サバイバルイベント 8日目 ①
ご感想、ご評価ありがとうございます!
ミツキの物語をお楽しみください!
おはようございます!
今日はイベント最終日です。
ランニングを済ませて、ご飯食べたら手早くログインしましょう。
わたしは慣れた手付きでユアストからの通知を開きます。
Your Story -ミツキ-
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たくさんの仲間たちに囲まれて、ゆっくりした時間を過ごしましたね。
リラックスできたでしょうか。
太陽島で過ごす時間も残り僅かです。
大切に、思い出と物語を紡いでください。
お疲れ様でした。
わたしはスクショを見返します。
レグルス達は、穏やかな顔で目を瞑っていますね。
……木漏れ日から光が差して、木々に囲まれて動物に囲まれるわたしは、自分で言うのもアレですが本当に夢の国のプリンセスみたいです。
ちょっと恥ずかしいですけどね。
これもいい思い出です。
よし、ランニング行ってきます!
ログインしました!イベント終了まで後4時間ちょっとしかありません!
「わっ」
目の前にディスプレイが出現しました。
イベント終了告知と、イベントが終わったらすぐメンテナンスとアップデートを行う、という通知ですね。
色々機能や新しい住人依頼を追加するため、長めのメンテナンスみたいです。
楽しみですね!
身嗜みを整えて、眷属さんの所へ向かおうと思います!
手早く肉巻きおにぎりをお腹へと入れて、ヒイラギの木陰を出ます。
マップで果樹園の場所を確認していると、山の向こう側を高速で移動するプレイヤーマーカーを見つけました。
……レンさんですね。
レンさんはいつも通りモンスター討伐でしょう。
ミカゲさんも東側の森にいるみたいです。
よし、向かいます!
「眷属さん、おはようございます!」
『!ミツキ、おはようございます』
果樹園に辿り着いて、眷属さんにお声掛けすると柵を開けてくれました。
「もうそろそろこの島から出ることになるので、ご挨拶もかねてお手伝いに来ました」
『…そうなのですか。ありがとうございます』
わたしは眷属さんと手分けして草むしり、葉っぱの剪定、果物の収穫を手伝います。
その際泉の様子も確認しましたが、毒も無い綺麗な泉でした。
良かったです。
水を撒いて、収穫したものをガゼボの祭壇に備えます。
眷属さんの隣で、わたしも跪きます。
(…ソル様、たくさんお世話になりました。ありがとうございました。ソル様のおかげで新しい力の事を知ることが出来ましたし、わたし自身も少し強くなれました。眷属さんとも仲良くなれました。……ソル様と眷属さんと簡単にお会い出来なくなるのはとても寂しいですが、これからも見守って頂けると嬉しいです)
『それは良かった。太陽も目を掛けた甲斐がある』
「ぴゃっ!?」
『ソル様!?』
思わず顔を上げると、祭壇に腰掛けるソル様のお姿がありました。
フットワーク軽いですね、ソル様!
『お前には目を掛けている。挨拶に来たのであれば、顔くらい見ておかねばな』
「あ、ありがとうございます」
『昼にはこの島への道を閉じる。それまで島を楽しむが良い』
「はい!お世話になりました!」
『………』
『…ふむ』
眷属さんが静かです。
どうしたのかとチラリと横を見ると、
『………………』
「!」
その大きな目に、溢れんばかりの涙を浮かべていました。
「!?!!?」
わたしは慌ててソル様を見上げました。
…ソル様は顎に手を当てて、何か考えているようです。
「…………」
わたしはそっと、眷属さんの片手に自分の手を重ねました。
すると、眷属さんの目から涙がこぼれ落ちました。
『ううう』
眷属さんの小さな身体を、わたしの身体へと引き寄せます。
肩や背中を擦っていると、ソル様が祭壇から降りてこちらへ歩いてきました。
『……そうか。お前は、星詠みの娘と別れるのが悲しいか』
『うっすみませ』
『良い。そこまで人を想えるとは、成長したな』
膝をついて、眷属さんの涙を拭うソル様。
そしてこちらへと顔を向けます。
『……そうだな。少し話をしよう』
「…はい」
ソル様に連れられて、休憩用のガゼボへと着きました。
ソル様が指を鳴らすと、柔らかそうなクッションが出現しました。
『そうだな、まずは眷属の事から話そう』
ソル様の許しを得て、腰掛けます。
おお、もふもふでふわふわです。
『この島には、15の眷属がいる。その眷属は、数年、もしくは数十年程前、ハーセプティアで生贄に捧げられていた子供だ』
「え……」
『大きな街には神殿がある。小さな村には太陽を祀る祠が存在していた。その祠に、捧げられていたのを太陽が眷属にした』
「……それは、何か理由があって捧げられていたのですか」
『そうだ。戦や干ばつ、日照りに対応出来なかった小さな村達が、子供を生贄に捧げた』
………似たような話は、聞いたことありますね。
ハーセプティアでも、そのような話があるのですね。
『太陽が世界を照らすのは理でありルールだ。決まった時間に決まった場所を照らしているだけの太陽には、なんの対処もしようがない。……子供を捧げた村には神託を下して二度とやるなと告げたが。捧げるのであれば雨を司る奴にしろと忠告もした』
ソル様はため息をつきます。
……15人の子供がその年月の間に生贄に、捧げられたのですね。
わたしの隣で俯く眷属さんも、その1人なんですね。
『故に島の眷属達は殆どが人間不信でな。他の渡り人には結構塩対応していたようだ』
「えっそうなのですか」
『……ミツキはソル様の気配がしましたので、信頼しました』
うおおおありがとうございますソル様!
ソル様のおかげで、眷属さんに塩対応されることは無かったようです。
ソル様はフッと笑います。
『他にも何人かの渡り人が眷属と親しくしているようだ。それは良い変化だ。この島には、眷属しかいないからな』
お、眷属さんと親しくされているプレイヤーがいるのですね。
どんな方々なのか、ちょっと気になります。
『……眷属達は人ではなくなったが、精神や心は人の頃のままだ。故に、その成長は喜ばしい』
『……悲しく思うことが、ですか?』
『そうだ。それもまたお前に必要な成長だ』
ソル様と眷属さんの会話に耳を傾けます。
わたしも眷属さんにお会い出来なくなるのは悲しいです。
ソル様は、召喚すれば短時間はお会い出来そうですから。
眷属さんには、何かお手紙とか、お送りできたらいいんですけれどね。
あっ。
「もし、もしもわたしが、ソル様の神殿にお供えしたら、ソル様と眷属さんへお手紙とか、お菓子とか届きますか……?」
『!』
『ふむ…』
わたしの言葉に眷属さんが思いっきり顔を上げました。
ソル様も何やら考えている様子です。
王都にはソル様の神殿があるはずです。
そちらでお供え物した時に手紙も添えれば、ソル様の元へ届くでしょうか。
『………まどろっこしいな』
「……まどろっこしい、ですか」
『……其方が考えている程、神殿は太陽を崇めている訳では無いからな』
「えっ」
ソル様の神殿なのにですか!?
ソル様を第一に崇拝している人達が、ソル様に仕えているのではないのでしょうか………?
『……ふむ、渡り人である其方には分かりにくいか。今ここで太陽と話している其方には実感が無いと思うが、この島はハーセプティアの住民にはお伽噺に出てくる島で、太陽も滅多に人前に姿を現さない伝説上の存在だ』
『……ここ100年程はハーセプティアの住民の前に姿も現していないな』
「ひゃく!」
『……一部の住民しか、太陽の存在を心から信じていないだろう』
「……お姿は、現さないのですか?」
『太陽はあくまで、照らすだけの存在だ。照らすことしかできない太陽に、これ以上縋られても何も出来ないからな』
ソル様は、自嘲めいた笑いを浮かべました。
や、闇が深そうな雰囲気です。
『だから神殿に供える物なぞ、8割方ちょろまかされるだろう』
「ちょろまかされる」
『神殿で太陽とこの島の事を話すのはやめておけ。面倒な事になるぞ』
驚いたのはソル様の麗しい口元から聞こえてきたちょろまかされるの言葉でしたが……
ソル様への供物がちょろまかされるのは困ります。
……やめておきましょう。
んんんんん振り出しに戻ってしまいました!
何かいい案が浮かんで欲しいですうう!!
これからもこの作品をよろしくお願いします!




