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自慰の記録は監視対象です

わたしは正気だ。間違いなく。

ただちょっと、トイレの方向を見ながら正座してたら異世界が始まってただけだ。

※冗談はさておき、軽度のフェチ表現を含みます。

ふかふかの草の上、パンツ一丁のまま膝を抱えて震えていた。

空はどこまでも青く、風は妙に爽やかで、けれどこの格好じゃ寒すぎる。

目の前には、陰茎をデフォルメしたような巨大キノコがまだ風に揺れている。

あれは本当に植物なのか、それとも俺の精神の限界が形を取った幻覚なのか……。


「……なんで俺、異世界で朝チュン迎えてんだろうな……」


周囲には誰の気配もない。音も、匂いも、文明の名残も一切ない。

あるのはただ、空想のように鮮烈な草の緑と、やたらリアルな俺の孤独感。

そして震えるスマホから流れ続ける“天の声”という、絶望に追い打ちをかけるような無機質な文章。


【天の声:おはようございます、観察者ナンバー726。】


スマホの液晶には、ありえない表示が浮かんでいた。


【天の声:貴殿が前夜、自室にて自慰行為の後、“尿意が限界になるまで我慢して、ぷしゃあって噴き出す快感……そんな文化がまかり通る異世界があったら絶対住みてぇ……”と7回】

【天の声:おもらしモノAVで感情移入して泣きながらシコる自分を客観視して嗤いたい……と5回発言。】

【天の声:これらの発言が“強く異世界転移を望んだ意思”とみなされ、現在の状況に至りました。】


「ちょっ、ちょっ待って!? え、なに!? お、おれ、どこまで記録されてんの!? それ、履歴残る感じのやつ!?」


叫んだって誰も答えない。

ただ、スマホの中の“声”だけが淡々と続ける。


【天の声:この世界では、異世界観察者としての適性に応じて任務が割り振られます。】

【天の声:貴殿には第一観察対象として、“フレド族”の生活文化の記録を命じます。】


「……普通に嫌なんだけど?」


終わった。人生終わった。

俺はただ、ションベン我慢して悦ぶ変態として、異世界に送り込まれたのだ。

そして“観察対象”とかいうパワーワードが示すのは、もっとヤバい現実だ。


【天の声:なお、任務を放棄した場合、観察機関からの処分対象となります。】


「……しょ、処分? 処分って、え、あの……それ、何系!? 行政? 法務? それとも……物理!? いや違う、精神? 存在消去? 再構成!? もしかして““無かったこと””に!? 

あああああああああ!!」


俺の悲鳴だけが、青空に吸い込まれていった。


“尿フェチ発言7回”“泣きシコ自己客観5回”──

なんだそのカウント。 俺は一体どこへ連れてこらたんだ……。

最後までお読みいただきありがとうございました!

初見の方も常連の方も、感想・誤字報告・尿祭壇の作り方など、

どしどしコメントください(何一つ真似しないでください)。

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