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そう遠くない未来。  作者: 薄桜
朋花×航
24/26

バカ兄貴と決心

「朋花×航」の6話目です。

ではどうぞ。

聞き慣れた声に驚いて一歩下がって唇を離し、音と声のした方を見ると・・・やっぱり和樹がいた。

「あー和樹、やっぱりいるんだ。」

「おう朋花お帰り・・・って、そうじゃないだろ? 何でお前等、道の真ん中でキ、キスしてんだよ!?」

和樹は、急停車した自転車から降りると、ズカズカとこっちに近付いてきた。

・・・より正しくは、航の方にだ。

「何でって・・・そりゃしたいから。」

航は、本当に別人みたいになった気がする。

今から変えていけばいいって、確かに言ったけど・・・キスして変なスイッチ入っちゃったのかな?

けど、それはそれで、変に堂々としてて・・・ちょっと格好良いかもしれない。

「場所を考えろ! いや、場所だけの問題じゃないが。」

「別に、誰もいないし。」

「俺がいるだろ。」

「偶然通りかかっただけじゃん。」

「偶然でも何でも、人は通るの!」

ちょっと話の方向がおかしくて、妙な言い合いしてるけど・・・何か面白いからいいや。

どこに落ち着くか、黙って聞いてみてみよう。

「俺は気にしないけどな。」

「少しは気にしろ、恥ずかしい。」

「何で? 好きな子とキスして何が悪い?」

「悪くは・・・いやいや、うちの妹に手を出すなっての!」

「何で? 妹は妹じゃねーか。家族だけど彼女じゃない。あんたには関係ねーだろ?」

「いや、だけど・・・。」

「あんたもさ、妹追っかけてばっかいないで、自分の事考えた方がいいんじゃねーか?」・・・それがトドメだったらしい。

和樹は二の句が継げず黙り込み、その隙に航は私の手を引いて歩き出した。

その言葉は、私が「シスコンやる?」と、からかった・・・その答えのような気がした。

和樹に向かっていう事で、自分に言い聞かせてるみたいな・・・ちょっと違うな。

気付いて認めた事を言葉にした? そんな感じかもしれない。



朋花を家まで送り届けて、走って家に帰った後。

自分の部屋に戻る前に、まずねーちゃんの部屋に寄った。

ドアをノックをして返事を待つ。

・・・これやらねぇと、ねーちゃんに酷い目に合わされるからな。

「ねーちゃん・・・ちょっといいか?」

ドアを少し開けて隙間から顔を覗かせると、ねーちゃんは机で本読んでたらしい。

振り返ったねーちゃんは、意外そうな表情を見せた。

「何? 航どしたの? 今帰りって、遅いじゃない。」

「まぁな。」

まだ何もちゃんと言ってなくて、自分のためにも言っとかねーとって、朋花の兄ちゃん見て思った。あれは、下手したら俺の姿かもしれねぇなって。

・・・でも、絶対ああはなりたくない。

だから、けじめをつけるためにここにいる。

「あのさ、その・・・良かったな、聡太とうまくいって。」

「な、何、急に?」

赤くなったねーちゃんがおかしかった。

ねーちゃんがきれいなのは俺だけじゃなく、みんな知ってて、すっげー怖いのも一部の人間はよーく知っている・・・特に親しいヤツなら尚更だ。

けど、意識してんのかどうか分かんない頃から、いつの間にか聡太だけは特別扱いになってた。

聡太の方は、分かりやすかったけどな。聞いたらあっさり認めたし。最終的に開き直るんだよ、あいつは。

・・・あれから何年経ったかな?

どっちにしろ、やっとだ。

「こないだはびっくりしてさぁ、ほら、俺・・・まだちゃんと言ってなかったからさ・・・そんだけ。」

「航?」

「ま、両思いおめでとう。・・・随分かかったけどな。」

そう言い残してドアを閉めた。

よしっ、これで俺は気が済んだ。

・・・後は好きにやってくれ。



突然ドアが開いた。

いつもいつも勝手に入ってきて・・・ノックぐらいしなよ。

・・・と、言う間もなく、ズカズカと勢い荒く入ってきた和樹は、表に字の書かれた白い紙を私の前に置いた。

「朋花、これ安田に渡せ。」

見上げると鼻息が荒く、目の力が強い。おまけに薄っすら笑ってて・・・なるほど、この顔は勢いで悪乗りしてるな。

「和樹・・・芸が細かいね。これ筆ペンで?」

「あぁ、やる気満々な感じがするだろ?」

白い紙・・・コピー用紙の四方を折り畳んで、たぶん別の紙を包んでいる。

表には、荒々しさを表すようにか、勢いよく大きな字で『果たし状』と書かれている。

「所で何する気?」

「果たし状っていや、決闘だろ? 言われっ放しで黙ってられるか。」

そっか、口で勝つ気無いんだ・・・。

完全に和樹の負けだと思うけど、認めるのが嫌なんだな。

・・・わが兄貴ながら面倒なヤツだ。

「航の反応が面白そうだから、渡すのは構わないけどさ・・・私は和樹の見方なんか絶対にしないからね?」

顔に浮かぶ笑みが消え、怯んだ和樹にさらに言葉を続けた。

「和樹があれでもまだ諦めない気なら、私は意地でもそのシスコン止めさせてやるから。」


航の存在を知ってから、エスカレートする一方の和樹の過保護振りに、かなり迷惑してたんだ。

何故か料理の道に進むと言いだして、大学受験をしなかった和樹は、調理の専門学校通い始め・・・更に鬱陶しくなった。

時間に余裕ができたせいか朝は送るって言うし、断ると距離を取ってでも付いて来てる。

バイトの無い日はいつもあの辺りで待っていて、今日の帰りに会ったのだって偶然じゃない。

「いい加減止めてよ。」って、いくら言っても聞かず。「お兄ちゃんは心配なんだ」の一点張りで、本当に鬱陶しくて仕方が無い。

それに、私に張り付いて無駄に時間を浪費してるのが、余計に腹が立つ。

本当、航も言ってたけど、もっと自分の事にやればいいのに。

・・・そっか自分の事だ。

いい事を思いついた私は「用が済んだなら出て行け」って和樹を部屋から蹴り出した。

謝ったって許してやらない。

果たし状なんて物まで用意して、航と決闘しようなんてふざけた事考えてくれたんだから・・・こっちだって、それ相応の対応をさせてもらうよ?

過剰なシスコン改めさせて、自分の事で手一杯にさせてやる。

そして私は隣の部屋の様子を探り、和樹がお風呂に向かうタイミングを待って部屋に忍び込んだ。

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