表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そう遠くない未来。  作者: 薄桜
朋花×航
22/26

立ち聞きして気付いた事

「朋花×航」の4話目です。

ではどうぞ。

朋花に言われるまま屋上に上がった。

反対する理由も無く、反対するほどバカじゃなくて、反対できる立場じゃない。

だが、聡太の指定席の階段の裏に行こうとして、足が止まった。

生まれたときから聞いてる声が聞こえたからだ・・・そうだよ、一緒にいるんだったよな。

聡太はねーちゃんと真面目に進路の話をしているらしく、俺が割って入るのは気が引けて、そのまま立ち尽くしてしまった。


「まだ全然なのよね・・・。資料見て考えろって先生にも言われたんだけど、何見たらいいのかも分からないのよね・・・。」

「何もって、理系文系も?」

「それはさすがに文系かな? 昨日とりあえず出してみたファイルが、かなり遠くの学校でね・・・そっか、そういう事もあるんだなって、改めて思い知らされちゃった。」

「そうだね。僕も・・・ずっと前からそんな心配ばっかしてたよ。・・・ごめんね。」

「何が?」

「葵姉には、きちんと自分の道を進んで欲しい。だから、僕の事を考える必要は無いよ。・・・絶対追いつくから。例えどこに行っても葵姉は僕のものだ。距離は関係ない。」


聞こえてくる二人の声に、俺はますます自分が情けなくなった。

・・・やっぱ俺バカだな、自分の事ばっかじゃねーか。

何にも考えてなくて、チャンスが来るのを待ってただけで、時間を無駄にしてきただけの俺が、聡太と比べて羨ましがってどうすんだ?

二人は時間に終われてて・・・だから先を急いでる。

全然俺とは違うんだ。



つーか、謝るつもりで来たけど、やっぱ邪魔できねーよな・・・。

俺は苦笑しながらゆっくり後ずさると、向きを変えて再び階段に向かった。

・・・そういや、ねーちゃんがいなくなるなんて、考えた事も無かったな。

いくら恐ろしい相手でも、そうなるとやっぱりどこか寂しいと思う。

でも、どうせもっと先には、バラバラになるんだよな・・・家族っていったって、ずーっと一緒なんて事はないんだ。俺等はそのうち独立して、それぞれ新しい自分の家族を作っていくんだよな・・・その時は、あの二人は一緒になんのかな?

そう考えるのは、やっぱりどこか複雑で・・・

でも、あの二人が別れてしまうのは、もっと嫌だなって・・・勝手な事を考えながら階段を下りて教室に向かった。



「おかえり航、ちゃんと謝ってきた?」

普通通りの反応で聞いてきた朋花に、俺は首を横に振った。

「今は無理だ。さすがの俺でも、いちゃついてる邪魔なんかできねーよ。」

「そっか、それじゃ無理だね。」

朋花は苦笑して、今まで聞いていた音楽プレイヤーを止め、耳からイヤホンを外した。

「また後で謝るさ・・・で、あのさ、俺本当に反省した。」

「何を?」

「俺は本当に何もしてねーって事。」


頭を掻いて、一度深呼吸をし、隣の席を拝借して座った。

そしてそれから、上で聞こえてしまった話をした。

聡太は、遠くに離れてしまっても・・・それを覚悟の上で向き合っている。

・・・なのに俺は・・・自分が嫌になるほど情けない。

「気付いたんなら、それでいいんじゃない?」

朋花はそう言って笑った。

「今から変えていけばいいだけだよ。」

いつも通りの自信満々な言葉に、俺は少し気が楽になった。

本当、朋花はスゲーや。

「だな・・・。」

そうだ、俺は今から変わる。

朋花の頬に手を伸ばし、腰を浮かせて顔を寄せ・・・キスをした。

されたんじゃなくて、もちろん今度は俺からだ。

唇に感じる感触は、さっきと同じで温かく、柔らかい。

・・・でも、俺の気持ちは全く違う。

離れた後の朋花は、最初よりもっと赤い顔してた。

「これがその決意の証だ。」

「・・・不意打ち。」

そう言って顔を伏せるから、

「お互い様だろ?」

って言うと、お互い自然と笑い声がこぼれた。


それから、聡太はねーちゃんと登校するから、俺置き去りにされるって話をした。

すると朋花は、「じゃぁ、朝早いけど一緒に行く?」って、誘ってくれた。

・・・けど俺は、「無理、早過ぎ。」と断って、笑われた。

そんな時、聡太が戻って来た。

先に気付いた朋花に目で促され、俺は思いっきり謝った。

「聡太っ、俺が悪かった!!・・・俺自分の事ばっかでお前に嫉妬してた!」

そうだ嫉妬だ。

「一体何の話だ?」

変わると決めたんだから、さっさと謝って仲直りするに決まってんじゃねーか。

「俺、お前がねーちゃんとキスしてる写真見て、先越されて焦ってたんだ!」

俺と聡太を比べたって、何にもなりゃしねーのに、何か悔しかった。

「なっ、何大声で言ってんだお前!?」

「だから、謝ってんだ。」

聡太に八つ当たりしたり、自分じゃないような行動をした事が恥ずかしくて、申し訳なくて、それをものすごく謝りたい。そして、いつも通りに戻りたい。

「そうじゃなくてだな、頼むから僕まで巻き込むな・・・」

そう弱く言った聡太は、しゃがみ込んで頭を抱えてしまった。

「どうした聡太? 大丈夫か? 立ちくらみか?」

「違うっ!」

ふと気付けば、激しく否定する聡太と、俺達を見て笑ってる朋花と・・・。

よく分かんねーけど、いつも通りだなって・・・何かホッとした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ