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第八話 帰還

皆さんのおかげで日刊ランキング1位になる事が出来ました。

感謝の気持ちと致しまして、急きょ第八話を投稿させて頂きます。

本当にありがとうございました。

 商会の建物を出ると、辺りはすでに日が暮れかかっており、夕日が木々を赤黒く照らしていた。

 転移部屋を探して横を見れば、言われた通り入り口のすぐ隣に扉が見える。

 ただその扉をさえぎる様に、数人の男達がそこにたむろしていた。


 薄暗くてよく見えないが、所謂いわゆるチンピラみたいな連中だ。 その中のリーダーらしき男が、俺に話し掛けてきた。

「よう兄ちゃん、上物の奴隷を連れてるみたいじゃねぇか」

 何だこいつら、鬱陶うっとうしい。 こっちは日が暮れる前に塔に帰りたいっていうのに。

 フィーネがビクッと体を震わせ、俺の後ろに隠れる。 男達が怖いのだろう、俺のローブを握る手が震えていた。


 男はなおも話しかけてくる。

「へへっ、俺達もご相伴しょうばんにあずかりたいねぇ」

 ようするにあれか、こいつら俺が高そうな奴隷を三人も連れて出てきたのを見て、それを奪おうって腹か。

 ラーカイル商会の前で騒ぎを起こしたら、警備の者が飛び出して来るだろうに何考えてんだこいつら。


「ご主人様……」

 サクヤが俺の右隣に並ぶ。 俺の手に自分の腕を絡めると、警戒するように男達を見た。




 何も言わない俺に痺れを切らしたのか、男は声を荒げナイフを取り出した。

「おい、死にたくなけりゃ奴隷を置いて立ち去りな!」

 その声を合図に他の男達も動き出す。 全部で六人のチンピラが俺達を取り囲んだ。


「ご主人様、どうしましょう」

 レティシアが俺の左隣に並ぶと、俺の手を取り不安げに聞いてくる。

 俺は三人を安心させるように頷いた。

「大丈夫、俺にまかせて」

 街中の、それも商会の前で流血沙汰りゅうけつざたは不味いよな……。 よし、あれでいくか。


「囲まれてるのに余裕ぶっこきやがって。 俺達の――」

 ――言わせねぇよ!

「原始の感情たる恐怖よ、他者の心の闇を呼び起こせ」

 男のセリフをさえぎって、恐怖フィアの呪文を唱えた。


 ――術式が発動し、効果範囲内の敵の恐怖心が増大されていく。

「駄目だ、こんな奴等に勝てるわけねぇ」 ――手が震えて武器を落とす者。

「うわああああ、来るな、来るなぁ!」 ――戦意を失い逃走する者。

「い、いやだ。 もうおしまいだ……」 ――身がすくみ動けなくなる者。

 もはや男達は、誰一人としてまともに戦える者はいなくなった。




「さあ、今の内に転移部屋に入ろう」

 俺はチンピラ達が戦闘不能になったのを確認すると、三人を抱きかかえるようにして転移部屋の中へ入った。

 扉を閉じると、三人が俺に抱きついてくる。


「さすがです、ご主人様」

 サクヤは誇らしげに俺を見た。

「今の魔術すごかったです! 初めて見ました」

 レティシアは俺の術式を見て興奮しているようだ。

「ご主人様、怖かったです」

 フィーネは怖さを振り払うかのように俺にしがみついた。


「よし、このまま転移するから、そのまましがみついててくれ」

 俺は三人に抱きつかれたまま、空間転移テレポートの術式を発動させる。

 魔方陣が光を放った瞬間、俺達は転移部屋から消え去った。




 一瞬の後、俺達は塔の転移部屋に立っていた。

 部屋の中は薄暗く、小窓から夕日が僅かに差し込んでいるおかげで、三人の顔が辛うじて判別できる。

 静けさの中で俺と三人の息遣いきづかいだけが聞こえていた。


 今日も魔術を使いすぎたようだ、精神の消耗が激しい。 これではライトの術式を使っただけで気絶しそうだ。 

 完全に暗くなる前に照明を何とかした方がいい。 俺はポーチからソーラー式のペンライトを取り出すと明かりをともした。


「ご主人様、それは何ですか」

 ペンライトを見て、驚いたようにレティシアが聞いてきた。 他の二人も興味深げに眺めている。

「まあ、魔術用具マジックアイテムの一つかな」

 今はまだ、三人に日本の事を伝える時じゃない。 俺は当たり障りのない答えを返した。


 転移部屋を出ようとすると、三人がきょろきょろと辺りを見回しているのに気付いた。

「みんな何を見てるんだ、なんにも無いだろうに」

「これが有名な大賢者の塔だと思うと興味深くて、つい見てしまいます」

 サクヤが答えると、他の二人もうんうんと頷いている。


「塔の案内は明日するから。 今日はもう遅いし、応接間に行って晩御飯を食べてから、寝ることにしよう」

 俺は三人をともなって応接間へと向かった。




「明かりはこれで大丈夫だな」

 応接間へやって来ると、まずは部屋の壁にある荷物を掛けるフックにペンライトをぶら下げ、簡易照明とした。

「みんな適当にソファに座ってくれ」

 三人を促しソファに座らせる。 ローブは脱がせてソファの背もたれに掛けさせた。 


 テーブルの上には朝食べた食料と水が残っていた。

 食料とは具体的に言うと、サンドイッチやハンバーガー等のパン類である。

 幸い塔のあるルソス森林は一年中涼しい気候で、食料の日持ちはいいと師匠に聞いている。 問題無く食べられるだろう。


 俺達は食事を始めた。 三人に食べるように勧めると、遠慮がちに手に取る。

 最初は恐々と口に入れようとしていた三人だが、実際に食べてみるとその美味しさに目を見張った。

「ご主人様、これ美味しいです!」


 フィーネが尻尾をパタパタと振りながら俺に報告してくる。 手にはハンバーガーを持ち、口にはベットリとケチャップが付着していた。

「そうか、口にあってなによりだ」

 ハンカチでフィーネの口を拭いてやりながら答える。


「このサンドイッチというのが美味しいですね」

「中の野菜も瑞々(みずみず)しくて、とても食べやすいです」

 レティシアとサクヤはサンドイッチが気に入ったようで、とても美味しそうに食べてくれた。




 和やかな空気のまま食事が終わる。

「みんな食べ終わったな、それじゃ寝室に行こう」

「「「はい、ご主人様」」」

 フィーネは笑顔で、レティシアとサクヤは顔を赤らめてそう答えた。


 俺は三人を連れて寝室へとやって来た。 まずは応接間と同じように、壁のフックにペンライトを下げて照明の代わりにする。

「とりあえず、みんなベッドにいこうか」

 寝室のベッドは、師匠が何に使っていたのか知らないが特大サイズだ。 四人が乗ってもなおスペースに余裕があった。


「みんな覚悟は出来てるな。 今から夜伽をしてもらう」

 身請けしたその日に奴隷を抱くという事を、俺は以前から決めていた。

 俺は生った木の実を他人に取られたり、生った事を知らずに腐らせたりといった愚行ぐこうは決してしない。

 正直精神的な疲労はまだ残っているが、食事をして少しはマシになったし、気合でどうにかする事にした。


 三人は俺の発言を聞いて、三者三様の態度を見せた。

 レティシアは俯いて顔を真っ赤にさせている。

 フィーネはキョトンとした顔をしていた。 良く分かってないようだ。

 サクヤは頬を朱に染めながらも、俺をじっと見詰めていた。


「「「ご主人様……」」」

 三人は覚悟を決めたのか、俺にそっと寄り添ってきた。

 簡易照明の灯りに照らされて、正面の壁に映し出された四人の影が絡み合う。

 ひっそりと静まり返った塔に三人の娘の嬌声が響き渡った。 享楽の宴は夜が明けるまで続けられた。




「――もう朝か」

 気だるげに俺は天井を見上げた。 三人は疲れ果て裸のまま俺の側で眠っている。

 俺の右腕がサクヤの、左腕がレティシアの胸に挟まれているがあえて考えないようにする。

 俺の上に乗っかっているフィーネは……もういいやフィーネだし。


 しかしハーレムとか簡単に考えてたけど、大変だなこれ。 体力的にもだけど、三人を平等に扱わないといけないし。

 まあでも気苦労も多いけど、その分見返りも大きいしな。 やれるだけの事をやるだけだ。

 俺は三人の体温を感じながら、深い眠りへと落ちていった。

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