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そう遠くない未来。  作者: 薄桜
美晴×芳彰
17/26

覚悟

「美晴×芳彰」の9話目です。

ではどうぞ。

デジカメを手にして、良さそうな瞬間を探してひたすら歩いた。

雲の多い青い空や、公園のサツキ、誰かの家の庭からはみ出したタチアオイに、庭先のバラ、草に紛れたツリガネソウに、街灯に巻き付いた未だ咲かないヒルガオ、日陰に群生していたドクダミまで撮ってみたけど、どうもピンとこない。

今の所、自分の作品だと、胸を張って見せられるものが撮れた気はしない。

そうして歩いているうちに、土手に辿り着いた。

いつの間にか日は西にあり、川沿いを舐めるように吹く風に、半袖だった私は少し肌寒さを覚えて、脱いでいた上着を再び羽織った。


空の色はまだ水色で、しかし、いずれ沈む太陽は少しだけ大きい気がした。

流れながらその形を変えていく雲に魅せられ、デジカメを向けてみるものの、モニターに映る雲は実際に見るよりも遥かに魅力に欠け、1枚も撮らずに芝生に寝転んだ。

そして視界に緑が見えた。

風に揺られる桜の緑の葉が、不意に私の心を掴んだ。

・・・芳彰はあの木に寄りかかって空を見上げてたな。

起き上がって記憶を辿り、その光景を思い浮かべた。

あの時は、今より遥かに寒い11月。

寂しかった枝には緑の葉が盛大に茂っていて、あの時とは随分違うけど、ちょっとだけ・・・そう、ちょっとだけ真似がしたくなってみた。


結局、あの時何が見えていたのかは分からない。

空を見上げて、目に見えるものと、目に見えないものを見ようとしていた芳彰。

でも、今は何となく分かる。きっとその時に芳彰が抱いていた気持ちが。・・・当時は史稀(しき)と呼んでいた芳彰と同じように、同じ木に寄りかかって空を眺めてみた。

西の空は薄っすらと茜の色を帯びはじめ、薄い水色へとつながる見事なグラデーションを、紫がかった朱鷺色のきれいな雲が邪魔をしている。

こういうものを見ていると、やっぱり心が弾む。

世の中には面白い人工物がたくさんあるけれど、結局自然の色には敵わない。ただ空を眺めるだけでもこの光景だ。

やはり諦めきれない私は、デジカメを空に向け、刻々と変わりゆく瞬間を夢中になってデータに変換した。


今日の成果を確認しようと再生モードに切り替えて下を向くと、随分日が傾いてきた川辺で遊ぶ、一人の女の子の姿があった。

・・・これも良さそうだ。

再び撮影モードに戻してカメラを構えるものの・・・遠い。

芝の土手を下りながらベストな距離を探し、何度かシャッターを切った後、実物の姿を見ると、何となく見覚えがある。

確か、航の彼女の・・・えーと、石川朋花(いしかわともか)ちゃん?

よく見れば近くに航らしき姿もあり、それと誰か分からないけど、もう一人男の人が階段を走り下りて近付いて行った。

・・・まぁいいか。

もし良い写真が撮れてたら、そのうち渡そう。

何か取り込み中のようだし・・・割って入る理由も無い。

今撮った写真を、一応モニターで確認だけして、土手を上がって家に向かって歩いた。



夕飯の後、撮ってきた写真をパソコンに取り込んで眺めた。

「んー思ったより暗いな。」

夕焼けの空は、ほぼ全滅。

タチアオイは、もう少し色が鮮やかなら・・・明度と彩度を(いじ)れば良い感じになりそうだけど、それは邪道の気がする。

サツキは構図を間違えている。もう少し右に寄せれば良かったか?

ドクダミは漠然とした絵で、主張したいものがよく分からない。

かなりの数を撮ってきたものの、良さそうなのはほんの数枚。

写真は一瞬を捕らえる芸術・・・ってのなら、私はどれだけのものを逃がしたものか。

「難しいなー、もう。」

そうこぼしながら、頭の後ろで手を組んでイスの背もたれに寄りかかった。

ただ救いは、最後の写真が予想以上に良かった事。

夕日の反射する川面と、黒い少女のシルエット。

しかしこれは、私の腕ではなく偶然の産物だ。

構図以外は、光とタイミングが良かったのだろうとしか言いようが無い。


「本当、難しい・・・。」

それでも私は今、目元が緩み口元に笑みが浮かぶのを自覚している。

遥かに高く、相当に険しい目標を見つけ、昂ぶっている。

・・・やってやろうじゃないか。

ディスプレイに並ぶ中途半端な写真達を見つめ、私はそう心に決めた。


まだ、ここのシリーズに入れてない「手を伸ばせば・・・。」に向かう第一歩。

こういう葛藤は、ワクワクして・・・とても怖いです。

自分にどれだけの覚悟があるか?

ただそういう事なんですけどね、

・・・私は2回逃げました。

そして、今3回目・・・逃げたくて仕方が無いのを、必死で留めてます。

でも今このUP作業で、逃避中・・・

これ終わったら、ちゃんとネタ考えます。

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