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color  作者: 倉本新菜
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二本目を飲み終わるころには、結構な数の友人や知り合いを見つけた。驚いたことに弟の名前まで出てきた。どうやら電話番号の登録があると、『知り合いですか?』と親切に誘導してくれるようだ。それを頼りにどんどんタップしていくと、大学時代の友達が芋づる式に出てきた。彼らの投稿をひとつひとつ読んでいくと、近況が手に取るようにわかる。卒業してからも事あるごとに集まるメンバーはいるけれど、それ以外のやつらのことは知らなかった。みんなこうやって繋がっていたんだなと今更ながら合点がいった。

 本来の目的であった元カノ検索は、早々に失敗に終わっていた。なぜ、彼女がフェイスブックに登録していないという可能性を無視していたのだろう。今日の今日まで、始めていなかった僕という存在がありながら。もしかしたら結婚していて苗字が変わったのかもしれないと思い直してみるも、それでも同じことだ。淡い期待を抱いてビールを二本も空けてしまった自分がむなしかった。

 すると今度はスマホの上部に四角で囲ったfの文字が表示された。矢野君だった。『申請あざーす。明日もがんばりまっしょい』と幾分能天気なメッセージだった。

 こういうものだったのか。たぶん僕はツイッターと勘違いしていた。ツイッターも未経験だが、おそらくこっちの方が僕に向いているような気がする。

当面の暇つぶしができたな、と僕はアルミ缶をぎゅっと握りつぶして、一応分別しているゴミ箱に投げ入れた。

 翌朝、市役所までの道を歩いていると矢野君が「渡海さーん」と近寄ってきた。おはようございます、暑いっすね、と言いながら本人は結構涼しそうな顔をしている。どこかで聞いたことのある表現を借りれば、『シュっとしたイケメン』である。

「渡海さん、めっちゃイカした名前っすね。知りませんでした。」

「いや、矢野君こそ。二年も一緒に働いてたのに、知らなかったなんて。」

 当然、知らなかったのではなくてお互い興味がなかっただけだ。一回くらいどこかで知る機会はあっただろう。

「『ワタガイカイシン』って、名前は知ってましたよ、けど漢字がかっこいいっすね。言われたことないですか?」

 確かに、言われたことはある。渡海櫂進。でも画数が多すぎて学生時代は嫌だった。あと、どこの国の方ですか、とも。海の男ですか、もあったな。

「『銀次』の方がよっぽどイカしてるさ。」

「いぶし銀の銀次っすからね。」

「酔ってなくても言うんだ。」

 結構珍しい名前でよかったと、昨日思った。もし彼女が僕のようにふとフェイスブックを始めてみようと思い、ふと昔の彼氏である僕の名前を検索してみようとした時、

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