(ⅩⅠ)王位継承
翌日葬式が開かれ親族の方のみ行われた。その間僕は部屋で待機していた。国民はその訃報を聞き殆どの人が嘆き悲しんでいたと言う。
コンコン
「どうぞ」
「終わったよ。葬式……」
「…そうか」
どうかけて良いのかわからない。
「エイジが気にすることは無いよ。でも私が帰って来た日に突然殺されるなんて」
「偶然だよ。それは……」
「そうだよね」
そうだ、偶然なんだ。そういえば昨日話し合いとかなんとかお手伝いさんが言ってたような……
「スノウ、こんな時に悪いんだけどちょっと質問しても良いかな?」
「うん、何かな?」
「話し相手の名前はわかるかい?」
「確かワイズだったような……」
ワイズ、恐らくというより確実にこの男だな。
「姫!ここに居られましたか!?」
「クラウス!」
「あの、あなたは?」
「ん?客人か。私はローマイアス国王に仕える筆頭騎士クラウスである。以後お見知りおきを……」
「宜しくお願いします」
「うむ、それよりも姫…今回の件私が殺したようなもので御座います。」
「クラウス……」
「私が!私が止めていればこのようなことは起きていなかったのに!何という失態!私死んで償う所存です」
「そんなことは私が許しません!!お父さんの為にもあなたは生きねばなりません」
「もったいない御言葉ありがとうございます。そうと決まれば私……」
コンコン
「はい、どうぞ」
失礼しますと扉を開ける……見た感じ中年の男性だった。
「姫、王位継承のことでお話しがあるそうです。王座の間へお越し下さい。」
「わかりました、すぐに行きます。ごめんねエイジ、もうしばらくこの部屋で待ってて……」
「あぁ」
僕はどうやら王座の間には行けないらしい。当然か、部外者だし…
「でも、気になるんだよね」
僕はこっそりと部屋を抜け出し王座の間へと向かった。
歩いて数分、誰にも見つからずに問題なくたどり着いた。多分お手伝いさん達も王座の間に入室しているからだろう。 扉を少し開け、耳を澄まして内容を聞くことにした。
「スノウ、久しぶり」
「お姉様!今までどこに?」
「ちょっと北の所で一人暮らししていたのよ……それよりも今日来た理由…スノウならわかるわよね?」
あれがスノウの姉…髪は橙色で赤のドレスを着ている。大人しいスノウとは対照的だ。
「わかっています。次の王位のことですよね?」
「わかっているじゃない。じゃあ私から言わせてもらうわ」
姉らしき人物は封筒を出し、一通の手紙を出した。
「それは…手紙!」
「そう、父からのね。細かい内容は省くけど簡潔に言うとこう書いてあったわ」
「私が死んだ時、次なる王はマリアに任命する…と」
マリア、それが姉の名前か。
手紙の内容を聞いた時、周りの兵士達が騒ぎ出した。かなり困惑しているようだ。
「静かにしなさい!!とにかくこの手紙の内容に従い、今日から私が王になるわ!」
「そん……な」
「スノウ、どうやら父はあなたを王の座に相応しくないと判断したみたいね。まぁ当然かもしれないけど……それと盗み聞きしているのはバレているわよ。出てきなさい」
バレている!?この距離から見つかるなんて…仕方ない、行くか。
「盗み聞きして申し訳ありませんでした」
「エイジ!何で来ちゃったの?」
「ごめん、やっぱりスノウが心配で、つい」
「あら、あなた…」
近づいて来たけど……一体僕は何をされるんだろう?
「あなた、私の好みのタイプだわ」
「は?」
次の瞬間、衝撃の言葉を口にする。
「決めた!今日から私の筆頭騎士になりなさい!」
「えーーー!」
王座の間に居る人達が一気にざわめく。そしてそれに納得出来ない者が居た。クラウスさんだ…
「アンナ姫!先の言葉撤回してください!この人は客人ですよ!」
「黙りなさい!あなたには聞いていないわ。で?先ほどの返事は?」
「…申し訳ありませんがお断りさせていただきます」
「ふーん」
「やめて、お姉様!エイジはまだ学生なんですよ!それに王の筆頭騎士はクラウスが居るじゃないですか」
「クラウスだと…私の士気が下がるのよ。それに引きかえエイジと言ったかしら?あなたは私のタイプだし、筆頭騎士になってくれたら給料面は勿論、あなたの妻になっても良いわ」
「僕には…まだやるべきことが残っているんです。それに部外者の僕が筆頭騎士になるのはおこがましいことです。この国のことは国の人達が支えないといけません」
「やるべきことね。それが終わったら来てくれるの?」
「いいえ、来ません」
僕は強くそう主張した。僕は筆頭騎士になるつもりは毛頭無いからだ。
「わかりました。あなたがそこまで言うなら」
「お姉様……」
「でも、エイジ忘れないで!あなたがなりたい時はいつでも私に言いなさい!すぐに任命するから」
「お気持ちだけ受け取っておきます。では失礼します」
「エイジ……」
「スノウ、僕は先に帰ることにするよ」
「うん、わかった。明日は欠席するかもしれないから先生に伝えておいてくれるかな?」
「あぁ、伝えておくよ」
僕はすぐに帰り支度をし、駅へと向かっていった。国民の姿が見えない。街は空虚と化していた。 人が居ないだけでこんなにも虚しいなんて、思わなかったな。歩いている内に電車がホームに着いたので急ぎ足で電車に駆け込んで行った。最近、僕の身の回りで良くないことが起きつつある。果たしてこれは偶然なのか必然なのか……
僕はジェネシス王国が着くまで揺れる電車の中で両目を閉じ深く眠ることにした。