第2話 穏やかな木漏れ日の中を手を繫ぎ歩む老兵たち
今回はクリスの視点となります
…貴女も……腕が鈍ったの…やもしれませぬな……リンデン殿…
(私は彼女の乗る車椅子を静かに押しながら、お互いに歳をとったものだなと、彼女の痛ましい姿と己の姿を重ね見た時に痛感しました。もうそろそろ老兵は新しい芽に荷を譲り、隠居するべきなのやもしれないと…そう思っていた時でした。彼女が物静かに語り始めました)
そう…やも……知れませぬな…。…しかし……磨き上げた技でなければ…、守れぬものもございます。…私は……主が望む限り…この身を費やす覚悟に御座います……。ですから…まだ貴方様とは……まだ歩む事は叶いませぬ…。…どうかご容赦下さいませ……
(語らずとも通じ合う想いがある事を私は、いま身を持って知る事が出来ました。そこで私はようやくエドワード様の仰っていた意味を理解出来ました。『クリス・ローレリオ殿よ…、どうかリンデンを戦場ではない場所に解き放って頂けませぬか…。…もう彼の者を縛るものはない…。ですから、どうか何卒リンデンをお頼み申します…』病院の集中治療室に入る彼女を見送った後に、エドワード公爵閣下に述べられた事を思い出していました)
…閣下から貴女様を…任されております。…よって…貴女の申し出は却下となります…。お互いに…隠居いたしませぬか…。もう老兵が新兵に伝え残せることは、御座いませぬよ…。お嬢様の身も、私などよりも頼もしいお方が守って下さいます……
(遠くに親子三人で仲睦まじく笑みを浮かべておられるセシリアお嬢様ご一家を見て、ようやく私もお嬢様のお傍を離れる時が来たのだと実感いたしました)
…閣下は……なんと…申されたのですか…
(珍しく声を震わせながら語り始める彼女に、私は車椅子の取ってから手を離して彼女の肩に手を乗せると、優しく語りかけます)
…リンデンを頼むと…閣下は述べられました…自由に羽ばたいていいのですよ…貴女も…
(閣下のお言葉を代弁しお伝えし終えると、私は彼女の正面に回り、彼女の表情を見ると、彼女は物静かに頬に涙を流し始めていました。その一筋の涙が彼女の心を解き放つカギとなったのやもしれませぬな…)
……隠居も悪くないかもしれませんね…。…貴方様となら楽しめそうです…。…この技をただ錆びさせるのも、勿体ないですからね…。あの者達に残そうかと思います…いかがですか…貴方も…共に?…
(彼女が向けた視線の先には若い新兵、まだまだ粗削りなリリーさんとレオ君が食べ物でまた競っていました。その姿を見守り、私達は共に微笑みを浮かべていました。それが答えと言わんばかりのような笑みを、彼と彼女に私達は浮かべていました)
ようやくクリスとリンデンが共に歩み始める事が叶いそうです。




