一族の繁栄は各方面から望まれている
製塩は国策にも響くので、わたし達一族が増えて、バリバリ増産するのを望まれている。一方で他にも海辺はあるのだからそこでも作れば良いのだ。が。条件の合う場所は少ない。しかも海辺は水生動物からの侵略とも戦うまさに水際。それでも、一族から選抜されて新しい製塩場所へ出たもの達もいたらしい。
今なおウチに負荷がかかっている時点でプロジェクトの結果はお察し。
だからね。性自認がおばさんだから結婚したくない。などとわざわざカムアウトするだけ無駄。マイノリティへの偏見しかないだけじゃなく、無理強いすべく説教されるのが関の山だ。
ただ、本当に辛いのは、伴侶になる子なのだ。いろいろ娘らしい将来設計とかあるじゃないか。主婦として家庭を切り盛りして、子どもといちゃいちゃして、お母さん大好き!とか言われて、ゆくゆくは孫を甘やかして嫁にキレられる。
『怒らない優しいママになるの』などと寝言を起きたまま言う花嫁をカワイイって笑みくずれてキスする男と結婚してほしい。
ペアのカップとかオシャレなクロス、実家のむさ苦しい雑貨じゃなくて新婚家庭の愛らしいインテリアにささやかながらも花の生けてあるような、お友達に『幸せそうね。』って言われる見栄えのいい暮らしを夢見る娘にわたしは釣り合わない。
わたしと家庭を持っても、お局と過ごす余暇。とか、姑と膝詰めデスマッチ。になると思うので消極的にもなるのだ。洗った手をエプロンで拭くな。とか、揚げ物の皿を重ねたら糸じり(皿の裏側)に油汚れついて洗う手間が増える!とか夫に言われたくないじゃん?片付けの好きな伴侶と結婚した掃除上手の後輩は掃除の段取りで流儀が違って喧嘩するって言ってたから、きっと、わたしともつ家庭は窮屈だろう。
もっと妻を褒めてくれるスパダリと所帯を持ってチュッチュってしていれば良いんだけど。
なにぶん一族のメンバーを増やす為にも、総員が所帯を持って繁栄に向けて励むよう圧が強い。
「むり。。。」
今朝は菜園で朝食用の芋や菜葉、ラデッシュなどを採取しながら、葉っぱについたアブラムシを払い、目についたヤトウ虫を処したり、草食テントウムシを処したり、カタバミにナマコ液を浴びせたり、むしっても千切れるメヒシバをシャベルでえぐり回したりなどしている。しゃがみ込んで土に触れる作業してる時はだいたい頭の中は空回りしてるよね。
目は青虫をサーチしてるけど、胸に去来しているのは将来への不安だ。ここで所帯を持つのを拒んで、家を飛び出したところで、余所者に対する扱いは辛辣だ。都会へ行けば、そうしたしでかしたやつの吹き溜まりもあるらしいけれど、それはもう治安が悪いとサムが語る。『都会怖い話』は人気のコンテンツで、王都へ塩の納品に同行したサムが体験したスリ、当たり屋、盗賊、美人局、睡眠強盗見聞録(たぶん盛ってる。リアルだとしたら世紀末救世主伝説並み)。
わたしは大人と違って、まだ地面に近い体格なのと尻も小さくて軽いから屈むのが楽なので菜園にいるのは苦にならないけれど膝の悪いサムには合わないので、トムと二人だ。朝食で合流する。
トムは豪快に大きい石を積んで菜園の石垣を補強している。数歳の差であんなにパワフルになれるのだろうか。
わたしのソバカスのある細い白い前腕をみつめる。朝日で透き通る紅い腕のうぶ毛がきらめく。まだ筋肉のつく年頃ではないにせよ。
いや。むりだと思うよ。
怒らないママって、大人しい女の子のお母さんだと可能らしいと聞きました
叫ぶのは命がかかっているので、声を枯らして制しているんだけど、ヤツらの耳はチクワでツルッとスルー。。。
次回は1/24 土曜日 6:10です また見てくださいね




