タヌキの家
タヌキが家を建てました。
新しい家があまりにも嬉しくて、タヌキはそれを誰かに見せたくて仕方がありません。
そうして一言、ただ一言、この家を褒めてくれさえすれば、それだけでタヌキは十分満足なのです。
そのときです。
“コンコンッ、コンコンッ”
新しい家の玄関の扉を、誰かがノックする音が聞こえてきます。
「は~い」
タヌキはすっ飛んで行くと、扉をそぉ~っと開けます。
するとそこには…。
一匹の真っ白なウサギさんがいるではありませんか!
タヌキはびっくりしましたが、ウサギさんが
「とても立派な家ですね」
と言ったので、嬉しくなってしまい、ウサギさんを家に招き入れてしまいました。
「良かったら、そこの椅子にでも、どうぞどうぞ」
タヌキはウサギさんを、四人掛け丸テーブルの椅子の一つに座らせると、冷蔵庫の中にあるウサギさんの大好きなニンジンジュースのことを思い出して嬉しくなりました。
するとまたもや
“コンコンッ、コンコンッ”
誰かが扉を、ノックする音が聞こえてきます。
「は~い」
ウサギさんに、ニンジンジュースを出す暇もなく、タヌキはすっ飛んで行くと、扉をそぉ~っと開けます。
するとそこには…。
一匹のリスさんがいるではありませんか!
タヌキはびっくりしましたが、リスさんが
「とても素敵な家ですね」
と言ったので、また嬉しくなってしまい、リスさんを家に招き入れてしまいました。
「良かったら、ウサギさんの隣りの椅子にでも、どうぞどうぞ」
タヌキはリスさんを、ウサギさんが座っている隣りの椅子に座らせると、冷蔵庫の中にあるリスさんの大好きなクルミパイのことを思い出して嬉しくなりました。
タヌキが冷蔵庫の中にある、ニンジンジュースとクルミパイを取りに行こうとしたとき、またもや
“コンコンッ、コンコンッ”
誰かが扉を、ノックする音が聞こえてきます。
「は~い」
ウサギさんとリスさんに、ニンジンジュースとクルミパイを出す暇もなく、タヌキはすっ飛んで行くと、扉をそぉ~っと開けます。
するとそこには…。
一匹のブタさんがいるではありませんか!
タヌキはやっぱりびっくりしましたが、ブタさんが
「とてもかっこいい家ですね」
と言ったので、またまた嬉しくなってしまい、ブタさんを家に招き入れてしまいました。
「良かったら、リスさんの隣りの椅子にでも、どうぞどうぞ」
タヌキはブタさんを、リスさんの座っている隣りの椅子に座らせると、冷蔵庫の中にあるブタさんの大好きな雑穀ケーキのことを思い出して嬉しくなりました。
建てたばかりの新しい家に、新しいお客さんが三人も!
さぁ、おもてなしの始まりです。
タヌキは台所にすっ飛んで行くと、冷蔵庫の中を確認します。
ウサギさんの大好きなニンジンジュース。
リスさんの大好きなクルミパイ。
ブタさんの大好きな雑穀ケーキ。
そして、タヌキが大好きなブルーベリータルト。
それらをそれぞれ四人分、器にきれいに盛りつけると、みんなが待っている丸テーブルの部屋へ…。
タヌキが最後の椅子に腰掛ければ、ちょうど四つの椅子に人数分、ぴったりです。
タヌキはコホンッと咳払いをすると、ニンジンジュースが注がれたグラスの一つを手に持って
「本日は、建てたばかりの新しい家に来てくれて本当にありがとう。そして、この家を褒めてくれて、とても嬉しいです。心ばかりの料理ですが、決して木の葉を使って作った偽物の料理ではありません。なので安心してたくさん食べて下さい」
そう言うと、ニンジンジュースの注がれたグラスを上に持ち上げて
「乾杯!」
と言いました。
ウサギさんも、リスさんも、ブタさんも、まるでそれを待っていたかのように、ニンジンジュースの注がれたグラスをそれぞれ手に持って
「乾杯!」
と同じように言うと、食事を始めます。
ムシャムシャ…。
カリカリ…。
ブーブー…。
パクパク…。
テーブルの上の料理は、どんどん無くなっていきます。
「やっぱり、ブルーベリータルトは最高だ!」
タヌキがそう言うと
「奇遇ですね。私はウサギですが、やっぱりブルーベリータルトが大好物です」
とウサギさんが頷きながら、そう言います。
するとリスさんも、同じように頷きながら
「実は私も、ブルーベリータルトが大好きなんですよ」
と言います。
するとブタさんも、驚きながら
「実は私もです。ブルーベリータルトが一番好きです」
と続けます。
タヌキは、そんなみんなの顔を見回すと
「私たちは、とても気が合いますね」
そう言って微笑みます。
ウサギさんも、リスさんも、ブタさんも、その言葉に頷きながら微笑みます。
…でも、そんな微笑んでいる四人のしっぽからは、みんな同じ焦げ茶色のふさふさとしたタヌキのしっぽが生えて、静かに揺れています…。
もちろん誰一人、そのことには気がついていませんでしたけれど。
終
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