その化け物は夢を見る
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ふと"それ"は目を覚まし起き上がる。
そして不思議そうにあたりを見まわし、自分だったものの一部を見て思い出す。
俺は魔獣に喰われて死んだのだ と。
"それ"は教室から出ようとするが足を止め、
「どうしたものか」 と呟き、後ろを振り向く。
周りには自分の他にも逃げ遅れたクラスメイトだったものが転がっていた。あまり親交は無かったとはいえ一応クラスメイトだ。手を合わせるだけすると教室を出ていく。
まずはこの学校から無事に抜け出すことを決め歩き出す。
大きな破砕音がした。
反応する間もなく吹き飛ばされ、壁を突き破り2階から中庭の地面に叩きつけられる。痛みを感じないところに驚きながらも自分を吹き飛ばした狼藉者を睨みつける。
白い体毛に赤い目を持つ狼の姿をしていた。
3メートル程の大きさをしたその狼の魔獣は獰猛に吠えながら飛びかかって来る。"それ"は反射的に目を瞑り手で払い除けようとする。
「グチャッ」
と何かが潰れたような音がし体に生暖かい物がかかる。恐る恐る"それ"が顔を上げると首から上が無くなった狼が血を吹き出しながら倒れていた。
自分の力に驚いていると不意に遠吠えが聞こえた。"それ"は反射的に飛び退く。
辺りは数十匹程の狼魔獣の群れによって囲まれており、全てが"それ"を睨んでいた。
しかし"それ"は笑っていた。まるでこの状況を楽しんでいるかのように。最も、本人は困惑していた。体が勝手に動いているし、この衝動に抗えない。
「もっと血を浴びろ」「殺せ!殺し尽くせ!」
頭に声が響く、響いている。ああそうだ、それがいい。こいつら全てグチャグチャにしてやろう。
手前のやつを殴る。
ちがとんだ。
けりつける。
あたまがちぎれた
いたい。かまれた。
てでふりはらう。
とんでっちゃった。
たのしいたのしいな。あははあははっははははははははははははははははははははははははははははははははは
――――――――――
気がつくと、狼はいなくなっていて、辺り一面真っ赤になった中庭には"それ"が蹲っていた。
今のはなんだ!?自分なのに自分じゃない!気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い!!
立ち上がり窓に映った自分を見た。いや、見てしまった。
白い髪に赤い目をした自分を。薄々気づいていた。自分はここにいるのに何故自分の死体があった?何故死体を見ても何も感じなかった?何故名前を思い出せない?何故死ぬ前の記憶しかない?
「俺は誰だ?」
「俺は何だ?」
魔獣の様に駆除されたくない!人として死にたい!
"それ"は必死に考え、ある結論に至った。
魔獣に襲われる人を助け続ければいつかは人として扱ってもらえるのではないか。
そう考えた。あまりにも浅はかな考えかもしれない。
それでも、それ以外に手立てはない。
"それ"は、自分に命がある限り人を助けると誓った。
これは、かつて人間だった魔獣が人を守るヒーローになる話だ。
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