(Ⅰ)始まり
「私の所に来てエイジ……」
紫色にたなびく少女は悲しげに見つめていた……辺り一面死体が蔓延る場所で…僕は鉛のように重くなってしまった口を開く。
「僕は君の所には行けない」
「どうしてなの?私と行けば世界をあなたと私だけの物にすることができるのよ?邪魔者は私が全力で消すから」
「君とはずっと仲良しで居たかった」
※※※※
「おい、こら起きろエイジ!」
またか、最近寝てたらいつもこの過去を思い出す。もう忘れたいのに……
「その様子だと、またあの過去を垣間見た感じだな」
「えぇ、なんかすいません授業中に」
「別に構わんよ。今日はこの辺で終わろう。起立…礼!」
「ありがとう御座いました!」
お昼の時間になった。僕は勇気を振り絞って食堂に向かった。
「お、来たのか人殺し」
「人殺しがこっちに来るなよ。食堂が汚れるんだよ」
「うわ~ちょっと見て見て人殺しが来たよ。ヤダ怖い」
僕はもう耐えきれそうに無いので早々に食堂から去った。ごめん、ユリン約束は果たせそうにないや……
「エイジお兄さん!!」
ユリンの声が僕の耳に触れたが無視して走った。もうユリンとは家以外会えそうにないな。
僕は別の場所に行くことにした。
場所は学園の裏庭……僕の唯一の休憩所だ。
「ユリンに作って貰ったこの弁当が唯一の僕の幸せなんだよな」
僕はその小さな容器に詰まったおかずを綺麗に食べた
「ご馳走様…」
今日も変わらない日々が続く。この時はまだそう思っていた、けどあの子に会ってから僕の人生は大きく変わったんだ
※※※※
帰宅後、僕は買い物をしたいため黒いコートを羽織りフードを被って外に出た。一年前からずっとこの服装だ。店は家から10分離れた場所にある煌びやかな商店街だ。一年前まではこんなに派手では無かったが……
「いらっしゃい!いらっしゃい!今日は魚のハドックがなんと一匹1000セルだよ!」
随分と活きの良い魚だな。良し!
「すいません、これ一つ下さい!」
「おっ、あんた活きが良いね!ありがとさん!」
今日はフライにしよう。ユリンもきっと喜んでくれる筈だ。そして普段と変わらない帰り道を歩いていると奥に地図帳を持った女の子がオロオロしていた。
「どうしよう、ここを行けば本当に行けるのかな?」
綺麗な白色の髪に純白のドレスを着た綺麗な少女……僕は見惚れていた。おっといけないいけない。僕は困っている彼女の方へ駆け寄った。
「何か困ってるみたいだね。良かったら協力しようか?」
「はい!お願いします!この場所に行きたいのですがどうやって行けば良いのでしょうか?」
えぇとこの場所は……あれ?ここって
「もしかして君の行きたい場所は学園なのかい?」
すると彼女は驚いた顔で
「えっ!何でわかったんですか?」
「僕もこの学園の生徒でね。この時間帯なら……大丈夫かな。じゃあ行こうか、僕に付いてきて」
「はい!ありがとう御座います」
こうして僕は彼女を学園まで道案内することとなった。
※※※※
「はい、着いたよ」
「あの、本当にありがとう御座います」
律儀で良い子だ。道案内したかいがあったな。
「タブレットとか持っていますか?」
「持ってるけどどうかしたの?」
「これから色々と学園を教えて欲しいので連絡先良かったら下さい」
すると彼女は角度45度にして僕に頭を下げてきた。そこまでしなくても良いのに……
「わかったよ。えぇっと僕の連絡先…」
瞬間、僕の手が止まった。こんな綺麗な子を巻き込んだらいけない。きっと転校生なんだろう。僕と関われば転校初日にイジメが絶対に起きる。それだけはなんとしても避けないと……
「ごめん、やっぱり無理だ」
「えっ?どうしてですか?」
僕はこれ以上関わらないようにしたいため敢えて冷たく言い放つことにした
「君は優秀なクラスなんだろう?僕は最弱クラスでね。君と僕が関われば君が馬鹿にされるのが目に見えるからね。だから君とは金輪際関わらない。じゃあ」
僕は駆け足で家の方へ向かって行った。ごめんね、君まで巻き込まれたらもう僕は僕でいられなくなるかもしれないから……
家に帰って焼き魚にして食べてもその心残りはまだ残っていた。
「エイジお兄さん、大丈夫ですか?」
僕の顔を覗き込むユリン。心配させたらいけないな。
「ごめん、ちょっと考え事をしていたんだ」
「そうですか……それよりエイジお兄さんどうして食堂を出てしまったのですか……」
「ごめん……僕は皆に嫌われているからやっぱり入る事自体不可能なんだ」
「エイジお兄さん!どうしてそんな内気な事を言うんですか!やっぱり学園の皆があの眼差しで見てくるから辛いのですか!何なら私がアイツらを根絶やしにして」
「ユリン!!」
「はっ……ごめんなさい…エイジお兄さん」
萎縮してしまったユリン……ちょっと怒り過ぎたか
「ごめんねユリン……迷惑かけて」
「いえ、私の方こそごめんなさい……」
「…とりあえずご飯まだ残ってるし全部食べよう」
「そうですね」
僕達は食事を再び始めた。こんなに空気が重い日は初めてだ。食べた後、風呂に入り直ぐに寝た。次の日、僕は朝7時に起きすぐに家を出た。というのも昨日の夜先生から紹介したい子がいるとの連絡だった。何だろうか?
30分後、学園に到着。今はまだ生徒があまり来てないらしい、それはそれで良いのだが……目の前には見慣れた金髪ロングの子が居た。恐らく生徒会長だろう、まだ一回も話したこと無いけど…
「キャッ!」
えっ!今転ける場所あったの!?そんなことより助けないと!僕は考えることを止めすかさず右腕を握った。
「あっ、ごめんなさい……あなたもしかして…」
「生徒会長を怪我させるのは良くないと思いましたので腕の方を触ってしまいました申し訳ありません」
「べべべ別に私は怒こってなんかいません。むしろ感謝していますわ!では……」
そう言うと生徒会長は足早に去っていった。良かった、怒られなかったみたいだ。
「はっ!まずい、急がないとアリシア先生に怒られる!」
僕は大急ぎで自分の教室に向かった。
※※※※
「はぁはぁはぁ」
「おはようエイジ。随分と遅かったじゃないか?」
「ちょっとした出来事がありまして、それより今日は何かあるんですか?」
「あると言えばイエスだ。まぁ取り敢えずエイジ、席に座れ」
僕は自分の席に座る。とはいえこの教室は特別クラスとなっていて生徒は僕一人だけしか居ないが……
「席についたな。じゃあ紹介する。入りたまえ!」
ガラッとドアが姿を見せる……えっ!?
「じゃあ簡単な自己紹介を宜しく」
「はい!私、スノウ・ローゼンと申します!以後宜しくお願……ってこの前道案内してくれた恩人さん!?」
「なんだ。知り合いか」
これが僕を救ってくれた彼女スノウとの出逢いだった。