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そう遠くない未来。  作者: 薄桜
朋花×航
25/26

正義は勝つ!

「朋花×航」の7話目です。

ではどうぞ。

翌朝、一人で教室に入って来た航を捕まえて昨日の紙を渡した。

「・・・何で果たし状?」

「兄貴から航に渡してくれって、渡されたんだけど・・・一緒に成敗しよう。」

「はぁ?」

何がどうして果たし状になるのか、まったく理解してないながらも、とりあえず紙を開いていた航は、私の言葉に思わず手を止めた。

「昨日航に言われた事が納得できないみたいだから、納得させよう。そしてシスコンを改めさせよう。」

「・・・はぁ、そういう事か。」

再び手を動かして中の紙を開くと、表同様に筆ペンで、勢い良く殴り書きされていた。


--------------------------------------

果たし状


 安田殿


 土曜午後六時半 河川敷にて決闘を申し込む


 うちの妹に手を出した罪は重い

 覚悟して待っていろ


                石川和樹

--------------------------------------


「・・・確かに、堂々としたシスコン宣言だな。」

読み終えて、声を殺して笑う航に、

「という事だから、いい加減正しい道に戻してやろう。」

それから私は、大バカな兄貴をやり込める計画を航に語った。



待ち合わせは6時半に河川敷。

この時間の設定は、和樹のバイトが終わった後だ。

正確には広い河川敷のどこなのかって、本当は突っ込みたい所だけど、階段のある所を航と二人で下りて、和樹が来るのを待った。

昼に色と々動いたから、こっちの準備は万端だ。


日が傾いて冷え込んできた河原で、時間つぶしに石を川に向かって投げて遊んでいると、甲高いブレーキ音が響いた。振り仰ぐと和樹が土手の上で自転車を止めていた。そして、きちんとワイヤーの鍵をかけてから一気に階段を駆け下りてきた。

携帯で確認した時間は6時32分。2分の遅刻だ。

「おぅ悪い、待たせたか?」

そのフレンドリーさは決闘らしからぬ雰囲気で・・・まぁ素の兄貴だからどうしようもないけど。

「・・・和樹、決闘って感じじゃないじゃん。」

「そっか? ・・・まぁノリだし。実際に喧嘩しようって気はないんだ。」

と、目を背けた。私の敵対発言に、引っ込みが付かなくなったという所だろうか?

「じゃぁ何で果たし状?」

今まで側にに座り込んでた航が立ち上がりながら聞くと、一転して険悪な様子で牙を剥いた。

「ノリだっての、今言っただろ!?」

私と航でここまで態度を変えるとは・・・我が兄ながら情けない。

あまりにも器が小さ過ぎる。

「・・・別に何でもいいけどさ、じゃぁ結局何やんの? 話でもすんのか?」

間違いなく和樹に呆れてる航は、頭を掻きながら私の隣に並び、和樹もそれにすぐさま反応を見せた。

「妹に寄るな、近過ぎだ。」

「本当に呆れるほどシスコンだな・・・。朋花、とっととやっちまおう、見てると情けなくて腹が立つ。」

「あ、あぁうん。」

珍しく気が立ってる航に驚きながら、そう答えてカバンを探り、一枚の写真を引っ張り出した。

「何話してんだ、離れろって言ってんだろ?」

その言葉に、私も苛っとした。

「あのさ和樹、いい加減にしてくんない? 私かなり迷惑してんの、分かる?」

「・・・何が?」

まったく分かってない、意地でも分かろうとしない兄貴に、いい加減腹を立てて、写真を目の前に突き出して先を続けた。

「竜太くんに確認したんだけど、和樹は白根ゆかりって人が好きなんだって? で、今同じ学校に通ってるんだってね、いきなり料理人になるって言い出して驚いたけど、そっか、そんな理由だったんだね?」

テンション低く、トーンも低く、人間あまりに腹が立つと大きな声は出ないんだなと、私は身をもって知った。

昼に和樹の友達の竜太くんに会って、詳しい話を聞いて、この写真を借りた。ちっちゃくて可愛い感じの、守ってあげたくなるようなタイプの人だ。

写真を奪い取って、うろたえる和樹を余所に、私は言いたい事をこの際だとばかりに吐き出した。

・・・本当は、いつも言ってる気がするけど、これはまだ言った事が無い。

「妹の事より自分の事に集中しなよ。ましてや好きな子いるんなら、本当そっちに必死になってよね。」

返す言葉の無い和樹の様子に、

「そこまで言ってやんなくても・・・。」

と、何故か航がフォローに回った。

そんな仏心出さなくても、一度これでもかってほどやっちゃえば改めると思うのに。そう思いながら聞いていると、最終的には結構キツイ内容だった。

「最近うちのねーちゃんにも彼氏ができてさ、その気持ち、俺にも分かんない訳じゃないんだよな。けど・・・だからこそ、今のあんたはみっともないと思う。」

苦笑しながらそう話し始めたそれは、自分の事で。

「ねーちゃんはねーちゃんで、ちゃんと選んだ筈なんだ。俺がどうこう言う問題じゃねえ。むしろ、やっとくっついたって感じなんだけどさ。もし問題があれば、そん時考えればしいしさ、だから、朋花の事は俺に任せてくんない?」

「偉そうに…。」

和樹はそう言ったきり、それ以上言葉は続かなかった。

さすがのバカ兄貴でも、反論はできなかった。誰も自ら負けを認めるようなマネはしたくないだろう。

・・・やるな航。


だから私が言葉を継いだ。

「・・・取り合えず、今日は終わりにしよ。私お腹空いちゃった。」

一つしかない答えに気付いていても、たぶん和樹は、まだ素直にはなれないから。

追い詰められて、内心で葛藤し・・・まだしばらく声には出せないだろう。

そう、誰かが幕を引かないと、この場は収まらないから。


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