迷い込む者
今日も一人夕暮れに家に帰らないでいる少女がいた。ミコである。
「…帰らなきゃ……でも、帰りたく、ないなぁ」
「あいつどこにいった?」
「!? 隠れなきゃ……」
ミコのことをどうしたいのだろうか。クラスメイトたちがくすくすと不気味な笑い顔で見えていないはずのミコの方に近づいてきた。
「いた?」
「いなかった」
「もうかえろー」
しかし、クラスメイトたちは探しても見つからず面倒くさくなったのか、すぐ帰っていった。
「いった、よね?」
怯えつつ茂みからビクビクしつつ顔をだし周囲を見渡す。誰もいないことを確認すると教室に向かい、そっと走り出した。教室についてからミコはすぐに帰る支度を済ませた。そしてもう一度机に目をやると、そこにはさっきまでなかったボロボロで継ぎ接ぎだらけの兎のぬいぐるみがおいてあった
「なにこれ? うさぎのぬいぐるみ、だよね? なんでここに」
なんとなく持っていかなきゃいけない気がしたらしく、ミコはそのぬいぐるみを祈るようにぎゅっと持って、帰り始めた。
ミコはいつも一人である。無論、好きでそうなったのではない。人がいるという意味では、ほとんど一人になれる時間などなかった。つまり精神的に一人であったということである。人知れず、もしかしたら本人すらも気づかずにずうっとどこか遠くへ行くことを夢見るようになっていっていた。
「あれ? こここんなんじゃ、なかったような気が……」
それは少しの違和感だった。
「やっぱりおかしいこの村、こんなんじゃない。でも、何が違うのかわからないよ……」
知っている道を歩いていた、そのはずだったのに。
ゆうやけこやけでひがくれて……
いつもならもっと大きく聞こえるはずの夕焼け小焼け。今日は遠くに聞こえて仕方がない。
「……いっちゃ、だめだよね?」
引き返そうかとも思った。しかし、好奇心と一人になりたいという思いはミコを突き動かしてしまった。
「……っ!? 歪んで……!」
ぐるりと街の一角が歪み、吸い込まれていってしまった。




