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そう遠くない未来。  作者: 薄桜
美晴×芳彰
12/26

娘の夢/彼女の親

「美晴×芳彰」の4話目です。

ではどうぞ。

一人だけ少し遅れて夕飯を頂き、食べ終わってソファに移動すると、それを見計らっていたらしい上の娘が隣に座った。

「美晴どしたの?」

「うん、聞きたい事があるんだけど・・・いい?」

切り出し難そうにしているのが、とても気になる。

悩みでもあるのかしら?

「なあに?」

「・・・あのね母さんは何で今の仕事選んだの?」

「なんだ・・・真面目な質問ね、進路の事で?」

そう問うと、娘は首を縦に振った。

「母さんは、お父さん・・・美晴のお爺ちゃんの影響ね。」

「お爺ちゃん?」

「そ、何かある度に大きなカメラ持ってね、家族の写真を撮ってたの。でもね、おじいちゃんの写真ってあんまりないのよ。・・・当然なんだけどね、だから私が撮ってあげたいって思ったの。」

「へー、確かによくカメラ持ってたね。」

「でしょ? だけど大きくなっていざカメラ向けたら、恥ずかしがってあんまり撮らしてくれなかったのよね。」

思いがけず昔の事を思い出して、何となく心がじんわりしてくる。

亡くなって随分過ぎた事もあるけど、色々あったからあまり思い出す事も無くなっていた。親不孝な娘でごめんねって今度お墓に謝りに行こうかしら。

「そうなの? 私結構お爺ちゃんの写真撮ってたよ?」

「・・・え?」

「お爺ちゃんのカメラ借りて遊んでたよ。美晴は上手だなーって、次行った時に現像したの見せてくれた。」

父さん・・・娘と孫は違うって事? 謝りにじゃなくて問い質しに行きたいわ。

「そう・・・なのね。」

「うん、それと・・・写真撮る時ってどんな事考えてる?」

複雑な気分を抱えていると、別の質問に変わっていた。

「・・・あぁ、そうね、今は幸せな瞬間を収めるのが多いから、最高の笑顔を引き出せるようにって事かしらね、」

「そっか・・・。」

そう言って黙り込んだ娘は、険しい顔をしていた。

「お母さんの事は参考になる?」

「うん、・・・私もね、母さん見ててカメラマンになりたいって、ずっと漠然と思ってたんだ。だけど具体的な事は全然でさ、何撮りたいんだろうって、今それを考えてる所。」

そういう事は初めて聞いた気がする。

小さい時は確かにそう言ってたけど、今でもそう考えていたとは・・・とても以外だった。

「美晴・・・本当にカメラマンになりたかったの?」

私の時間は不規則で、美晴に迷惑かけてばかりいて・・・娘二人に寂しい思いをさせてきたと、ずっとどこかですまない気分でいたのに・・・

「何? ・・・何かおかしい?」

「ううん、蛙の子は蛙って思っただけ。」

だから、そう思ってくれているのがとても嬉しくて、訝しげな顔をする娘につい抱きついた。

「ちょっと、苦しい。」

けれど美晴は本当に苦しいのか、それとも照れているのか抵抗を示して逃げようとしてくれた。

・・・思春期なんてそういうものよね。小さい頃は抱っこしてって、うるさかったくせに。

諦めて手を放すと、少し距離を取った位置に座り直されてしまった。

「ねぇ、美晴・・・お母さんも一つ聞いていい?」

「何?」

「彼とはうまくいってるの?」

「なっ!? 何聞いてくんの??」

あんまり抵抗してくれるから仕返しに決まってるじゃない。

お母さん寂しいのよ?

「どうなの?」

「・・・いってるよ。」

目を逸らして、ぶっきらぼうに言い捨てるなんて、可愛い。

「うんよかった。そういえば・・・胸大きくなったでしょ?」

「・・・一つって言ったよね?」

「あら、これは確認よ? いいわよねー、まだまだこれからで。私なんかあなた達のお陰で、減っちゃったっていうのに・・・。」

まったく、それじゃ肯定しているようなものよ。

でも、新しく買ってた下着のサイズを確認したから、間違いないんだけどね。


上の娘の態度に気を良くした私は、美晴が照れてお風呂に逃げた隙に、以前からやりたかった事を実行に移す事にした。

「和歌奈?」

「お母さん何?」

下の娘の部屋に行き、ベットの上で雑誌を読んでいた娘に耳打ちした。

「それ本気?」

「面白そうでしょ? もちろん協力してくれるわよね?」



絵を描いていると、携帯が鳴った。

慌ててパレットと筆を置いて、携帯を開くと、

時間は9時18分。表示された名前は和歌奈ちゃん?

「もしもし?」

「あ、夜にごめんなさい、和歌奈です。」

「いや、いいけど・・・どしたの?」

この子はいつも唐突だ。

別に普段やりとりをしている間柄でもなく、前に美晴の行方を聞いて、

それっきりだったのだが・・・

「あのね、どうしても話したいって人がいてね・・・今変わるから。」

「・・・そう。」

とうとうきた・・・正直そう思った。

「もしもし、ごめんなさいね驚かしちゃって、私二人の母親です。」

「・・・あ、ども始めまして、宮原芳彰です。」

やっぱり。

いつかやられると思ってた。

「うん、芳彰くんよね、夜にごめんなさいね・・・美晴のいない隙にやってるから、

 もちろんあなたも内緒にしてね、まだばれるとつまんないから。」

「はぁ・・・」

「私、あなたに会ってみたいんだけどいいかしら?」

「どうぞご自由に。こちらはいつでもいいですよ。」

「そう? じゃぁ明後日の12時に、『Le sucrier(ル・シュークリエール)』って喫茶店・・・知ってる?」

「いいえ、知りません。」

「そっか、じゃぁ後で詳しいメール送るから、そろそろあの子お風呂から上がってきちゃうからそれだけね。・・・慌しくてごめんなさいね。」

「いえ、」

「じゃぁ、明後日楽しみにしてるわね。」

「はい、こちらこそ。」


可笑しくて、電話が切れてすぐ吹き出した。

さすがあいつの親だ・・・やる事が似ている。

正しくは、美晴の方が親譲りなのだろうが。

普段は俺が美晴に振り回されっぱなしだが、あいつもこうやって親にはめらるんだと思うと、可笑しくて仕方がない。

けど、そう笑ってばかりもいられない。

・・・きっと俺も明後日は大変な思いをする事になるのだろう。


間もなく携帯にメールが届き、母親の言っていた通りそこには店の名前と住所が記されていた。

ノートパソコンの電源を入れ、起動するまでの時間を使って、簡単ながらもメールの返事をした。

それから起動したパソコンで、住所の場所をネット上の地図で見ると、確かにそこには同じ名前の店があった。。

大体の場所は分かったが、念のためにその地図は携帯に転送しておく事にして、今度は店名で検索してみた。

引っ掛かった中に店自身のHPは無さそうだが、結構な数のブログの記事が引っ掛かっており、好意的文面のいくつかに目を通してみた。

「あんたが飲んだから、胸が無くなった」

よく母親に言われてました・・・そして今、私も同じ事を思ってたりします。

だから、ここに書いてみた。

胸筋が足りないのと、乳腺が萎んだんだという理解はあるのですが、

(理由は調べた)

うん、でもこの事実って、結構ショックなんだ・・・。

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