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(ⅩⅤ)ブリアナ海

「ちっ、こんなに巨大だとやっぱり貫通しねぇなあ」


「そうだね、さてどうしたものか……」  

目の前には巨大な魔物の蛸がこちらを睨みつけている。

 危機的状況にあるのは相変わらずだ。そもそも何故こういう状況になったのか?こうなってしまったのは1日前に遡る……

※※※※

「良し、集まったな!急な話だが我々Xクラスは明日ブリアナ海に行く!」


「ブリアナ海って確かジェネシス王国の東側にある……」


「そう、東側に大きな海があるんだ。因みに海に隣接しているのはこことハマネス王国だけなんだ」


「へーそうなんだ」


「おい!先生、いくら何でも急過ぎやしねぇか?」

ザインは相変わらず先生にタメ口だ。もはや遠慮無しである。「まぁ、確かにな。だがこれは一応学園長からの指示なんだ……」


「あぁ、あの野郎の……結局どういう指示なんだ?」


「指示内容はこうだ!せっかく転校生が三人も加入してきたんだ。海で親交を深めなさいとのことだ」


「要するに修学旅行に行けってことか」


「まぁ、概ねその通りだな。ということで準備物を黒板に書くぞ」

 チョークで準備物をどんどん書いていく先生、準備物にはサンダル・ポケットティッシュ・バスタオル・日焼け止め・水着などが書かれていた。                                                 「これぐらいだな必要な物は……後はこちらで用意する」    

「6月に海とか何考えてんだか、あの野郎」


「恐らくラッシュを避けるためだろう」


「そうかい」

 ザインはそう言ったきり寝てしまった。いつもながらやる気ないな……

「先生…私水着、家に置いてないのですが」


「私も……」

 先生はニコニコしながら

「なら、放課後私たち三人で水着を買いに行こう」


「良いんですか先生?」


「勿論だ。可愛い生徒の為なら私はいつでも協力するさ」


「エイジ……水着ってどんなタイプがありますか?」


「どんなって……そりゃあ」

 何でこんな言いにくいことを言うのだろうこの子は?

「そういうのは先生に聞いた方が良いと思うよ。僕、男の子だし」


「わかりました」


「では集合場所は駅で、時間帯いつも通り!それでは長い前置きはこれくらいにして、サッサと授業を始めるぞ。…あとそろそろ起きろよザイン。じゃないと」


「っ!言われなくとも!」

 こうしてまた1日が始まった。 

※※※※

 今日の1日の授業は終了。僕は帰り支度をする。

「エイジ、今日は帰るのが」


「わかってるよ、ユリンに伝えておくから」


「ありがとうございます」


「じゃあ女の子三人だけで出発だ!」

「おー」

「はい!」   

 三人共、元気良く教室を後にした。今残って居るのは僕とザインだけだ。

「お前に話がある」  

 急に話しかけられてしまった。一体何の御用だろう?

「何かな?」


「別に大したことはない……ただこれからお前の名前を呼ぶ時はエイジでも良いか?こっちの方が呼びやすい」


「なら僕はザインさんと呼んだ方が良いかな?一応先輩だし」


「さん付けとかやめろ。気色悪い……普通に呼び捨てで良い」


「じゃあ、ザインまた明日!」


「あぁ、じゃあな」    

 なんだかんだでザインも良い奴であることを知った僕であった。

※※※※

 家に帰宅。玄関には妹のユリンが居た

「あっ、お帰りなさい。お兄さん」


「ただいま、ユリン」


「お兄さん今日はどうなさいますか?私か私?それともわ・た・し?」


「何で選択肢が全部ユリンなの?僕、晩御飯食べたいんだけど……」


「それならさっき出来た所です。どうぞ召し上がって下さい」

 心無しか不機嫌のような気がする。

「あぁ、ありがとう。それとユリン、明日は海に行くことになったから帰り遅くなるよ」


「海ですか!?」


「そうだけど、どうしたの?」


「お兄さん、誰と行くんですか?」


「クラス全員だけど」


「ク、ク、クラス全員……わかりました。では私も…」


「学園があるでしょ?」


「あうっ」

 どうやら学園のことを忘れていたみたいだ。そんなに海に行きたかったのか。   

「今度連れていってあげるよ」


「本当に?」


「うん、もちろん」


「わーい、お兄さん約束ですよ」

 嬉しそうな顔で二階に上がっていった。僕はその微笑ましい顔を見てからリビングに入った。

※※※※

「くそ!暑すぎだろ、最悪だ!」


「本当に暑いね」

 集合時間の10分前、今居るのは僕含めて三人だけだ。この間タブレットで気温を確認する…27℃か   

「7月迎えると下手したら30℃いくかもな」


「かもね」


「お待たせ~」


「ほぅ、私たちより先に来るとは……やるな」

 先生とスノウが見えた。

「エイジ今日は激しい物を見せてやる。期待しておけ!」


「別に期待してないです。それよりもう皆集まったみたいですし行きませんか?」


「やれやれ……じゃあ皆行くぞー!」

 ブリアナ海までは30分…とりあえず軽く寝とくか…

※※※※

「よし、到着だ」 


「これが海…広い」


「わー凄い」

 駅からバスで20分で到着。絶好の海日よりだ!

「さて、まずは着替えるか」


「そうしましょう」  

 僕達は男女それぞれに別れて着替えることになった。

 ちなみに僕はよくある海パンをつけて終了だ。ザインの方は海パンとサングラスときっちり気構えている。

「これぐらいやらねぇと海を楽しめないからな」


「ふっ、そうだね」   

 着替えも終わったので僕達は更衣室を出てただただ砂浜を歩いた…歩いている最中、意外にも人が来ていたのでちょっと驚いた。

 5分後……

「お待たせ~」


「待たせました」


「良し、準備完了だ」

 女性グループご帰還。これは!!

「まるで天……いや何でも無い」


「エイジ、私の水着似合う?」

 似合うも何も、もう水着と一体化しているじゃないか。タイプはホルターネックのビキニか…色も白、全てが一体化している!

「とっても綺麗だよ。スノウ」


「何か照れるなぁ」


「おぃ、エイジ私にも感想を」


「私もお願いします」

 まずい……これは非常に良くない状況だ。こうなったら……逃げるか!  

「……えっと、じゃあ僕、適当に泳ぎに行ってきます!」


「待て!」

 僕は耳を傾けず海に潜り込んだ。

「ぷはっ、やっぱり海は最高!」


「おぃ、エイジ一人で楽しむのも良いが……ちょっと競争しないか?」


「良いね、参加するよ。どこの岸にする?」

 ザインは奥の彼方にある岸を指で差し…

「あそこをゴールとしよう。負けたら一週間パシリな」

 パシリか…こりゃあますます負けるわけにはいかないな。

「よし、受けて立つ!」

 僕は泳ぐ体勢に入る。

「じゃあ行くぜ!よーい……ドン!」 

 始まりの合図と共にクロールで一気に岸まで向かう。

(ザインもクロールか……負けられないな)

 距離的に考えると着くまで10分。長い戦いになりそうだ。僕は必死に泳ぐ。向こう岸に着くまで、頭を空っぽにして……

 そしていよいよ僕の手が岸に届いた。さぁ、どうだ!

「はぁはぁ、やるじじゃあねぇか。あと5秒早かったら負けてたぜ」

 どうやら敗北したみたいだ。何かちょっと悔しい…


「安心しろ、さっきのパシリとかは無いから」


「えっ!じゃあ何でそんなこと言ったの?」


「ちょっとしたジョークのつもりだったんだ」

 焦った。これから一週間コキ使われるのかと思った。


「さて、戻るか」


「そうだね、いつまでもここに居る訳にはいかないし」


「うぉぉぉぉ!」


「何だ…あのデカブツは!?」


「あれは放浪召喚獣!」

 放浪召喚獣…人に使役されておらず、各地を転々とさまよっていること。近年では殆ど見かけなかったけど……それよりも召喚獣が船を襲っている。まずい、早く助けないと沈没するぞ!

「行くぞ」


「あぁ」

 僕達は大急ぎで船へと向かう。5分でなんとかたどり着いた。

「よっしゃ、到達!」


「助けてくれ!このままじゃあ沈んじまう!」


「わかってる。さっさと片付けるぜ、エイジ!」


「あぁ!あ、あれ?」


「どうした?」


「しまった。クレインが居ないから戦えない!クレインさえ居てくれば……」

 直後、僕の背中らへんで何か気配を感じた。振り返ると…

「エイジ……どうやら緊急事態が発生したようですね、お手伝いします。」


「クレイン!?君は砂浜で遊んでいたんじゃあ?」


「エイジが呼べばどこでも直ぐに行きます。だって私はあなたの剣だから」


(あなたがどれだけ朽ち果て一人になろうとも私は永遠に側にいるわ…だって私はあなたにとって唯一の)

 っ!なんでこんなことを……駄目だ。今は目の前のことに集中しないと


「いくよ、クレイン」


「はい」

 僕とクレインは互いに手を重ね、そして紅の剣をその身に纏った。

「準備できたな、いくぜ……っ!魔法が使えないことすっかり忘れた!」


「それについてはこれがあるから安心して」 

 タブレットを取り出し、許可のボタンを押す。するとザインの首元の色が赤から青に変更した。ちなみにこのアプリは既に先生から事前に受け取った物だ。  

「よし、これで戦える!今度こそ……いくぜ」           

「あぁ」      

 戦闘開始!相手は蛸型か、難なく倒せるか?

「まずはこちらからだ、蛸野郎!」

 ザインは乱暴にトリガーを引きまくり、弾を乱射する。効果は……

「うぉぉぉぉ」

 全く通っていない!?

「ちっ、こんなに巨大だとやっぱり貫通しねぇなぁ」


「そうだね、さてどうしたものか」


(剣で思いっ切り刺すしかありません)


「うーん、けどやっぱり」


(距離の問題ですか?)

 僕も当初は剣で貫こうと思った。けどこの召喚獣は身長がでかすぎて距離的に届かない。

「エイジ!」

 この声……スノウか!

「グラ!ブリザード・ビーム」

 蛸型の召喚獣に直撃!良い感じだ。

「エイジ、これに乗って」


「わかった」

 召喚獣に乗るなんて初めてだな。

「俺は援護射撃で視界を逸らす」


「任せた」       

 僕はグラに乗りスノウの合図と共に上昇した。

「いけそう?」                         

「なんとか」


(エイジ、魔力供給お願いします)


「わかった」

 僕は剣に魔力を込め、蛸型の召喚獣に狙いを定める。

「スノウはどこかに掴まってて」


「うん、わかった。グラ、このまま突進!」


「キュルルル」

 一気に敵の下まで加速する。ちょっと怖いけどやれる。それにザインのおかげで背中はがら空きだ。ここで決める!

「はぁぁぁ、ブレイズ・バースト!」

 身体を真っ二つにし、一気に切断した。

「うぉぉぉん」

 激しい爆発音、僕は必死にスノウの召喚獣グラにしがみつく。

「きゃあああ」


「危ない!」

 海に落ちそうになるスノウをなんとか手で掴む。

「エイジ……」                            

「そのまま握ってて」


「うん」      

 そのままスノウを上に持ち上げ、何とか無事帰還することが出来た。

※※※※       

「ありがとうございます!おかげで助かりました」


「たくっ、大変だったんだぞ。こっちは……」


「まぁまぁ、それよりも一つお願いしても良いですか?」


「はい!何でしょうか?」


「……砂浜まで送ってもらうことは可能ですか?」


「お安い御用です!!」

 こうして僕達は砂浜まで送ってもらい、無事帰投……けど先生にこっぴどく叱られたけど、やっぱり遠くに行かない方が良かったのかな?まぁ、でも助けられる命を助けられたし僕は満足しているんだけど……

「ねぇ、エイジ…土曜日道案内してくれないかな?」 


「急にどうしたの?」


「だって、エイジこの前放課後の時、言いかけてたよ。あれ道案内のことでしょ?そろそろ行きたいなあって」

 そういえば色々あってスノウに中々言えなかったなぁ……よし!

「うん、良いよ。土曜日遊びに行こう」


「ありがとう。エイジ」


「おーい、お前らそろそろ行くぞ。次の電車まであんまり時間が無いからな」


「はーい」

 せっかく海に行ったのに、海らしいこと何一つ出来なかったけど、充実した1日になった。

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