時間とキスと苛立つ俺
「朋花×航」の2話目です。
ではどうぞ。
朝チャイムの音で、嬉しそうに出て行くねーちゃんを横目で見送り、俺はいつものように10分遅れで家を出た。
すると今日は少し真面目な顔してて・・・
まだ何かあんのか!?
「航? そろそろ置いて行ってもいいか?」
そろそろ?
「何だ急に?」
確かにいつも待たせてるっちゃー待たせてる。
だが、これも俺の思いやり。
それを教えるような野暮はしねーけどな。
「急じゃない。まだわざと遅く出てくるつもりなら、僕は葵姉と行くぞ?」
うーん、思いっきりバレてるな。
「そっか、そうだなー、それも仕方ないかなー? 今は別にわざとやってる気はねーんだけどさ、癖? もう習慣だよな。」
「・・・わかった。明日から実行に移す。」
そんなにふざけた気なんかねーのに、笑って誤魔化そうとはしたけど。
・・・こいつすぐ怒るんだよな。
「あ、ちょい、待って待って、義兄上!?」
まぁ、ねーちゃんと行きたいってんなら、そうすりゃいいって。
そうはっきり言ってくれると俺も楽だ。言い方にトゲがあるのは多少アレだが、顔見りゃしょうがねーかなーって思える。
「いいんじゃねーか? 別に俺に気を使う必要はねぇって、」
やたらと早く歩く聡太に小走りで追い着き、余裕の笑みをもって聡太の肩を叩いた。
「俺は、んな事干渉するほどシスコンじゃねーよ。」
そうだ、俺には朋花がいる・・・シスコンなんかじゃねーんだ!!
「おーい、聡太くーん、こっちこっち。」
知った声につられて教室の入り口を見ると、美晴が聡太を呼んで手招きをしていた。
HRが始まるより前の時間だ。
聡太は心底嫌そうな顔してて・・・何か面白そうだな。
そう思って、聡太より先に入り口に向かった。
「美晴どしたんだ?」
「あぁ、ちょっと渡すものがあってさ、これなんだけど。」
そう言いながら美晴が出した緑色の封筒を受け取ろうとしたら、横から物凄い勢いで奪い取られた。
唖然として横を見ると、怖い顔した聡太がいて美晴を睨んでた。
「何だ聡太、必死っぽいな?」
「そりゃ、相手が美晴さんだからね・・・。」
なるほど。こいつはまた、おもちゃにされてんのか。
朋花も気にしてか、こっちに近寄って来てた。
「じゃ、渡したから。あ、そうだ。」
睨まれようがどうしようが、一向に気にしてない美晴は、戻ろうとした足を止め、聡太を引っ張って何か言っていた。
そこに隙が生まれたらしい。
朋花は封筒を聡太の手からあっさり奪い取ると、あっという間にその中身を出して広げた。
『Good job!』って賞賛するしかない見事さだった。
封筒の中身は4枚の写真だった。
「すごい、聡太くんどしたの!?」
朋花はテンション高く騒ぎ立てたが、俺はといえば、驚きのあまり固まって声すら出せなかった。
「何で!? ちょ、ちょっと・・・とりあえず返せっ!」
「へー、付き合いだしたってのは聞いたけど、こんな事までしてたんだ?」
「・・・素直に行動しただけだ。」
「いいんじゃない? ね、」
「・・・あ、あぁ。」
正直二人のやり取りなんか耳に届いてなかった。
けど急に振られて、よく意味も分からないまま返事だけを返した。
俺のねーちゃんと、目の前の親友がキスしてる写真は、衝撃以外の何ものでも無い。
・・・けどまぁ、そりゃ・・・好きで付き合えば、そういう事もあるよな・・・したいよな。
って、納得はできる。
けど、ねーちゃんは交際を宣言した時と同じ服で・・・。
って事は、付き合いだした初日で・・・いきなりか!?
俺と朋花は付き合いだしてから、5ヶ月くらい経ったけど・・・まだしてねーよ!?
もちろんしたくない訳がない、むしろしたい!
・・・けど、なんつーか、こう・・・タイミングが。
そういう雰囲気って、どう持ってくんだ?
俺にはこんなにも難しい事を、こいつはこうもあっさりと・・・。
頭に刻み込まれて消えない写真の映像に苛つき、それと同時に、腹の中で黒い何かが渦巻くのを感じて、何かすげー嫌な気分だ。おまけに
「先越されちゃったね。」
弾む声でそう朋花に囁かれ、俺は更に追い込まれたような気分になった。




