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color  作者: 倉本新菜
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4

矢野君と宮部さんは、どちらも自分のスマホを眺めているのに共通の話題で話が進んでいる。なんとも不思議な光景だ。

「何の話?」

 水をひとくち飲んでから聞いてみると、矢野君が「これ」と画面を見せてくれた。

「フェイスブックですよ。あ、そういや渡海さん、申請してもいいですか?」

「フェイスブック?申請?」

「え、もしかして知らないですか」 

「いや、あ。フェイスブックね、フェイスブック」

 宮部さんが、うそ、と呟いた。あたかも運ばれてきた三つの丼に驚いたかのように。どうやら彼女にはバレたようだ。

「じゃあ後で申請しますね。僕、行ったお店のことしか書いてませんけど」

 そう言って、タレでつやつやした黒毛和牛丼をカメラに収めた。

「絶対、元彼とか元カノ検索しますよね、みんな。あれ何でだろう」

「矢野君はしないの?元カノ検索」

「いや、しますよ。普通に。結婚してて軽くへこみましたけど。」

「矢野君の年齢で結婚って、早いよね。ねえ、渡海さん?」

「確かに。早いね」

 ハラミ丼についてきたテールスープを啜って、自分の年齢から六歳引いてみた。確かに若い。

「そういう渡海さんも、一回くらい検索したでしょ?あれ、そういえば渡海さん彼女いましたっけ?」 

矢野君には、気を遣うという機能が欠落しているのだろうか。それともこの天真爛漫さが彼の長所なのだろうか。

「いや、残念ながら、最近は」

宮部さんがカルビクッパのワカメをぺろーんと箸で挟んだ。しばらく眺めてから口に運んだのは、僕と矢野君の会話に意識が向いているからだ。

それから最近宮部さんが習い始めたというフラダンスの話や、近くにできるらしいショッピングモールの話をしていると昼休みの五十分があっという間に近づいてきた。ハラミ丼は、値段の割にボリュームがあって、また来ようと思った。 

午前中と同じような午後、一瞬ひとけがなくなる時がある。だからといって暇そうにするわけにもいかず、もちろんスマホを手にするなど論外だ。でも気になる。さっきの、フェイスブック。

「あのさ、さっき矢野君が言ってた、」

「フェイスブックですか?」

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