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そう遠くない未来。  作者: 薄桜
美晴×芳彰
13/26

憂鬱な数日の始まりの日

「美晴×芳彰」の5話目です。

ではどうぞ。

朝目覚ましに起こされると嫌な感じがした。

下腹と腰の辺りに鈍い痛みを感じて、私は顔をしかめた。

・・・たぶん、来た。

起き上がってトイレに直行し、予想は確信に変わった。

・・・生理嫌だ。


いつもいつも、初日と二日目は生理痛に悩まされる。

相当な痛みなら、意地でも耐えてやる自信はある。

けれど、こういう中途半端な痛みには弱い・・・。

これは私の天敵だと言っても、過言ではないとすら思っている。

・・・そう自己正当化したくなるほど、私はブルーな気分だ。



いつも通り待ち合わせの場所で葵を待とうとして、ふと気付いた。

そういや葵は、これからは聡太くんと行くとかって言ってた気がする。

コンテストのリストに夢中で、あんまり話聞いてなかったけど、確かそうだ。

この浮かない日に、おまけにこんな仕打ち? って思いたくなるけど、

・・・まぁ、好きな人と一緒にいたいって気持ちは、私にだって分かる。

からかって憂さを晴らしたい所だけど、ま、我慢しますか。

そう一人で納得し、足を学校に向けた。

学校で会って、からかえばいいか・・・でもそれは、私にそんな元気があればの話だな。



進路指導室の膨大なファイルの中から、近くのデザイン課のある大学と、それより少しだけ遠い美大と、写真関係の専門学校のものを出してもらい、じっと眺めてみてるんだけど、今日はさっぱり記憶に刻み込めない。

「美晴どしたの? 朝から元気無いけど?」

同じように、近くの大学のファイルを出してもらった葵が、正面で私を眺めている。

「・・・お腹痛い。」

「あー、頑張れ。」

それだけで察してくれたけど、返ってきたのは冷たい声のエールだけだった。

「何頑張ったら痛くないの?」

「んー、気力?」

「そんなものでどうしろと・・・? とりあえず、このファイルの学校名メモしといて、お願い・・・元気になったらまた調べるから、今の私には無理だ・・・。」

お腹に貼った使い捨てカイロを手で押し当てて、閉じたファイルを示した。

「仕方無いわね・・・貸して。」

承諾してくれた葵にファイルを押しやって、私は崩れるようにテーブルに突っ伏した。

そのまま、サラサラと微かに響く音を聞きながら、動くシャーペンをぼんやり眺めていると

「そういえば、今回は『生理なんかいらない』って言わないのね?」

って、文字を書きながら何気なく言われた一言に、血の気が引いた。

「・・・あー、そうだね、」

これまでは、邪魔だとしか思っていなかったものが、今後は無くなると非常に困った事になるという事実に、今初めて気が付き・・・今の表情を葵に見られないように、腕を動かして顔を隠した。



「芳彰っ!」

玄関が開くと同時に、美晴の機嫌の悪い声がした。

何事だと思いつつも、触らぬ神に祟りなし・・・

一瞬そんな言葉が頭を掠めたが、再び名を呼ばれてしまった。

「芳彰、こっち来て。」

諦めて教科書を閉じ廊下に向かったものの、そこに声の主の姿は無い。ただいつもの紙袋だけがその場に存在していた。

「美晴・・・どこだ?」

「・・・ここ~。」

先程とは打って変わって、弱々しい声が聞こえた。

声のした方向を見ると、玄関の隣の・・・寝室のドアが少しだけ開いている。


「何いきなり転がってんだ?」

俺の布団に丸くなって転がる美晴を見下ろしていると、

「・・・もう限界。」

そう言って布団を引き寄せ、さらに丸くなった。

・・・何が限界だ?

「どうした?」

わけが分からず横に座って頭を撫でるが、弱々しいながらも、相当に機嫌が悪そうな声で否定されてしまった。

「そんなとこより、お腹に手を当てて。」

言われるままに美晴の腹に手を当てると、がっちり腕を掴まれて抱え込まれた。

「温かい・・・やっぱ自分の手を当ててるより、人の手の方がいいな。」

その言葉と行動で、ようやく俺は合点がいった。

「ひょっとして生理か?・・・お前そんなに酷いのか?」

「初日と二日目は痛い。あと、立ちっ放しが堪えた。もう少しで終わるって我慢してたから。」

我慢しなくても休めばいいのに。だがしかし、そういう事をこいつは嫌う。

「こんな時は、別に俺の事なんか気にしなくたっていいのに。」

玄関の紙袋を思い出してそう言ったのだが、見事に一蹴された。

「嫌だ。今日は用がある。」

「何の?」

「大学がどんな所か聞きたい。」



やっぱりこういう事は、休学中とはいえ一応現役の人間に聞いてみるのが一番だろう。そう思ってここに来た。

・・・そうじゃなければ、今日みたいな日は絶対に来たくない。

芳彰にこんな姿なんか見せたくない・・・けど、痛さに負けた。悔しいけど、やせ我慢すらできなかった。

せいぜい、八つ当たりしないようにするのが精一杯だ。

だけど、芳彰の手をお腹に当てて、こうやってしがみ付いてると、何だかホッとた。

最初のうちは、ちゃんと質問して話を聞いてたんだけど、そのうち安心感に負けてしまった。

・・・今日の私は負けてばっかだ。

本当、生理なんか嫌いだ。



人に質問しといて・・・途中で寝るなっての。

掴まれていた腕を引き抜いても、美晴はまつ毛を揺らしただけで、一向に起きる気配は無い。

「おい起きろ。」

何度か体を揺すってようやく目を開けたが、

「嫌だ、痛い。」

と、不満を漏らして、再び目を閉じようとする。

だからと言って、さすがにこのまま寝かしておく訳にはいかない。俺は構わないが、美晴の方が後で困るだろう。

「こらこら寝るな。帰らないとまずいだろう?」

「ここがいい。」

即答して向きを変え、俺の足に縋りつく。

・・・まったく寝起きは別人だな。

普段は自分からこんなにくっついてくる事なんか無いくせに。

くそっ、生理でさえなければ、喜んで手を出すものを・・・。

「良くないから・・・自分の部屋で寝ろ。」

「・・・歩きたくない。」

幸せそうな顔して、再び目を閉じる美晴の姿に、俺は諦めた。

「分かった。・・・連れてくから、帰ろうな?」

溜息混じりにそう言って、ポケットから出した携帯で電話をかけた。


最近生理痛がひどくなりました。

以前はそれほどでもなかったのですが・・・。

でも、無くなればいいのに!って、もう言えない二律背反。

(はい、昔は言ってました。ストレスで数ヶ月止まってたりした事も)

必要性を感じていないけれど、妊娠も困るし、まだ閉経も悲しい。

・・・と、それは私の主張(^^;

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