サバイバルイベント 8日目 ②
ご覧いただきありがとうございます!
「島への道は、閉じてしまうんですよね?」
『太陽の島に部外者が入るのは、基本的に好ましくないからな。閉じるぞ』
「……島へと入れる、正規の手段とかは……」
『ないな。理の関係で、この島は外界と隔絶せねばならん。今回は特例だ』
……終わりました。
わたしはがっくりと項垂れました。
良案は思い浮かびません………
『…良いのです、ソル様、ミツキ』
「眷属さん……」
『たくさん考えて下さって、ありがとうございます。私は、ここからミツキの冒険が陽光に照らされるものである事を、祈っています』
ちょっと赤くなった目元で、はにかむ眷属さん。
よくSNSで見る救急車で運ばれる画像の汎用性が今、わかりました。
病院が来いです。
健気……!なんて健気なのでしょうこの眷属さん……!
「…ありがとうございます眷属さん。わたし、絶対に忘れません」
眷属さんの目の前に両膝をついて、眷属さんの両手にわたしの両手をぎゅっと重ねました。
眷属さんは、へにゃりと笑みを浮かべました。
守りたい、この笑顔です。
『……ふむ、ならば。名でも付けるか?』
「え?」
『え?』
え????
『其方が考えた名を太陽が付ける』
「わたしが」
『其方が』
「眷属さんの、名を」
『考えたものを、太陽が名付ける』
えええええええええ!?!!?
「な、名前はとても大切なものですよ??」
『その大切な名を付けることにより、其方と眷属で強い想いの繋がりが出来るであろう。これは今別の渡り人にも提案したがな』
な、名前!
とんでもないご提案です。
わたしは眷属さんを見ます。
『……ソル様とミツキが宜しければ、いただきたいです』
眷属さんは、真っ直ぐな目でこちらを見つめ返しました。
……確かに、仲良くなった眷属さんをいつまでも眷属さんと呼ぶのは少し寂しいです。
名前………名前………
なんとなく太陽に関係ある名前が良いですよね。
無難でかわいいのはひまわりとデイジーです。
どちらも太陽に向けて花が咲きます。
眷属さんの控えめな可憐さ、健気さをあらわすならばデイジーのが似合うかもしれません。
「……デイジー」
『!』
「デイジーは、いかがでしょう?」
『デイジー……とても良い響きです』
眷属さんは頷くと、ソル様の前で跪きました。
ソル様も笑顔を浮かべ、眷属さんの頭へ手をかざします。
『ならばお前の名は《デイジー》とする』
眷属さんの身体が淡く光りました。
すると、眷属さんのマーカーに名前が表示されました。
「……よろしくお願いしますね、デイジーさん」
『…はい!よろしくお願いします、ミツキ』
眷属さん改め、デイジーさんと握手します。
お互いに自然と笑顔になりました。
-称号 特別な名付け人 を手に入れました-
「ファッ」
『?』
「あっいえ、なんでもないです」
びっくりしました。
称号???
特別な名付け人
初めてハーセプティアの生命体以外に名前を付けた人へ送られる称号。
特別な効果はない。
な、なるほど???
………ハーセプティアとソル様の眷属さん達は、なんだか別枠の存在なんですね?
まぁ人間ではありませんしね。
うぐぐでもどうにか島との関わりが欲しいですね。
物々交換で果物も欲しいですし。
………ソル様を祀る祭壇を作りますか……?
それともお喚びしたソル様に持って行ってもら………うのはさすがに不敬ですね。
困ったときのコスモス様でも良いんですが、生贄用意するのも大変ですからね………
むしろ生贄さえ用意できれば、コスモス様なら閉じられたソル様の島へも供物だけぽいっと出来そうですね………
『宇宙なら喜んでやるだろうが一旦やめておけ。………太陽が創造主へ伝えておく』
「……よ、よろしいのですか?」
『別の場所で同じような話をしているが、その渡り人達も眷属と野菜のやりとりをしたいと言い出している。……無償でのやりとりではなく等価交換であれば提案できるだろう。恐らく簡単ではないだろうが』
ナチュラルに心読まれるのもちょっと慣れましたね。
驚きますが。
ソル様がゲームマスターさんに提案してくださるようです。
他の渡り人さんも眷属さんととても仲良しみたいで、わたしも嬉しいですね。
コスモス様は最終手段、ということにしておきましょう。
ソル様用の祭壇も、作れるなら作りたい所ではありますが。
このゲーム、マイホーム機能とかあるんでしょうか。
後でちょっと調べてみましょう。
『そんな直ぐに対応は出来ないだろう。そこは気長に待つが良い』
「ご配慮、ありがとうございますソル様」
『ありがとうございます』
『良い。眷属の望みを叶えるのも、太陽の役目だ』
なんて頼れる上司感………!
ソル様を崇め奉る宗教であれば、入信しても良いくらいです。
まぁ、実際はヤバめの組織みたいですけれどね………
勝手にソル様を崇め奉ることにしましょう。
「本当に、ありがとうございます、ソル様。デイジーさんも」
『こちらこそ、ありがとうございます。貴方との出会いは、私にとってかけがえのないものになりました』
デイジーさんは、とても柔らかい笑みを浮かべます。
『其方の旅は、何時でも太陽が見守ろう』
『私も、陽光に照らされる旅であることを祈っていますね』
「はい!ありがとうございました!」
名残惜しいですが、そろそろ時間も迫ってきています。
ヒイラギの木陰か、砂浜まで戻りましょう。
ソル様は戻られましたが、デイジーさんが柵まで見送ってくれました。
姿が小さくなるまで、こちらに手を振ってくれていました。
………出会いがあれば、別れもある。
本当にその通りです。
短時間でしたが、ソル様とデイジーさんとの時間は何にも変えられないよい思い出となりました。
もちろん、レンさんとのプレイやミカゲさんとの出会いも、素晴らしい思い出です。
イベントでないと、得られない経験でした。
砂浜へと辿り着くと、ミカゲさんが海を眺めていました。
「おや、ミツキ氏。ミツキ氏も海を名残惜しく?」
「そうですね。ハーセプティアではまだ、海まで辿り着いていませんから」
ミカゲさんの隣に立って、海をスクショします。
青い空、白い雲、そして青い海。
素晴らしいロケーションです。
「ミカゲさん、イベントではありがとうございました」
「うおう急にしんみりするような事を」
「イベントももうすぐ終わりますからね」
「そうですなぁ。……ミツキ氏とレン氏がダンジョンに来てくれなかったら、ボクは今もダンジョンにいたのかな」
ぽつりとミカゲさんが呟きました。
「助かったのはボクの方です。ありがとうございます」
「困った時はお互い様ですから。それに」
「それに?」
ミカゲさんがきょとんとした顔で、こちらへ顔を向けます。
「ミカゲさんには、ポーション瓶の依頼の話を詰めないといけませんので」
「!そうでしたな」
「元の場所に戻って、メンテナンスとかが終わったら連絡しますからね!」
「お待ちしておりますぞー。良心的な値段で取引しましょ」
ミカゲさんと一緒にニヤリと笑い合います。
イベントの良き出会いに感謝です。
「にしても、レン氏は最後まで動き回ってますなー」
「わ、本当ですね」
レンさんのマーカーはマップをずっと移動しています。
「ミツキ氏」
「はい?」
「……ふふ、何かあったら、ボクも誘ってくださいね」
いつもの楽しそうな笑顔ではなく、はにかむ笑顔を浮かべたミカゲさんがこちらを向いてそう言いました。
「ふふ、勿論です。仲間はずれにはしませんよ。何かあったら助けてくださいね」
「!そのときは連絡してくださいね」
イベント終了が迫るその時まで、ミカゲさんとなんてことのない話をしながら海を眺めました。
レンさんには、後でメッセージ入れるとしましょう。
あ、ウィンドウが出現しました。
終了までのカウントダウンですね。
「では、ミカゲさん」
「はいよ。ミツキ氏」
「「では、また!」」
そう言ったすぐ後に、画面が真っ白に染まりました。
目を開けると、イベント前に連れられた何もない空間にいました。
「お疲れ様!今からメンテナンス始めるよ!」
「わ!」
「ログアウトしてくださいなー!」
羽の生えた小さな妖精……ドライさんですね。
飛び回っています。
次々と周りのプレイヤーがログアウトします。
わたしもログアウトしましょう。
リゼットさんと、お師匠様、カレンさん達に話すお土産話もたくさんできました。
プラムも、お渡ししないと……どこで渡せば……
新たな問題が思い浮かびましたが、それは次ログインした時に考えます。
では、わたしもログアウトです!
これにてサバイバルイベントは終了となります!
お付き合いありがとうございました!
この後はイベント振り返り、メンテアプデを挟みミツキの物語を進めます!
これからもこの作品をよろしくお願いします!