立ち聞きして気付いた事
「朋花×航」の4話目です。
ではどうぞ。
朋花に言われるまま屋上に上がった。
反対する理由も無く、反対するほどバカじゃなくて、反対できる立場じゃない。
だが、聡太の指定席の階段の裏に行こうとして、足が止まった。
生まれたときから聞いてる声が聞こえたからだ・・・そうだよ、一緒にいるんだったよな。
聡太はねーちゃんと真面目に進路の話をしているらしく、俺が割って入るのは気が引けて、そのまま立ち尽くしてしまった。
「まだ全然なのよね・・・。資料見て考えろって先生にも言われたんだけど、何見たらいいのかも分からないのよね・・・。」
「何もって、理系文系も?」
「それはさすがに文系かな? 昨日とりあえず出してみたファイルが、かなり遠くの学校でね・・・そっか、そういう事もあるんだなって、改めて思い知らされちゃった。」
「そうだね。僕も・・・ずっと前からそんな心配ばっかしてたよ。・・・ごめんね。」
「何が?」
「葵姉には、きちんと自分の道を進んで欲しい。だから、僕の事を考える必要は無いよ。・・・絶対追いつくから。例えどこに行っても葵姉は僕のものだ。距離は関係ない。」
聞こえてくる二人の声に、俺はますます自分が情けなくなった。
・・・やっぱ俺バカだな、自分の事ばっかじゃねーか。
何にも考えてなくて、チャンスが来るのを待ってただけで、時間を無駄にしてきただけの俺が、聡太と比べて羨ましがってどうすんだ?
二人は時間に終われてて・・・だから先を急いでる。
全然俺とは違うんだ。
つーか、謝るつもりで来たけど、やっぱ邪魔できねーよな・・・。
俺は苦笑しながらゆっくり後ずさると、向きを変えて再び階段に向かった。
・・・そういや、ねーちゃんがいなくなるなんて、考えた事も無かったな。
いくら恐ろしい相手でも、そうなるとやっぱりどこか寂しいと思う。
でも、どうせもっと先には、バラバラになるんだよな・・・家族っていったって、ずーっと一緒なんて事はないんだ。俺等はそのうち独立して、それぞれ新しい自分の家族を作っていくんだよな・・・その時は、あの二人は一緒になんのかな?
そう考えるのは、やっぱりどこか複雑で・・・
でも、あの二人が別れてしまうのは、もっと嫌だなって・・・勝手な事を考えながら階段を下りて教室に向かった。
「おかえり航、ちゃんと謝ってきた?」
普通通りの反応で聞いてきた朋花に、俺は首を横に振った。
「今は無理だ。さすがの俺でも、いちゃついてる邪魔なんかできねーよ。」
「そっか、それじゃ無理だね。」
朋花は苦笑して、今まで聞いていた音楽プレイヤーを止め、耳からイヤホンを外した。
「また後で謝るさ・・・で、あのさ、俺本当に反省した。」
「何を?」
「俺は本当に何もしてねーって事。」
頭を掻いて、一度深呼吸をし、隣の席を拝借して座った。
そしてそれから、上で聞こえてしまった話をした。
聡太は、遠くに離れてしまっても・・・それを覚悟の上で向き合っている。
・・・なのに俺は・・・自分が嫌になるほど情けない。
「気付いたんなら、それでいいんじゃない?」
朋花はそう言って笑った。
「今から変えていけばいいだけだよ。」
いつも通りの自信満々な言葉に、俺は少し気が楽になった。
本当、朋花はスゲーや。
「だな・・・。」
そうだ、俺は今から変わる。
朋花の頬に手を伸ばし、腰を浮かせて顔を寄せ・・・キスをした。
されたんじゃなくて、もちろん今度は俺からだ。
唇に感じる感触は、さっきと同じで温かく、柔らかい。
・・・でも、俺の気持ちは全く違う。
離れた後の朋花は、最初よりもっと赤い顔してた。
「これがその決意の証だ。」
「・・・不意打ち。」
そう言って顔を伏せるから、
「お互い様だろ?」
って言うと、お互い自然と笑い声がこぼれた。
それから、聡太はねーちゃんと登校するから、俺置き去りにされるって話をした。
すると朋花は、「じゃぁ、朝早いけど一緒に行く?」って、誘ってくれた。
・・・けど俺は、「無理、早過ぎ。」と断って、笑われた。
そんな時、聡太が戻って来た。
先に気付いた朋花に目で促され、俺は思いっきり謝った。
「聡太っ、俺が悪かった!!・・・俺自分の事ばっかでお前に嫉妬してた!」
そうだ嫉妬だ。
「一体何の話だ?」
変わると決めたんだから、さっさと謝って仲直りするに決まってんじゃねーか。
「俺、お前がねーちゃんとキスしてる写真見て、先越されて焦ってたんだ!」
俺と聡太を比べたって、何にもなりゃしねーのに、何か悔しかった。
「なっ、何大声で言ってんだお前!?」
「だから、謝ってんだ。」
聡太に八つ当たりしたり、自分じゃないような行動をした事が恥ずかしくて、申し訳なくて、それをものすごく謝りたい。そして、いつも通りに戻りたい。
「そうじゃなくてだな、頼むから僕まで巻き込むな・・・」
そう弱く言った聡太は、しゃがみ込んで頭を抱えてしまった。
「どうした聡太? 大丈夫か? 立ちくらみか?」
「違うっ!」
ふと気付けば、激しく否定する聡太と、俺達を見て笑ってる朋花と・・・。
よく分かんねーけど、いつも通りだなって・・・何かホッとした。




