何ですか?」
「彼女はユニバース王国の姫君だからだ」
「ユニバース王国!?ってまさか強豪魔法使いばかりがいる?」
「そうだ……」
ユニバース王国、ここから電車で約1時間離れた場所で人口30万人も居る大きな場所だ。主に魔法に力を入れその結果数々の手練れの魔法使いを出してきたとされている。
「あの、私の席は恩人さんの隣で良いですか?」
「あぁ、そうだな。ではそこに座ってくれ」
彼女は僕の隣に座った。何だろう他の子と違って何だか落ち着く匂いがする。
「これからも宜しくお願いしますね!名前は……えっと」
「僕の名前はエイジ・ブレイン宜しく」
「じゃあ適当な紹介も終わったし、授業始めるぞ」
授業の内容は主に魔法や召喚獣の使い方などを取り行っている。そういう点ではここジェネシス学園もユニバース王国に負けていないのである。
「話を聞けエイジ!」
「あいたっ」
僕はまたしても話を聞いていなかった
※※※※
午前中の授業も終わり一段落になった。そろそろ昼休憩だな、と思った矢先
「休憩に入る前に君達二人に伝えておきたいことがある」
「何ですか?先生」
先生は嬉しそうな顔でこう言い放った。
「来週ジェネシス戦乱祭を行うからそれまでには準備するように!誰と対決するかは追々報告する!では」
「ジェネシス戦乱祭?」
「そんな急過ぎます!無理ですよ。第一僕に武器は……」
「スノウは初めてやると思うからエイジから詳細を聞くように!エイジは放課後、私の所に来い」
そう言って教室から出た。
「エイジ……ジェネシス戦乱祭って何するの?」
「あぁ、スノウは初めてだったけ?じゃあまだ時間ありそうだし説明するね。ジェネシス戦乱祭、通称ジシスはよくあるトーナメント方式で行う1対1の勝ち抜けで決勝戦で優勝すれば賞品が貰えるんだよ」
「へ~そうなんだ。賞品は何が貰えるの?」
「賞品は主に一週間学食無料券とかそんな感じかな」
「良いね。私絶対優勝取っちゃお!」
「意気込みが良いね。そんな感じなら勝てるかもしれないね。ただ今回もあのマイティーが参戦してくるかもしれないから気をつけて」
「マイティー?」
「マイティーは文武共に実力がある者達が貰える最強の称号だよ。現在ランクは8から1まであるんだ。ちなみにジシスで優勝するとランク評価にも繋がるから頑張ってね」
「うん!!」
表情からして凄く勝つ気満々である。一年前の僕もこんな感じだったな。
「さて話も一段落したし、昼食にしよう。じゃあ別行動で」
するとスノウは不思議そうな顔で
「何で?エイジも私と一緒に食べようよ」
「僕もそうしたいのは山々なんだけど昨日言った通り僕と君が一緒に居られる所を生徒に見られると君は真っ先に虐められるかもしれないんだ。だから僕とは」
「そんなことはない!行こうエイジ!」
無理やり手を掴まさせられる僕。人の話は最後まで聞いてよ。お願いだから…
※※※※
「へ~ここが食堂なんだ。凄く広いね!」
「あぁ、そうだね……じゃあ後は君一人で楽しんで来…ぐはっ!」
「ダ~メ。一人で行かせないんだから」
やめてくれ。君を巻き込んだら僕は…
「ちっ何だまたここに来やがったのかよ人殺し……」
案の定、僕を恨んでいる者が近づいてきた。
「ん?そこの可愛い子は今日来た転校生かな?」
「はい、そうですけど……」
すると男はニヤリと口を開きこう言った。
「コイツは一年前、何の罪も無い人達を一万人も殺した大罪人だ!二度と関わらない方が身のためだぜ!ハハハハハ」
男は遠慮無く高笑いで僕を罵ってきた。結局そうなんだ……僕は一年前にやってしまったあの出来事を止めることが出来なかった無力で馬鹿な男だ。僕に生きる価値なんて……
「何で…そんなことを言うんですか?」
「は?」
「一年前に何があったかは知りませんが私には少なくとも彼が大罪人には見えません!寧ろ優しい人です。道案内の時ニコニコしながら教えてくれました!この人を大罪人とか……そんな酷いこと言わないで下さい!
」
「ちっ、この女……人が親切に忠告してやってんのに……もういいお前名前は?」
「スノウ・ローゼンと申します」
「その顔覚えたぜ!来週ジシスで会った時完膚無きまでに潰して俺の女にしてやる!」
「受けて立ちます。けど勝ったら一つ条件があります」
「ふん、何だよ」
「エイジに詫びて下さい」
「おいおい、そんなくだらねぇ事で良いのかよ?」
「私にとっては重要な事です」
男は罰が悪そうな顔で……
「ちっ、分かったよ。でもまぁお前らがこの最強の俺に勝てるわけねぇけどな!ハハハハハ」
男は高笑いしながら食堂を後にした。
「エイジ……どこか落ち着く場所ある?」
「あぁ、あるよ。あの場所なら」
※※※※
「ここって庭?」
「うん、そうだよ……」
「どうかしたの?」
「いや、さっきはその迷惑かけちゃったなと」
「そんな迷惑だなんて……大体あの無神経な男が喧嘩を売るから」
「でも結果的には迷惑をかけてしまっている。負ければ君は……」
「大丈夫!私絶対勝ちを狙うから一緒に頑張ろう!」
「うん、そうだね」
こんな状況下でもめげないなんて……君は本当に強いな。
「どうしたのエイジ?早く食べようよ」
「あぁ、そうだったね。頂こうか」
二人で食べる昼食はとても心地よかった。
※※※※
授業が終わり僕はスノウを先に帰らせ、職員室に向かった。そういえばスノウはどこに住んでいるのだろうか?
関係ないけど……
そうこうしている内に着いたのでドアノックを三回して入室した。
「失礼します」
「来たか…エイジ、ソファーの所に座れ」
「はい、では失礼します」
うわぁ、凄い何とも言えない弾力感が僕の中に響いてくる。その後先生もソファーに座った。
「…この大会の裏、お前なら読めているだろう?」
「えぇ、何となくは…上の連中は大会で僕の敗北を見て強引に辞めさせるつもり何でしょう」
前々からそんな感じはしていたんだ。今ここに入れるのだって学園長と先生のおかげでもある。
「お前がもし敗北してしまったら先生はもう止めることが出来ない」
「でも僕は武器がありません、どうすれば」
「私の家に適当な剣がいくつかある。それを使って戦え」
「対戦相手は…」
先生は目を閉じ、こう告げた。
「キマリス・フレッド、M8だ。」
マイティーの中では一番下だが実力はかなりあると知られている。そして僕が最悪だと思ったのは
「よりにもよって、今日食堂で会った男ですか…」
「出会ったのか?」
「えぇ、かなりまずいことになりました。けど」
「けど?」
「スノウの為にも僕はキマリスに勝ちます!」
「ふっ、そうか。応援するよ」
「ありがとう御座います先生」
「じゃあ私の家に行くぞ。帰り支度するから、廊下で待っていろ」
「えっ!?今から行くのですか?」
「善は急げだ」
こうして僕は先生の家に向かうことになった。