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7-5

 彼岸川に掛かる彼岸橋を渡り終え、レンは遂に神群(かむろ)に入った。和風の街並みに懐かしさを感じるが、今はその気分に浸っている場合ではない。

 住民はみんな避難しているようで、いつも以上に人気のない夜道を彼は疾走する。

 そして神社の参道である長い坂道に到着した時だった。 

 

 レンの前に狼男の騎士と悪魔の魔女が立ちはだかり、葬奏機を突き付けた。

 

「悪いけどこの先には行かせないよ、レン」

 

「ラウル……モニカ……」

 

 レンは歯噛みしながらふたりの名前を呼ぶ。

 予想はしていたが、まさかここでふたりが障害となるとは思っていなかった。

 

「ヴラムの邪魔はさせないわ。それにこれはイノリの意思でもある。私たちはその意思を汲み、彼女が無骸霊(ムクロ)と成り果て、他者の命を奪う前に彼女を人としての尊厳を保ったまま逝かせる使命があるの」

 

「だからわかってくれ。僕たちはキミをここで倒す」

 

「やるしか無いのか……ッ!」

 

 レンも焔魂(ブレイズハート)を構え、ふたりに対峙する。

 ひとりでも勝てるかどうかという相手がふたり。

 レンの頬を汗が伝うその時だった。

 

「おいおいひとりを寄って集ってボコるとか騎士様の鑑にも置けねぇな」

 

 ラウルとモニカがわずかに目を見開く。

 

「やっほー、レン。なんか脱走したって聞いたから駆け付けたよん」

 

「リュー! フーリン!」

 

 後ろを振り向くと、そこにはリューとフーリンが歩いており、ふたりはレンの前に立った。

 ふたりとも全身のいたるところに包帯を巻いて痛々しい見た目だが、負傷のハンデを感じさせないほどふたりの背中は力強い。

 

「ふ、あなたたちが代わりに戦うというのかしら? この魔女と私の騎士様は闇の中でより強くなるのよ?」

 

 モニカが構える深淵魔導(グリモワール)の“目”が怪しく光り、霊子ブレードを展開した。

 

「それに今夜は偶然にも満月だ。莫大な霊子を含む月光を浴びて僕の銀狼(シルバーウルフ)も獲物を求めて昂っている」

 

 月光(ムーンライト)を構えるラウルのもとに6体の銀狼(シルバーウルフ)が出現し、唸り声を立てる。

 

 一方でフーリンは呆れたように鼻で笑い、

 

「だから何? アタシは地の支配者“虎”でコイツは天の支配者“龍”よ」

 

 フーリンの両腕に虎の頭を模したようなガントレット王虎牙(ワンフーガ)が装着される。

 

「それに簡単な話だろ。お互いの全力をぶつけ合って――どっちが強いのか決めようぜ」

 

 リューの両手に双銃雙龍火砲(アルトロン)が握られる。

 

 そしてリューとフーリンは同時に霊能を発動する。

 それは渦巻く竜巻と迸る稲妻の出現で、それらはあらゆるものを暴風で吹き飛ばし、紫電によって焼き尽くしていく。

 

「だから速く行け! レン!」

 

「頼んだ!」

 

 レンはリューとフーリンにふたりを任せ、ひとり参道の坂道を駆け上がる。

 ラウルとモニカの横を通り過ぎる際、攻撃をうっすら警戒していたが、特にそんなことはなく彼はスムーズにその場から離れることができた。

 

「あれ? 素直に行かせるんだ」

 

「まぁあなたたちの覚悟に免じてね」

 

 フーリンの問いにモニカが肩を竦める。

 

「それにヴラムは最強だ。レンは絶対に勝てないよ」

 

 直後、銀狼と魔法、嵐と雷がぶつかり合った。

 

 ※

 

 神群(かむろ)神社の地下本殿。

 その大社造の神殿内には正座をするイノリと彼女の傍に立ち、何かを待つように目を瞑るヴラムが居た。

 彼は何かを察知したのか、おもむろに目を開き、イノリに背を向ける。

 

「イノリ、苦しいと思うがすまないが少し待っていてくれ」

 

「ヴラム……?」

 

 イノリはどういうことかわからず、ヴラムの顔を見上げる。

 

「俺を倒し、お前を救うとほざく馬鹿な男が来たということだ」

 

「レン……」

 

 自分が愛する少年が来たことを知り、イノリはぎゅっと唇を噛む。

 彼女の握り締める拳も震えており、それは湧き上がる感情を必死に抑えているようでもあった。

 

「お願い、ヴラム。彼を倒して」

 

 躊躇いを消し去り、イノリはヴラムに託す。

 本心とは異なる願いを。

 

「わかっている。俺は最強の葬奏者……“吸血鬼(ヴァンパイア)”・ヴラムだ」

 

 ヴラムもイノリの真の想いを察しながらも、彼女に背中を向けて静かに“敵”のもとへ向かう。

 しかしヴラムはその時気付いていなかった。

 自身が笑みを浮かべていたことを。

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