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そう遠くない未来。  作者: 薄桜
葵×聡太
6/26

私と弟と友人

「葵×聡太」の6話目です。

ではどうぞ。

以前に一度、図書室で借りて読んだ本を、この間自分で買ってしまった。

アメリカの恋愛小説の日本語訳。

ストーリーにドキドキしながら読み進め、返すのが惜しくなる程はまってしまった。

ハードカバーの少し値の張る本を、それでも、おこづいかいから出したお金は惜しくなかった。

そして今、二度目の本は、その美しい言葉で私を魅了している。

色々な日本語の表現がある中で、この訳は見事な言葉を選んで纏められていると思う。

それが、この翻訳家の腕・・・っていう事なのかもしれない。


紙に並ぶ文字を目で追って、少しうっとりしていたら、不意にノックの音がして現実に引き戻された。

「はい?」

邪魔したのは誰よ? と、少し不満に思いながら返事をすると、

「ねーちゃん・・・ちょっといいか?」

と、息の上がった弟が、弾む呼吸を抑えながら顔を覗かせた。

カーテンの向こうはもう暗くなっているけど、航はまだ制服のまんまで。

肩にはカバンがかかっていた。

「何? 航どしたの? 今帰りって、遅いじゃない。」

「まぁな。」

いつもふざけた調子の弟は、何か今日は違ってて・・・いつもなら何の用なのかと先を急かす所だけど、今はそうせずに言葉を待った。

「あのさ、その・・・良かったな、聡太とうまくいって。」

「な、何、急に?」

予想してない事を・・・元々何も予想なんかしてなかったけど、聡太との事を言われて顔が熱くなるのを感じた。

あ、今ちょっと笑ったでしょ?

でも、いつもみたいにバカにする感じじゃなくて・・・見守ってるような、何か大人っぽい表情をしてて、どうも調子が狂う。

「こないだはびっくりしてさぁ、ほら、俺・・・まだちゃんと言ってなかったからさ・・・そんだけ。」

「航?」

・・・本当にどうしちゃったの航?

「ま、両思いおめでとう。・・・随分かかったけどな。」

そして、ドアが閉まった。

・・・随分って何?

え、ちょっといつから?

いつから航はそんな見守るような立場にいたの?

・・・ねぇ、本当にいつからなの!?



「・・・そう、航そんな事言ったんだ。」

翌朝、初めて聡太と二人だけで学校に向かいながら、昨夜の弟の話をした。

聡太は呆れたとも、ホッとしたともとれる表情を見せた後、薄く笑った。

「航はずっと知ってたんだよ。葵姉が意識するよりずっと前から。」

「・・・そうなの?」

見上げて聞き返すと、

「うん。実は・・・皆『(みんな)なんだけどね。・・・僕らの周り。」

と、さらに驚かされた。

確かに私も美晴から突付かれたけど・・・。

(みんな)!?」

「そう。航だけじゃなくて、美晴さんも、朋ちゃんも、うちの妹まで。」

・・・そうなんだ。

今迄ずっと、そういう目で見られていたのかと思うと、私はとても恥ずかしくて、言葉が出てこなかった。

すると、聡太は首ごと顔を背けて、

「見てると苛つくから、さっさとどうにかしろって・・・実は散々言われてたんだ。」

って、耳を真っ赤にして言うから、私は思わず笑ってしまった。

・・・本当は、人事じゃないんだけど、つい・・・可愛いって思ってしまったから。



進路指導室で近くの大学の資料を出してもらって、片っ端から眺めた。

第一希望は近くの大学。

家から通える事が必須条件。

でも、さすがに希望の学部くらい選ばないと・・・って。

だけど、正面にいる友人が、気になって気になって仕方がないのよね・・・。

「美晴どしたの? 朝から元気無いけど?」

同じように大学のファイルを出してもらった美晴は、机に顎ひじをついたまま生気の無い目をしていた。

普段エネルギッシュな分、こんな姿は稀で・・・また何か悩みでも抱え込んでるのかな?

って気になった。

だからと言って、美晴がその悩みを打ち明けてくれるなんて事は無いんだけどね。

毎回一人で何かを抱え込んで、気が付けばいつの間にか乗り越えていて、いつも通り。

美晴は、誰かに寄りかかるような事をしない。

強いのか、不器用なのか・・・どちらにしても、水臭いなって思う部分はある。

「・・・お腹痛い。」

何? 生理なの? ・・・ならどうにもできないわね。

「あー、頑張れ。」

すっごく気にかけた分、その返答にがっかりしてしまった。

「何頑張ったら痛くないの?」

そういえば、美晴は生理痛がいつもひどいらしい。私は面倒だなとは思うけど、痛みなんてそんなに無いから、美晴を見てると不思議な気分になる。

「んー、気力?」

「そんなものでどうしろと・・・? とりあえず、このファイルの学校名メモしといて、お願い・・・元気になったらまた調べるから、今の私には無理だ・・・。」

ヨロヨロと上げた手でファイルを示している。

まったく、そんな弱々しい姿見せられたら、そのくらいの協力くらいしてあげなきゃって気になるじゃない。

「仕方無いわね・・・貸して。」

美晴はファイルをこっちへ押し出すと、力尽きたようにテーブルに突っ伏した。

本当、大変なのね。

そして、ふと物足りなさを覚えた。

「そういえば、今回は『生理なんかいらない』って言わないのね?」

毎回そう愚痴ってるのに、今日はまだその言葉を聞いていない。

「・・・あー、そうだね、」

美晴まで今更気付いたかのような気だるそうな声で呟くと、少し動いて姿勢を変えた。

・・・本当に大変ね。

美晴には悪いけど、私は生理軽くてよかった。

って考えながら、学校名を写し終わったファイルを押し戻した。


以前に書いた生理ネタは、これ(本当は次章のここ)の前振りでした。

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