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第三話 ラーカイル商会

 俺は広場にいた人にラーカイル商会の場所を尋ねた。

 ラーカイル商会はこの都市で一番大きな商会らしく、すぐにその場所を教えてもらった。

 広場から橋を渡って別の巨木へ渡り、さらにもう一つ橋を越えた先にその商会はあった。


 商会の建物は巨木をぐるりと一周する形で建てられており、どうやらその巨木全部が商会の敷地らしい。

 さすが街一番の商会といった所か。

 建物の中に入ると、中は意外に広く床には豪華な絨毯が敷き詰められており、その奥には受付があった。


 俺が受付に行くと、若く可愛らしい受付嬢がにこやかに微笑んだ。

「ようこそラーカイル商会へ。 本日はどういったご用件でしょうか」

 その会社を知るには受付嬢を見ればいい、とはどこで聞いた言葉だったか。

 確かに大手商会に相応しい受付嬢の見た目と対応である。


「私は魔術師ローランの弟子で、魔術師のリョウと申します。 代表はいらっしゃいますか? 師匠からの紹介状を持参しました」

 俺は返答しながら魔術師の指輪を見せ、さらにポーチから紹介状を取り出すと受付嬢に手渡した。

 紹介状は前もって師匠に書いてもらっていた。

 紹介状には師匠の全てを俺が引き継いだ事と、師匠の時と同様の取引を望む旨が書かれている。

 

「魔術師ローラン! あの大賢者の……」

 受付嬢は驚きに目を見開くと、震える手で紹介状を胸に抱きかかえた。

「少しお待ち下さい、代表を呼んでまいります!」

 そう言い残し奥の部屋へ走っていった。 そうとう慌てているようだ。

 というか名前を出しただけであの慌てよう。 聞いてた以上に師匠って偉いみたいだな、大賢者って呼ばれてたし。


 いや、そんなことを考えてる場合じゃなかった。人が居なくなった今が好機だ。

「真実を聞き取る耳よ、他者の心の声を伝えよ」

 俺は魔方陣を描きながら呪文を唱え、読心リードマインドの術式を展開した。


 読心リードマインドは対となる精神防護マインドブロックと違い、術式の維持に精神集中を必要とする。

 その為使う直前に発動させなくてはならず、使いどころが難しい術式の一つであった。

 だがここから先は、今後の人生を左右する大事な局面だ。 リスクを犯す価値はあった。




 しばらく待つと、受付嬢を引き連れて部屋の奥から女性がやってきた。

 年の頃は二十台半ばだろうか、とび色の長い髪を後ろでまとめ、姿勢良くこちらへと歩いてくる。

 こちらを見る利発そうな眼差しは、代表というより有能な秘書というおもむきであった。


「お待たせしました、代表のミレイ・ラーカイルと申します。 魔術師リョウ様、このたびは私共の商会にお越しいただきまして誠にありがとうございます」

(この方が大賢者のお弟子様か、ずいぶんと若いわね)

 実際に話している言葉とは別に、読心の術式によって心の声が聞こえてくる。


「ラーカイル商会では様々な物を取り扱っております。 本日は何かご所望しょもうでしょうか」

(上得意様だわ、丁重におもてなしをしないと)

 俺は代表のミレイさんを見て、にこやかに答えた。

「今日は奴隷を購入しようと思い、やってきました」


(奴隷……。 受付でする話では無いわね)

「承知しました。 それでは応接室にご案内します、商談はそちらで致しましょう」

 ミレイさんは少し考えた後でそう答えると、隣の部屋へ俺を案内した。




 応接室は先程の部屋と同じくらい広く、部屋の中央には豪華な意匠をこらした木製のテーブルと、その周りにはいかにも高級そうなソファがあった。

 ミレイさんは俺に一番奥のソファをすすめると、本人はテーブルを挟んで反対側に腰を下ろした。


 俺たちは真正面に向かい合うと、すぐに商談を開始した。

「さて奴隷といいましても、その資質や用途によって様々です。 リョウ様はどの様な奴隷をお探しですか?」

(大賢者の塔を引き継いだとなるとその運用は大変なはず、労働力をお求めかしら。 それとも若い男性だから愛玩用?)

 ミレイさんの思考がめまぐるしく働き、客の求める奴隷を推測する。

 俺の答えは決まっていた。 もう何年も考え抜いて出した結論だ。


「最高の女性をお願いします」


 ミレイさんは一瞬ポカンとし、そして悩ましい表情を浮かべた。

(簡単なようで一番難しい要望だわ。 下手な奴隷はお出しできない)

 ミレイさんは俯いて考え込むと、何かを決心したのか真剣な顔で俺に向き直った。

(あの娘達しかないわね)


「そういうご要望でしたら、それにふさわしい奴隷が五人います。 いずれも帝国、いえ大陸でも五本の指に入るかという娘達です。 しかしながらそれぞれに深い事情がございまして、そのご主人様を選ぶにあたって、慎重を期してまいりました。 幸いにもリョウ様は大賢者様のお弟子様であり、また紹介状もございます。 リョウ様にはご主人様の資格がある、と私は考えます」


 今度は俺が驚く番だった。大陸で五本の指だって!?

「それでは五人を呼んでまいりますので、少々お待ち下さい」 

 そう言い残し、ミレイさんは俺に一礼して立ち上がると、奴隷達を連れてくる為に部屋を退室した。

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