(ⅩⅣ)問題児加入
ここは聖団本部取り締まり室…今日はどうやら厄介な奴が来るらしい。
「入れ」
「……」
「ここに座れ」
男は嫌そうな顔でパイプ椅子に座った。
「えぇと」
男の詳細の紙を見る。名前はザイン・ヴァール、髪は橙色をして髪全体はまとまっていないように見える。身長は168cm。経歴は一年の時、停学で留年か…
「書類を拝見した…随分とヤバい奴だな。お前」
「どうでも良いだろう。さっさと終わらせてくれ」
「あぁ、じゃあ早く終わらせてやる。こっちも暇じゃないんでな…俺の名はハワード・バース。階級少尉、短い間だが宜しく」
ザインは気怠そうに欠伸をする。随分と俺の前で余裕かましているじゃないか。
「動機は何だ?留年させた先生達への腹いせか?」
ザインは笑いながらこう答える。
「ハハハ、有り得ないね」
「じゃあ何だ?」
「決まっているだろう?強い奴と戦いたいからさ」
コイツ典型的な犯罪者タイプか。強敵を求めるタイプは周りが見えていない奴に多い。
「動機は強い奴と戦うため…と。有罪確定だな、こりゃあ。もう学園には戻れないと思った方が良いぞ!」
それでもザインは顔一つ変えなかった。この野郎…牢屋に入れられるのにまだ余裕なのかよ!
「被害者はマルカナ・アデス、キマリス・フレッド、最後にエイジ・ブレイン!?」
まさかこの顔をまた見るとは思わなかったぜ。
「どうかしたんですかバース少尉?」
「別に…」
「怪しいな~」
「話は終わりだ。これから簡単にお前の末路について説明するぞ、よく聞け!1、仮牢屋に入居!2、裁判で判決!ラスト3、拘束期間まで永遠に牢屋に入居。指示はあっちの男に従うこと!質問は?」
「無いね」
「ちっ、そうかい。じゃあ牢屋で頑張って生きててくれよ」
皮肉を言ってやった。コイツと喋るのはもうウンザリだ!
「そうさせてもらいます」
俺はドアを乱暴に開け廊下に出た。
「少尉ご苦労様です!」
「バイソンか…俺は今日かなり疲れた。少し休まさせてくれ」
「別に構いませんが、どうかされましたか?」
「アイツ…死刑になっちまえば良いのにな」
「不謹慎ですよ。少尉」
「わかってる、わかってる」
まぁ、どの道奴は数十年太陽には会えない。せいぜい牢屋生活を楽しむが良いさ。
俺は自販機でブラックを買い、飲みながら次の現場に向かった。
※※※※
「立て、ザイン容疑者!」
ふぅ、やっと終わったぜ。早く寝てードアを叩く音がする。何だ?
「失礼します」
「どうした?」
「実はアル……」
二人でこそこそ話か?早くしてくれよ。
「な…正気かそれは?」
「はい、大佐の命令です」
「くっ、大佐の命令なら致し方ない。オイ!」
「何だよ」
「お前の学園長が此処に来る。来るまで待機するように!」
学園長?今更何の用なんだよ……男二名はドアを出てそのまま去っていった。まさかの独りきりか……
俺は机にうつ伏せし寝る体勢に入った。とにかく今は寝たい。
しばらくするとガチャッという音がした。来たか……
「よいこらせ」
俺は閉じた目を開ける、そこには正真正銘の学園長が目の前に居た。
「君と直接会話するのは初めてになるね」
「あんたが学園長……」
「そう学園長…アルベルト学園長だ。これからも宜しく」
「これからも?」
「そうこれからも……単刀直入に言うがもう一度入る気はないかね?学園に」
何言ってんだコイツは?犯罪者を連れ戻すなんて無理に決まっ
「保釈金は私が用意しよう。どうだい?考える気にはなったかい?」
「…!?お前」
「さぁ、返事は?」
俺のことを見通していやがる。敵に回すとヤバいなコイツは……それに学園に行きたい気持ちは少しあるしな。
「良いぜ、学園に戻る話し乗らせてもらう」
「ハハ、それで良い。但し二つ条件があるんだ」
「条件?」
俺がそう聞くと学園長はおもむろにカバンから首輪みたいなのを出す。
「一つはこれを付けること…君は随分と暴れん坊さんだからね」
「これは?」
「付けてからのお楽しみさ」
この野郎……説明する気無しか!
「最後に二つ目、クラス先を変更しても文句を言わないこと」
「クラス先?それは別に良いぜ。あんなクラス、未練無いからな」
それに雑魚ばっかだし。
「ふむ、心得た。では君が次に勉学を励むことになるクラス先を発表する」
発表を終えた瞬間、俺は疑問マークが浮かんだ。
「……なんだ、そりゃあ?」
「行ってからのお楽しみさ」
※※※※
「じゃあ後は任せたよ」
「お兄さん……本当に大丈夫ですか?まだ身体は癒えていないんじゃあ……」
「大丈夫だよ!一週間も休んだんだから平気だって!それじゃあ」
「あっ!お兄さん……もう」
僕は逃げるように家を飛び出した。その跡をクレインがとぼとぼと付いてきていた。
「良いんですか?」
「ちょっとまだ痛むけどこれ以上心配させたくないからね」
あれから一週間が経った。僕の腹の中にある弾なんとか摘出され、命を取り留めることが出来た。回復には長い時間を要したけど……
「エイジ!」
真っ直ぐ道なりに歩いているとスノウに出くわした。なんか……
「久しぶりだね、スノウ。元気にしてた?」
「エイジ……心配したんだから!」
僕の顔見て泣き出し、抱き締めてきた。ちょ!えぇぇぇ!
「スススノウ!急にどうしたの!?」
「私が学園に戻ってきて先生からエイジが撃たれたって聞いた時凄く驚いたの」
父親がこの前亡くなったばかりなんだよな……ショックになるのも無理は無い。
「だから良かった。こうしてまた出会えたことに感謝しないと……エイジは私にとって大切な人だから」
「え!それって?」
「あ、いや、違うの!今のは……何でもないからーーー!」
行ってしまった。
「エイジ…顔赤いですね」
「これは暑いからさ。じゃあ行こうか?」
「はい」
僕達は再び学園に向かっていった。
※※※※
「おはようございます」
「おはようお前ら。……なんか距離感が近いような……」
「気のせいです」
「ハイハイ、そうかい。じゃあ座ってくれ」
今日はスノウも来たので再び三人での授業が始まる。僕に とっては久々だ。
「じゃあ出欠飛ばして授業を始め」
コンコンという音が聞こえた。珍しいな、こんな時間帯に……
「はい、どうぞ」
「失礼するよ」
現れたのなんと学園全体を取り締まる学園長だった。
「アルベルト学園長!?何故こちらに?」
「久しぶりだね。アリシア君……君も久しぶりだね、エイジ君」
「お久しぶりです」
「学園長、本日はどのような件で?」
「ハハ、そう気構えるでない!今日来たのはある子を紹介したいからだ」
「ある子?」
「入りたまえ!」
音を立て現れたのは……
「学園長、ここか。特別教室…いやXクラスは?
「そう、ここがXクラスだ!どうだい?」
「ふーん、人数が殆ど居ないから気が楽だなーあっ!?何でお前が居るんだ?紅の剣野郎!」
凄い睨み付けられている。こりゃあ根に持っているなぁ…
「何でって言われても僕はここのクラスだし……」
「くそ!学園長ハメやがったな!」
「ハハハ、何のことだか?それよりアリシア君」
「はい?」
先生に内緒話をし始めた学園長。一体何の話を……
「わかりました。ではこの子は私が責任を取って面倒をみます」
「うむ、ではな。諸君!」
「ちっ、待てよ!この…うぎゃあああああ!」
身体全体に電撃がほとばしっているけど大丈夫なのかな?
「よそ見するな」
「はぁはぁ、てめぇ」
「とりあえず名前言いな。言わなきゃボタンを押す」
先生はタブレットを手に掲げ見せびらかした。
「なっ、いつの間にそんなアプリを…」
「じゃあ押すぞ」
「わかった、わかった!俺の名前はザイン・ヴァール!言っとくがお前らより二つ年上だ!だから俺に口答えした時は……あれっ?」
「言っておくが、私が許可しない限り魔法は出せないぞ」
首輪がある限り、どうやら彼は自由に身動きが取れないようだ。
「ぐぬぬぬぬぬ」
こうして問題児、ザインを新たに加えた学園生活が始まった。