大漁
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甘葛、餅草、食用草の芽、山羊のお土産の草、ナマコ、小さいカニ。いろいろどっさり積んだ荷車をトムが引いて帰る。私たちも大きな麻袋に詰めて帰る。貴重な甘葛は別の袋に分けて間違いの起こらないように腹に括ってある。
皆も取りに来たいけど、警護の男衆が必要なので、月に何度かしか来れない
まとまって行くので、わりと取り合いになるからあとあとの遺恨の遠因になるのも。と控える人も多い。
彼氏とか旦那さんがデートがてら誘うのがイケメンとされている。
あれだ。君のために春の野原で若菜摘む。って恋の歌みたいだ。
わたしはマットと棒を振り回しながら石の上を跳ねているので、将来に期待する感じか?
いや、それ、誰と?わたしがイケメン役?マジか。女児の誰かと来る想定?
想像するだけでげんなりする。ただの子守りじゃないか。現状、サムとトムに子守りされて、河原遠征の引率もしてもらってるんだから、数年後、わたしも引率するべきだろうけど。
それとは違うニュアンスじゃないか。
わたしは沖縄に行ったことがなくて、卒業旅行でビーチを満喫したという同級生に
それは美しい景色だった。あの青い海をまた見に行くときは、隣に大好きな男が居て、景色を一緒に眺めたいのだと野心を語っていた。とりわけ、夜の海に浮かぶ月の光が道のように輝く夕べ、砕けて寄せる波と弾ける泡の音、肌にまとわりつくような湿った潮風、足の裏で崩れる砂の感触を分かちあいたいと熱かった。それを聞いてどれほど憧れたことか。結局そういう相手やら機会がないまま、こうなっているけれど、今わたしが臨んでいる海は、似ているんだろうか。月を眺めるのはイケメンとなのか。イケメンとなるよう強いられるのか。
何か、そういうのを好きな人と一緒に分かちあう、体験を思い出にして共に年をとってゆく。そんな相手として望まれても、わたしはなれない。その上、自分の好ましいタイプの異性には、絶対に対象外だし、一族も国も許さないだろう。異性って、わたしにとって異性だから、男なんだもん。
好みのタイプは清潔感のある人。
ハナクソ掘って、服で拭うヤツとかぜったいにムリだから!あと手鼻噛むのもムリ。
よって、この地域の男全部圏外。ほんとうにいたたまれない。ピッ!と鼻を押さえて器用に飛ばすのはすごい技術だとは思うけど、イヤ過ぎる。
尻にゴリゴリと小石を押し付けるような痛みで振り返ると、茶色い仔山羊と目が合う。横向きの瞳孔が鍵穴みたいで毎回『異界の扉が開く』的なワードが脳裏に過ぎる。わたしもお年頃?
小さい角が生えてカワイイ。大人ヤギと違って胴が横に張り出していない体型なのもあどけなくてカワイイ。大人山羊はまあまあ大きくてインパラみたいだ。
「アサー。お土産あるよ」
出迎えてくれた仔山羊アサはこの春、二頭で生まれたうちの一頭。
もう一頭は先日、本家の近くの村に貰われていった。ナギって名前になって可愛がられていると聞いた。わたしの知る山羊よりも飼われている山羊達はずいぶん大きいけれど、実際のところ山羊らしく子どもや年寄りでもお世話できる懐っこい家畜だ。
今日は刈ってきた河原の草を飼い葉桶にざっと刻んで入れる。いつもの草とは目先が変わるから、アサは鼻を鳴らして首を突っ込み、選り好みしながら噛みちぎる。草の汁が跳ねて前腕に冷たい。
「それアケ(現ナギ)も好きだったやつだよ」
誰にともなく言うと、アサは気にせず咀嚼を続けた。向こうから聞こえるマットのけたたましい笑い声。どうも石を蹴って、当たったモニカのガチ叱声が飛ぶ。今日も平和だ。少なくとも、今のところは。
未明に生まれたので夜明けのアケと朝生まれの弟アサの2頭兄弟
極めて雑な命名は誰がやったのか
子どもは子ども同士で仲良くしてて、種族の違いを超えてる。社交的なアサは大体の家族に懐いてるけどとりわけグローバーが好きっていうか子分?ウザ絡みするマットのことも許容する兄気質の子山羊
次回2/7 6:10予約投稿しました
二月下旬の完結になるよう頑張って書きます




