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本編

クラス転移物が書いてみたかった…………。

「え、ここどこ?」

「ホームルームはじまるの待ってたよな?」

「これって異世界転移!?」

「マジで!!?ラノベのやつじゃん!」

「帰りたい…」

「今日みたいアニメあったのにー」

「いや待ってバイトあるんだけど!」


クラスメイトの反応はさまざま。

気づいたら豪華な広い場所にいた。足元には漫画やアニメでで見たことあるような魔法陣。周りにはローブを来た人達、神官っぽい白い服を着た人達、何か偉そうな服を着た人達がいてこちらを見ているが白っぽい幕に覆われていて声とかは聞こえない。

それにしても元いた世界ではどういう扱いなんだろう。普通に誘拐とか?それだと大事件だよなぁ。おばさん大丈夫かな。誘拐扱いなら多分警察から話がいくだろうけど…テンパって「今日のご飯はどうすればっ」とか失言しなきゃいいけど。引き取った親戚の娘が行方不明って聞いてそんな事言ったら絶対虐待疑われる。でも、言いそう。まあ心配したってどうにもならないけど。

それにしても『修復師』ね。魔物避けの結界そのものや魔法陣を修復したりできる、と。何ていうか…ものすごくこき使われそうな能力。嫌だなぁ。知らない人にこき使われるの。

『今あるスキル以外にもう一つ何か力を授けるわ。何がいいか決まったら呼びかけて。ただし一度授けたら変更は出来ないわ』

頭の中に直接声が響く。この国の女神様らしい。

「元の世界には帰れますか?」

委員長が訊ねた。

『帰還用の魔法陣があるわよ。魔力量的にも問題ないわ』

あるんだ。ちょっと意外、一方的に呼んでおいて帰せませんっていうのがセオリーだから。


「余はこの国の王だ。何畏まる必要はない、我々は助力を頼む立場だ。皇太子よ」

「今我が国は窮地に陥っている。死力を尽くしたが我々の力では限界がありこの度召喚魔法にてそなた達を呼び出させて頂いた」

「どうか、皆様のお力をお貸し下さい」

「窮地を脱した暁にはお礼と元の世界へのご帰還をお約束致します!どうか我々の国をお救い下さい」

「「「「お救い下さい」」」」

ハリウッドの俳優女優かと思うようなきらびやかな面々に頭を下げられるという異様な雰囲気に、クラスメイト達は引き受ける事にしたらしい。一人だけ単独行動はこの場では勇気がいる。私も黙ってみんなの後ろに続いた。ただなぁ…なんかね。胡散臭いよね。顔も服も雰囲気もキラキラしてるけど、あの目は搾取する奴の目だよ。今のおばさんの所に引き取られる前はああいう目の奴らにお金ばっかり持っていかれた。気のせいならいいんだけどさ。


割り当てられた豪華な部屋の一つにみんなで集まった。何のスキルを持っているか、二つ目の加護をどうするか。単独行動は危険だからグループを作ろう、とか話し合った。二つ目の加護は個人の自由となった。

元々クラスメイト達はグループによって適切な距離感はあれど、ギスギスした空気もなく仲が良かった。いや、正確には面倒な揉め事が起こらないクラスだろうか。各々の人間ができているというのが正しいか。合わないな、と思えば距離を置き、けれども必要に応じては会話もするし共に行動する。そのお陰で一年の時はちょっと憂鬱だった学校生活が二年になって急に穏やかになった。親戚をたらい回しにされている訳ありにも特に構えず関わってくれるのは大変に有難い。そういう訳で勝手にではあるが私はクラスメイト達にちょっとした恩を感じているので、保険を掛けておこうと思う。

『ふぅん、それでいいの?』

はい、お願いします。

『りょ~かい~』

軽いな女神様。


そうしてこっちに来て一年が経った頃事件は起こった。

案の定、最初に言われた『この国の危機』とやらが解決もしくは解決の目処がたったというのに王様達はあの手この手で引き留めようとしたのだ。金、宝石、魅力的な男女、地位、名誉……しかし残念ながら最初は浮かれていた面々も落ち着いてくれば故郷が恋しくなってくる。進路希望を出したばかりだったのもあったかもしれない。皆結構しっかりした進路希望を持っていて担任が感心していたからね。ここじゃそれは叶えられない。が、それに納得しないのがこの国の連中。物や立場でつれないとわかるや否や「召喚用と帰還用の魔法陣が壊れた」と抜かしやがった。それなら治せるかもしれないから見せて欲しいと言えば「重大な国家機密だから部外者には見せられない」と言う。ふざけた話である。

怒りや絶望の表情を浮かべるクラスメイト達に王様達が勝手な事をいう前に私が宛がわれている部屋にみんなを呼んだ。


私が女神様に授けて貰ったもう一つのスキルは“クラスメイトが望んだら元の世界に帰れる”というものだ。一日一回一度に三人までという条件はあるが、順番に帰ることはできる。

「そういう訳で一日三人までだから全員が帰るには十日掛かるけど…あと時間は元の世界では転移してから三ヶ月後くらいになるみたい」

スキルの事を説明すると拍手喝采が沸き起こった。みんなから一生分くらいの褒め言葉と感謝の言葉を掛けられる。なんか、こそばゆいね。

「え、と、順番どうする?」

「決めるの大変だし出席番号にしない?」

「なら、最初と最後がじゃんけんして勝った方からとかは?」

「よし、頑張れ阿部!」

「いけ渡部!」

阿部君が勝ちました。あいこが十二回続くってすごいね。


「貴様、何を勝手な事を」

王様に呼び出されました。護衛騎士の方がいなかったらとっくに腕の一つくらい無くなってそうなくらい、皆さん殺気だっている。カルシウム足りてないんじゃない?

というか気づくの遅くない?三人ずつ減ってたのに。あーでも没交渉になってたから無理か。

「女神様に授けて頂いた力です。使って悪い理由はありますか?」

「それは……」

女神様を出すと強く出られないみたい。よかった、殴られそうな勢いだったもの。

「魔族とは話し合いで同盟を結んで、周辺の瘴気の浄化は終わって、結界を作る魔道具の足掛かりが出来て、アイテムボックスの魔法陣も手に入れられたんですよね?」

何か他にも色々あったけど全部は覚えていない。クラスメイト達は随分有能だったみたい。

「これ以上は救国ではなく搾取になるのでは?」

「陛下!!!し、神託がっ!!!」

「何!?」

「『これ以上異世界人への手出しは無用。今後は国の者で解決せよ』と」

なるほど、帰るまでは自由にできそう。よかった。

護衛騎士の方に送られて部屋に戻ってすぐベッドにダイブ。ふっかふかぁ…このちょっと重い布団にくるまるのが最高なのよね。

みんなは自分の家でゴロゴロしてるかな。

「私は明日かぁ」

『貴方は戻れないわよぉ?』

え、女神様?それってどういう

『“クラスメイトが望んだら元の世界に帰せる能力”でしょ?貴方から見たクラスメイトだから貴方が自分にスキルを使うことはできないわ』

「…マジかぁ」

他人事な言動がここで響いてくるなんて。

『みんなが帰る前に気づかれたら諦めて貴方自身にも使えるようにしたけどねぇ』

わざとかよぉ。確かに私の言い方だとそういう受け取り方もできるけどぉ。

『久しぶりの人間の話し相手が全員いなくなったら寂しいじゃない』

この国の人に話しかけるのはダメなの?

『基本的には縛りを作る必要があるから一人だけなのよ。で、分かりやすく『聖女』とか『勇者』とかの称号を与えるんだけど…前のやらかした女神がねぇ聖女の称号は異世界人のみって誓約してるから今はできないの。どうしてもの時は神託できるけど。後三百年くらいしたら誓約書き換えられるからそしたら大丈夫よ。これでも五百年は我慢したんだから。異世界召喚も十五回神託とかちょっと不吉な現象起こして阻止してたのよ?でも、ちょっと寂しくなっちゃって』

え、話し相手要員だったの?というか女神様二代目だったんだ。

『ちなみに、浄化の力を追加で授けたから名乗りたかったら聖女名乗って威張り散らせるわよ』

いらないよそんな称号。帰れないのかよぉ。みんなを無事帰して私だけこっちに残ってずっと結界の修復とか新たに追加された浄化とかに勤しむ感じ?え、私いい子過ぎじゃない?そりゃあさ、夢とか目標とか無かったし、元の世界に対する未練とかまああんまないし他の人に比べれば被害少ないけどさぁ。ごはんくらい?でも、こっちのご飯も悪くはないんだよね。ピザなポテトとか甘くて黒いシュワシュワとかはないけれども。

ちなみに、クラスの人らは私の事覚えてるんです?

『覚えてはいるけど、好きな人がいるから残った!ってなってるわね。ちなみに世間的には一クラス全員が神隠しにあって戻ってきたって事になってるわ!そして、貴方は花嫁に選ばれた、と』

あー記憶ちょっと改竄されてるのね。まあ、罪悪感持たれるよりはいい、けど世間それで大丈夫なの?通じる?特に警察とか。

『通じる通じる。ニュースにも一回しかなってない!』

いやおかしくない?

『神隠しにおいては暗黙の了解になってるのよね~意識の刷り込みってやつ?どれだけ溺愛していようといなくなった原因が神隠しなら仕方ない、みたいな?』

怖すぎるんだけど。

『そう言わずに~貴方が心配してた親戚の人も虐待疑われなくて済んだんだからぁ』

それはそうかもしれないけど。

『ちなみに、家事させる人がいなくなって割りと苦労してる』

それはちょっとざまあみろ。恨みはないけどマジで散らかす天才だから片付け大変だったんだよねえ。学校通いながらの家事は中々ハードだし。私要領良くないんだよ。他の親戚ん家よりはずっと過ごしやすかったから、感謝はしてるけど。汚部屋に戻る前に家事身に付いたらいいね。

『一人だけこっちに残させちゃったお詫びに何かお願い事ない?』

じゃあ、異世界人召喚魔法陣消してください。それに関連する物も全部。王様達は壊れたって言ってたけど五百年に十五回試みる連中がそう簡単に壊すわけない。自分の国の事なのに他人に頼りすぎ。

『それもそうねぇ。わかったわ。二度と作れないように誓約も付けておくわね。他は?』

まだいいの?じゃあ、仕事はほどほどにするから偉い人達が一方的に干渉して来ないようにとかできます?

『そんなの楽勝よ。神託で言えば一発よ』

なんて心強い。じゃあ、おばさんに家事スキル授けるか家事してくれる相性の良い人との出会いとかは。

『そうねぇ、向こうの神に言ってみるわ。たぶん出会いの方になるわね』

よかったねおばさん。仕事はできるし美人だからまあ、専業主夫になってくれる人ならいいね。片付けた端から散らかすけど片付けたら感謝はしてくれるし、悪い人ではないんだよ。人のもの取らないし。お小遣いもくれるしね。私的には大変だったけど。

『ねえねえ他は?』

いや、急に言われても。

『欲が無いわねえ。嵌められて残されたんだからもっと我儘言って良いのよ?』

嵌めた本人が言う台詞じゃない。

『ほら、恋人が欲しいとか!イケメン侍らせたいとか!むしろ美女引き連れたいとか!』

我儘の内容偏ってない?

『こっちの世界の造形は好みじゃないの?』

そんな事はないけど…。護衛騎士の方とかすっごい好みの顔だし。性格も真面目そうで、愛想はないけど嫌な顔もしないから一緒にいて疲れないし。初めての恋人があんな人なら幸せだろうなぁ。

「…光栄です」

上から声が聞こえて顔を向けると深い青色と目があって逸らされた。鼻から口元を手で覆っていて表情が読めない。って、

「へぁ!?」

いや待っていつからそこに!?というか声に出した覚えない!

『えへ、丁度戻ってきたから聞こえるようにしちゃった☆』

ふざけんな女神何してくれてんの!?

「いや、その…今のは女神様に好みの人いないか聞かれたから答えただけで深い意味はなくて、ですね?」

ヤバイヤバイヤバイ…恋愛偏差値が低すぎで余計な言葉しか出てこない。

『私の神託で王命なんてはね除けられるから、好きな人と結婚できるわよ?ねぇ、貴方カエデの事どう思う?』

「尊敬できるお方です」

さっきどうしてもの時以外は神託出来ないって言ってたよね!?何て事聞いてるの!?神託の無駄遣い!!!

『そうじゃなくてぇ、恋愛的に!別に罰したりしないから正直に、ね?』

「……」

ほら困ってるじゃん!こんな美丈夫に私みたいな小娘範囲外だって!

「…カエデ様は小娘ではないと思いますが…離れすぎていなければ年下の方が好みです」

「…失礼ですがおいくつで?」

「今年で二十三です」

あれ、思ったより若かった。雰囲気も落ち着いているからもう少し上かと思ってた。年下派なんだ…私年上好きだから丁度いいかも…ってならないよ!そんな急に!

『あははっさっきから情緒不安定!』

誰のせいだと!?

騎士さん真面目そうだからな。女神様の手前言うしかないよね。どうしよう…私に振られたみたいなるのも申し訳無いし…というかこんなに顔が好みの人振れない。これは、あれだなドン引きな激重発言してお断りされよう。

「他の女と話してると嫉妬しちゃうから話さないで欲しいし四六時中ずっと一緒にいたいしSNSは既読後五分以内に返事欲しいし望むなら他の男となんて一切話さないだから私だけを見て愛して一緒のお墓に入って欲しい…っていう理想があるんです」

よっしゃあっ言いきったあああ!!!

ちょっと前に嵌まってた漫画の当て馬役の女の子の台詞。息継ぎなしでこの文字数はやばい。本当はバッチリメイク決めてハイライト消えた真っ黒な目で見つめて、めっちゃ可愛い声練習して言うのが理想だったけど仕方あるまい。まあ、これでドン引きして離れてくれるでしょう。

「……いいのか?」

へ?え、あれ、口調……。

「エスエヌエスとやらは良くわかりませんが……恐らく、俺も大概重い質です」

口調戻った。でも一人称俺のまま…けっこう好きかも。

この人、ずっと思ってたけど本当に綺麗な目の色してる。沈んだら浮かび上がれないような深い青。

「俺を選んでくれるなら一生大事にします」

「…後悔しません?私、特別美人とかスタイル良いとか、素晴らしい人格者とかじゃないし…正直人を好きになった事もないから貴方の期待通りとは限らないですけど」

「俺は遠回しに振られているんですか?」

「いえ、どちらかというと…将来捨てられるくらいなら今捨てられたい、みたいな?」

だってこんな美丈夫モテない筈がない。私みたいな自信がなくて卑屈で愛に飢えた女、面倒臭くなるか飽きるに決まってる。

「……それなら、捨てられないと思ったら手を取って下さい。気長にアプローチさせて貰います」

「……お手柔らかにお願いします?」

深い青色の目には黒髪の痩せた女が映っている。どの道護衛騎士はこの人以外にお願いしたくはない。他の教会やお城の関係者は信用できない。この人は私がみんなを帰すのを知っていても誰にも話さなかったし止めようともしなかった。

「とりあえず、北の森の結界修復の依頼が来ていますがどうなさいますか?」

「うーん暇だし行こうかな。終わったら観光したい」

「承知致しました。馬車で十日間移動です。途中町に寄りますが、宿の部屋は同室でよろしいですか?」

「別室でお願いします」

即答すると楽しげに笑われたがそれすらも目の保養…顔が好みってズルいよなぁ。

『監禁とかはしないタイプだから安心なさい。ちょっと重たい布団みたいな感じだから』

うわー困る。超タイプです。


クラス転移して私だけ取り残されたけど、もしかしたら幸せになれる…かもしれない。

とりあえず名前聞いてみようかな。



最後まで読んで頂きありがとうございます!

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