外に
暴風と叩きつけられる雨音の合間を引き裂いていた家畜の絶叫と破壊音が絶えて、様子見をしていた男たちの緊張が少し緩む。どうやらココではないところへ餌を求めて移ったのだろう。
どこへ?
ここに避難していない家族は誰だ?
暗い雨の中を風に煽られながらわずかな荷物と子供を抱えて逃げこんできた家族がいる。海から飛んでくるものに備えて床下に逃げ込んでいたけれど、屋根ごと吹き飛ばされて崩れた家からようやく脱出してきたという。母親の手を握る子はガレキで傷ついた傷と侵入した海産物による傷、ずぶ濡れでガクガクと震えている。血の気が失せた土気色の顔、紫色の唇を噛み締めて、口の中で言う。
「おじいちゃんが倒れてた」
レイチェルおばさんちのお爺さんは畑のそばで脚やら、を失ってこときれていたそうだ。詳細を告げられない顔色で震えていた。
自宅を襲われて逃げ込んでくる家族たちはそのあとも続き、あの大きなサメは徐々に集落を奥へと移動しているようだ。家畜小屋はほぼ絶望だと青ざめた顔で告げる。外は依然として雨足が強い。怪我人はいつもの比ではなく多く包帯と薬が足りない。
石造りの壁に打ちつける、ごつんという重い音は砲丸のような岩だったり、蟹。ベッシャッ!という濡れ雑巾に似た音は紫がかった灰色のヌルヌル。海産物なのでよくわからない形状のアレは洗濯糊で作るスライムに似た不定形。強酸を出すので、避難者の肌に赤い化学やけどを負わせていて、洗って軟膏を塗っているが痛みはひどいようだ。嵐に乗じて現れる。以前もあった。と年配たちがつぶやいている。
マットが落ち着かない。あとから来たずぶ濡れの家族の中にアンソニー爺さんが居ないのだ。もともと爺さんは来ない。一番集落の外側で、海から遠い。来ないほうが安全な距離だった。亀も連れて来られない。同じくパイロットのレイチェルおばさんたちも来ていない。
でもマットは、家畜小屋全滅の話が気がかりで、レイチェルおばさんの亀やアンソニー爺さんの亀も大きなサメに狙われる。大きくても亀だから。どうしよう。と誰にも相手にされないまま隙間から外を見つめてうるさい。
非力なチビのわたしたちにできることはないじゃないか。




